749 / 840
6 謎の事件と聖人候補
938 結団式
しおりを挟む
938
パレスに集合した一同。だが、すぐにダンジョンに…‥というわけではなく、まず結団式のようなものが開かれた。
このパーティーは構成も複雑だし人数も多い。それにダンジョンには入らない人たちも含めると、関係者の数は百人近いので、事前の結束をしっかりしておきたいのだろう。
式の壇上には〝金獅子の咆哮〟のテーセウスさん、〝朝日の誓約〟のピントさん、〝剣士の荷馬車〟のエンデさん、そして私も立たされた。
「このパーティーがこれから挑むダンジョンは、事前に得られた情報が極端に少ない。それを踏み越えて行かんとするわれわれには、おそらく相当な困難が立ちはだかってくるだろう。だが、この布陣ならば必ずやこのダンジョンの最初の踏破者となれると私は確信している。諸君も困難に臆することなく、この未到の世界で活躍してほしい!」
テーセウスさんは冒険者たちに檄を飛ばす。湧き上がる声、会場の熱気が一気に上がっていく。
「この三つのクランの代表が揃ってダンジョンに入るのは初めてのことです。それだけ、このダンジョンの攻略は重要で尚且つ危険なもの……みなさん、全力で戦い、最後まで気を引き締めていきましょう。でも、緊張はほどほどでね」
ピントさんは女性らしいふわっとした雰囲気で場を和ませる。
「正直、この素晴らしいパーティーでも今回のダンジョンではどこまで踏破できるのか、確信は持てない。だが、ファーストアタックで得られる利益は莫大だ。進めば進むだけお前たちの得る金も増えていく。すべてはわれわれ次第だ、稼ぐぞ!」
エンデさんは、彼らしく冒険者たちを鼓舞し、冒険者たちは笑いながらうなずいている。
そして私は……
「メイロード・マリスです。どうぞみなさんメイロードとお呼びくださいね。今回は私の魔法がお役に立つということで参加させていただきます。〝壁抜き〟頑張ります!」
私の姿にざわつく冒険者たち。まったく冒険者っぽくない私の雰囲気と〝壁抜き〟が結びつかないのだろう。
「メイロードさまがいなければ、このダンジョン攻略は成り立たない。そのことを各人肝に銘じるように!」
「そうです。メイロードさまに何かあれば、今回の攻略はそこで終わりだと思ってください」
「死にたくなければメイロードさまがお好きに動けるよう最善を尽くせ!」
私の後ろに並んだ三クランのトップから威圧感たっぷりの言葉で、冒険者たちは少し私を見直してくれたようだが、あとは実際私の魔法を見てもらうしかないだろう。
(百聞は一見にしかず、よね)
こうしていくつかの連絡事項の通達をしたあと結団式が終わり、これからしばらくは禁酒が続くパーティーメンバーのための酒宴が開かれた。
ダンジョンへ向かう直前の酒宴は大なり小なり行われることらしいが、今回はパーティーの規模も大きいし、お金持ちクランの主催でもあるので、かなり盛大なものだ。
酒宴の始まりと同時に、セイリュウは喜んで酒の輪に加わり、とっても楽しそうにしているが、飲まない組はあまりすることもなく、手持ち無沙汰だ。パレスのことなので、たくさんあるつまみは芋や肉主体のみたことのあるものばかりで、あまり私の食指は動かない。
(こんなことなら、何か用意してくればよかったかなぁ。大人数だし一口で食べやすいのがいいよね。チーズやトマトでカナッペとか餃子の皮を使ったミニピザもいいかも、野菜たっぷりのキッシュそれにポテトもいろんなソースで味変すれば……)
そんな風にパーティー向きの簡単おつまみを考えながら、ジュースなどちびちびと飲みつつ、壁の花となっているとピントさんがやってきた。
「メイロードさま、メイロードさま。あちらの方はメイロードさまがお連れになった方でございますよね」
やけに楽しそうな声でそういうピントさんが指さしたのはセイリュウだった。
「ええ、そうです。私の領地にいる客人ですが、なにかしでかしましたか? まさかお酒を飲み尽くしたとか⁉︎」
「いえいえ、とんでもない! あまりにお美しい殿方なので、女性陣の間で彼の方の素性を知りたいという者がおりましてね」
どうやら、セイリュウの美丈夫ぶりに、特に女性魔法使いの多い〝朝日の誓約〟の魔法使いたちがかなり興味を惹かれているらしい。
(そりゃ、セイリュウは女装しても違和感がないぐらいの美形だし、確かに目立つよね、でもなんて答えよう)
「セイリュウは仕事で世界中を飛び回っておりまして、今回はたまたま一緒に行ってくれることになったんです。彼もこのダンジョンに興味があったようですので」
「では、この攻略のあとはまた旅立たれてしまうのですね。残念ですわ」
「ははは、そうですね」
そんな女性たちの熱い視線を知ってか知らずか、セイリュウは男たちの中心で楽しそうに酒飲み勝負をずっとやっている。連戦連勝しながら涼しい顔だ。
(ったく強いわねぇ……うわばみめ!)
パレスに集合した一同。だが、すぐにダンジョンに…‥というわけではなく、まず結団式のようなものが開かれた。
このパーティーは構成も複雑だし人数も多い。それにダンジョンには入らない人たちも含めると、関係者の数は百人近いので、事前の結束をしっかりしておきたいのだろう。
式の壇上には〝金獅子の咆哮〟のテーセウスさん、〝朝日の誓約〟のピントさん、〝剣士の荷馬車〟のエンデさん、そして私も立たされた。
「このパーティーがこれから挑むダンジョンは、事前に得られた情報が極端に少ない。それを踏み越えて行かんとするわれわれには、おそらく相当な困難が立ちはだかってくるだろう。だが、この布陣ならば必ずやこのダンジョンの最初の踏破者となれると私は確信している。諸君も困難に臆することなく、この未到の世界で活躍してほしい!」
テーセウスさんは冒険者たちに檄を飛ばす。湧き上がる声、会場の熱気が一気に上がっていく。
「この三つのクランの代表が揃ってダンジョンに入るのは初めてのことです。それだけ、このダンジョンの攻略は重要で尚且つ危険なもの……みなさん、全力で戦い、最後まで気を引き締めていきましょう。でも、緊張はほどほどでね」
ピントさんは女性らしいふわっとした雰囲気で場を和ませる。
「正直、この素晴らしいパーティーでも今回のダンジョンではどこまで踏破できるのか、確信は持てない。だが、ファーストアタックで得られる利益は莫大だ。進めば進むだけお前たちの得る金も増えていく。すべてはわれわれ次第だ、稼ぐぞ!」
エンデさんは、彼らしく冒険者たちを鼓舞し、冒険者たちは笑いながらうなずいている。
そして私は……
「メイロード・マリスです。どうぞみなさんメイロードとお呼びくださいね。今回は私の魔法がお役に立つということで参加させていただきます。〝壁抜き〟頑張ります!」
私の姿にざわつく冒険者たち。まったく冒険者っぽくない私の雰囲気と〝壁抜き〟が結びつかないのだろう。
「メイロードさまがいなければ、このダンジョン攻略は成り立たない。そのことを各人肝に銘じるように!」
「そうです。メイロードさまに何かあれば、今回の攻略はそこで終わりだと思ってください」
「死にたくなければメイロードさまがお好きに動けるよう最善を尽くせ!」
私の後ろに並んだ三クランのトップから威圧感たっぷりの言葉で、冒険者たちは少し私を見直してくれたようだが、あとは実際私の魔法を見てもらうしかないだろう。
(百聞は一見にしかず、よね)
こうしていくつかの連絡事項の通達をしたあと結団式が終わり、これからしばらくは禁酒が続くパーティーメンバーのための酒宴が開かれた。
ダンジョンへ向かう直前の酒宴は大なり小なり行われることらしいが、今回はパーティーの規模も大きいし、お金持ちクランの主催でもあるので、かなり盛大なものだ。
酒宴の始まりと同時に、セイリュウは喜んで酒の輪に加わり、とっても楽しそうにしているが、飲まない組はあまりすることもなく、手持ち無沙汰だ。パレスのことなので、たくさんあるつまみは芋や肉主体のみたことのあるものばかりで、あまり私の食指は動かない。
(こんなことなら、何か用意してくればよかったかなぁ。大人数だし一口で食べやすいのがいいよね。チーズやトマトでカナッペとか餃子の皮を使ったミニピザもいいかも、野菜たっぷりのキッシュそれにポテトもいろんなソースで味変すれば……)
そんな風にパーティー向きの簡単おつまみを考えながら、ジュースなどちびちびと飲みつつ、壁の花となっているとピントさんがやってきた。
「メイロードさま、メイロードさま。あちらの方はメイロードさまがお連れになった方でございますよね」
やけに楽しそうな声でそういうピントさんが指さしたのはセイリュウだった。
「ええ、そうです。私の領地にいる客人ですが、なにかしでかしましたか? まさかお酒を飲み尽くしたとか⁉︎」
「いえいえ、とんでもない! あまりにお美しい殿方なので、女性陣の間で彼の方の素性を知りたいという者がおりましてね」
どうやら、セイリュウの美丈夫ぶりに、特に女性魔法使いの多い〝朝日の誓約〟の魔法使いたちがかなり興味を惹かれているらしい。
(そりゃ、セイリュウは女装しても違和感がないぐらいの美形だし、確かに目立つよね、でもなんて答えよう)
「セイリュウは仕事で世界中を飛び回っておりまして、今回はたまたま一緒に行ってくれることになったんです。彼もこのダンジョンに興味があったようですので」
「では、この攻略のあとはまた旅立たれてしまうのですね。残念ですわ」
「ははは、そうですね」
そんな女性たちの熱い視線を知ってか知らずか、セイリュウは男たちの中心で楽しそうに酒飲み勝負をずっとやっている。連戦連勝しながら涼しい顔だ。
(ったく強いわねぇ……うわばみめ!)
316
あなたにおすすめの小説
【短編】花婿殿に姻族でサプライズしようと隠れていたら「愛することはない」って聞いたんだが。可愛い妹はあげません!
月野槐樹
ファンタジー
妹の結婚式前にサプライズをしようと姻族みんなで隠れていたら、
花婿殿が、「君を愛することはない!」と宣言してしまった。
姻族全員大騒ぎとなった
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。
古森真朝
ファンタジー
「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。
俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」
新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは――
※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。
他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!
七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?
オネエ伯爵、幼女を拾う。~実はこの子、逃げてきた聖女らしい~
雪丸
ファンタジー
アタシ、アドルディ・レッドフォード伯爵。
突然だけど今の状況を説明するわ。幼女を拾ったの。
多分年齢は6~8歳くらいの子。屋敷の前にボロ雑巾が落ちてると思ったらびっくり!人だったの。
死んでる?と思ってその辺りに落ちている木で突いたら、息をしていたから屋敷に運んで手当てをしたのよ。
「道端で倒れていた私を助け、手当を施したその所業。賞賛に値します。(盛大なキャラ作り中)」
んま~~~尊大だし図々しいし可愛くないわ~~~!!
でも聖女様だから変な扱いもできないわ~~~!!
これからアタシ、どうなっちゃうのかしら…。
な、ラブコメ&ファンタジーです。恋の進展はスローペースです。
小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。(敬称略)
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。