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2 海の国の聖人候補
243 沿海州へ
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243
「じゃあ、アキツに着いたら、取り敢えず、サイデム商会の支店に行くってことだね」
「ええ、その予定です」
アタタガにも知らせてあった通り、《無限回廊の扉》を使ってエントの森へ出向き、長老の皆さんの体調を確認した後、沿海州に向けて飛んでもらう。
航路については、この日のためにイスの冒険者ギルドにあるだけの関連地図を見てきたので、問題ないだろう。沿海州では広域の防御魔法と言った洗練された魔術がほぼないため、地図情報もダダ漏れ、地図にはほとんど欠損領域がなく、アキツまで最短の航路がきっちり設定できた。
シド帝国側所有の地図では、民間のレベルでも軍事拠点から重要施設まで、なにもかも丸わかりだ。
(沿海州……色々と頼りないなぁ)
アタタガに運んでもらっている間、例によって宴会状態のセイリュウとソーヤは、私の用意したお弁当をつまみに、ぐびぐび酒を呑んでいる。
本日はテキーラ〝エルテソロ・ドン・フェリペ〟を更に回廊で時短熟成した古酒だ。古酒独特の飴色が美しいが、度数も高くザル確定の酒飲み専用の逸品と言える。
(ウワバミって本当に経済効率が悪い!)
実は前世で私もウワバミだったのはヒミツ。
「現地の方にタイチとの連絡も取ってもらっています。支店の方はさすがにずっと私にかまってはいられないでしょうし、ご迷惑ですからね。
久しぶりに会えたら、あの後のことを聞いてみたいし、できればタイチにガイドをお願いしたいと思っているんです」
今回はお目付役としてセイリュウが同行してくれている。
でも、現地に着いて一通り安全を確認した後は〝監視の目〟だけ残して別行動するそうだ。なんでも、幾つか気になる霊的に不安定な場所や事象があるらしく、いい機会なので沿海州一帯を視察するらしい。
「メイロードが沿海州にも拠点を持つようになれば《無限回廊の扉》も使えるようになるから、僕の仕事もだいぶ楽になるね。正直助かるよ。
今、この世界では、実はかなり色々問題が起こっているんだ。
大ごとになる前に僕たちのような神の眷属が監視や解決に当たっているけれど、僕らの数も減っているから、目が届かないんだよね……」
聖龍という尊い一族が絶滅寸前まで減ってしまった原因を作ったのが、欲と恐怖に駆られた人間であることが悲しい。
理不尽に虐殺された聖龍族にしてみれば、そんな人間たちが滅びても〝因果応報〟と切り捨てしまっていいことだろうに、それでも彼らは世界の秩序を守るために日々奔走している。
「僕は半分隠居しているような感じだけどね。でも、気になるところはやっぱり見に行きたくなるんだ。身についた性分なんだろうね」
セイリュウは、困ったような苦笑いだが、やはり彼はどこまでもやさしい聖なる神の眷属なんだろう。
私に神様が与えてくれた力が少しでもセイリュウの役に立つなら、私にとっても嬉しいことだし、私にこの力を与えた神様にとっても喜ばしいことだろう。
「アキツでの拠点のことは、首都マホロで探してくれるよう現地駐在の方にお願いしてあります。《無限回廊の扉》もすぐ使えるようにしますね。
お金には余裕がありますし、沿海州は帝都より全体に物価は高くないそうですから、みんなが暮らしても余裕がある建物を購入するつもりです」
アキツに関しては、食材その他現地調達したい素材も多く、これから先も滞在する機会が多いはずだ。
それに見られてまずいものが色々ある私と仲間たちのことを考えれば、賃貸ではなく購入した上で警備関係をガッチリ固めてしまいたいのだ。
賃貸物件だと、どうしても色々な人が家に関わってきて、その人たちにも危険が及ぶ可能性がある。
いらぬ危険の排除のためにも買ってしまった方がいいと思う。
実はすでに帝都の店も買ってしまった。
間口の狭い店だったので、パレス・フロレンシアの利益だけで充分購入に足りるものだった。さすが帝都、他所に比べたら結構なお値段ではあったけれど、ミゼルより少しお高いぐらいのものだ、平気平気。
ここ沿海州でも、色々なものを大量購入しても目立たないよう、一応商いもしている風に暮らすつもりだ。メイロード商会の沿海州支社の事務所兼住宅という形で購入を考えている。
(実際に表立って商売をする気は無いんだけどね)
新しい街、新しい食文化
「楽しみね、ソーヤ!」
私の言葉に、美味しいつまみでほろ酔いのご機嫌ソーヤは最高の笑顔で何度も大きく頷いた。
「じゃあ、アキツに着いたら、取り敢えず、サイデム商会の支店に行くってことだね」
「ええ、その予定です」
アタタガにも知らせてあった通り、《無限回廊の扉》を使ってエントの森へ出向き、長老の皆さんの体調を確認した後、沿海州に向けて飛んでもらう。
航路については、この日のためにイスの冒険者ギルドにあるだけの関連地図を見てきたので、問題ないだろう。沿海州では広域の防御魔法と言った洗練された魔術がほぼないため、地図情報もダダ漏れ、地図にはほとんど欠損領域がなく、アキツまで最短の航路がきっちり設定できた。
シド帝国側所有の地図では、民間のレベルでも軍事拠点から重要施設まで、なにもかも丸わかりだ。
(沿海州……色々と頼りないなぁ)
アタタガに運んでもらっている間、例によって宴会状態のセイリュウとソーヤは、私の用意したお弁当をつまみに、ぐびぐび酒を呑んでいる。
本日はテキーラ〝エルテソロ・ドン・フェリペ〟を更に回廊で時短熟成した古酒だ。古酒独特の飴色が美しいが、度数も高くザル確定の酒飲み専用の逸品と言える。
(ウワバミって本当に経済効率が悪い!)
実は前世で私もウワバミだったのはヒミツ。
「現地の方にタイチとの連絡も取ってもらっています。支店の方はさすがにずっと私にかまってはいられないでしょうし、ご迷惑ですからね。
久しぶりに会えたら、あの後のことを聞いてみたいし、できればタイチにガイドをお願いしたいと思っているんです」
今回はお目付役としてセイリュウが同行してくれている。
でも、現地に着いて一通り安全を確認した後は〝監視の目〟だけ残して別行動するそうだ。なんでも、幾つか気になる霊的に不安定な場所や事象があるらしく、いい機会なので沿海州一帯を視察するらしい。
「メイロードが沿海州にも拠点を持つようになれば《無限回廊の扉》も使えるようになるから、僕の仕事もだいぶ楽になるね。正直助かるよ。
今、この世界では、実はかなり色々問題が起こっているんだ。
大ごとになる前に僕たちのような神の眷属が監視や解決に当たっているけれど、僕らの数も減っているから、目が届かないんだよね……」
聖龍という尊い一族が絶滅寸前まで減ってしまった原因を作ったのが、欲と恐怖に駆られた人間であることが悲しい。
理不尽に虐殺された聖龍族にしてみれば、そんな人間たちが滅びても〝因果応報〟と切り捨てしまっていいことだろうに、それでも彼らは世界の秩序を守るために日々奔走している。
「僕は半分隠居しているような感じだけどね。でも、気になるところはやっぱり見に行きたくなるんだ。身についた性分なんだろうね」
セイリュウは、困ったような苦笑いだが、やはり彼はどこまでもやさしい聖なる神の眷属なんだろう。
私に神様が与えてくれた力が少しでもセイリュウの役に立つなら、私にとっても嬉しいことだし、私にこの力を与えた神様にとっても喜ばしいことだろう。
「アキツでの拠点のことは、首都マホロで探してくれるよう現地駐在の方にお願いしてあります。《無限回廊の扉》もすぐ使えるようにしますね。
お金には余裕がありますし、沿海州は帝都より全体に物価は高くないそうですから、みんなが暮らしても余裕がある建物を購入するつもりです」
アキツに関しては、食材その他現地調達したい素材も多く、これから先も滞在する機会が多いはずだ。
それに見られてまずいものが色々ある私と仲間たちのことを考えれば、賃貸ではなく購入した上で警備関係をガッチリ固めてしまいたいのだ。
賃貸物件だと、どうしても色々な人が家に関わってきて、その人たちにも危険が及ぶ可能性がある。
いらぬ危険の排除のためにも買ってしまった方がいいと思う。
実はすでに帝都の店も買ってしまった。
間口の狭い店だったので、パレス・フロレンシアの利益だけで充分購入に足りるものだった。さすが帝都、他所に比べたら結構なお値段ではあったけれど、ミゼルより少しお高いぐらいのものだ、平気平気。
ここ沿海州でも、色々なものを大量購入しても目立たないよう、一応商いもしている風に暮らすつもりだ。メイロード商会の沿海州支社の事務所兼住宅という形で購入を考えている。
(実際に表立って商売をする気は無いんだけどね)
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「楽しみね、ソーヤ!」
私の言葉に、美味しいつまみでほろ酔いのご機嫌ソーヤは最高の笑顔で何度も大きく頷いた。
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