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4.最終奥義
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「あ、あれを……? わかったわ、ダイチ」
エディスが俺の後ろで回復魔法を使い、立ち上がったのが分かった。
「何か……切り札でもあるというのか」
巨人の低い声からは、その感情は読み取れない。
だが、何を考えてか、巨人は動きを止めた。
「行きます!」
エディスの凛とした叫び。
同時に、床が、壁が、空が、世界が、光を帯び始める。
「受けてみるか? 俺たちの最終奥義を」
俺は挑発するように言う。
周囲に光の粒が舞い始め、それが俺の斜め後ろの位置で集まり、光の玉となる。
挑発が効いたのか。
巨人は、腕を体の前で交差させる防御の姿勢を取る。
(思うつぼだ)
俺はほくそ笑む。
多分、巨人はこちらの奥義を受けきって見せてこちらの心を折るつもりなのだ。
俺の背後で巨大に膨れ上がった光の玉。
「ハーッ!」
エディスが裂帛の気合とともに、それを放つ。
いかなる弓矢でも出しえないスピードで光球が敵に迫る、それだけでもそれなりに恐るべき攻撃魔法ではあるのだが。
俺は貴重極まりない、莫大なエネルギーを封印された宝石を代償に、その光球に力を与える。
(暴君的加速!)
魔法原理的に人間には扱うことが不可能な核爆弾なみのエネルギーを、『加速』に限定することで攻撃に利用する、俺たちの究極奥義!
発動と同時に、世界が閃光に包まれた。
光が消えたとき、そこには胸の中央を撃ち抜かれた巨人がいた。
両方の前腕も完全に消失していた。
「見事だ……」
巨人が、今までよりさらに低い声でそう言った。
人間であれば血が傷口から吹き出すように、魔族である巨人の傷口からは紫色の煙が吹き出していた。
「あんた、強かったよ」
俺は杖で巨人を指しながら、そう言った。
後ろで、エディスが複合回復魔法を使って、俺達を万全な状態に戻す。
巨人の体が崩壊し始めたのを確認して、俺達は再び階段を登る。
魔王に闘いを挑むために。
「我が王は、喜ばれるであろうな……」
背後で、死の際にある巨人の声が聞こえた。
「何をだ?」
俺は、振り返ることなく訊いた。
「お前たちの到来を……だ」
それが巨人の最後の言葉となった。
「ダイチ」
エディスは少し気弱な声で俺の名を呼んだ。
「先を急ごう……それと、エディス」
「はい」
「魔王を倒したら、俺と一緒に来てくれないか、俺の世界に」
エディスの表情に、喜びの色が溢れた。
「はい!」
俺は、満ち足りた気分で階段を登っていく。
魔王は、もうすぐそこにいるだろう。
エディスが俺の後ろで回復魔法を使い、立ち上がったのが分かった。
「何か……切り札でもあるというのか」
巨人の低い声からは、その感情は読み取れない。
だが、何を考えてか、巨人は動きを止めた。
「行きます!」
エディスの凛とした叫び。
同時に、床が、壁が、空が、世界が、光を帯び始める。
「受けてみるか? 俺たちの最終奥義を」
俺は挑発するように言う。
周囲に光の粒が舞い始め、それが俺の斜め後ろの位置で集まり、光の玉となる。
挑発が効いたのか。
巨人は、腕を体の前で交差させる防御の姿勢を取る。
(思うつぼだ)
俺はほくそ笑む。
多分、巨人はこちらの奥義を受けきって見せてこちらの心を折るつもりなのだ。
俺の背後で巨大に膨れ上がった光の玉。
「ハーッ!」
エディスが裂帛の気合とともに、それを放つ。
いかなる弓矢でも出しえないスピードで光球が敵に迫る、それだけでもそれなりに恐るべき攻撃魔法ではあるのだが。
俺は貴重極まりない、莫大なエネルギーを封印された宝石を代償に、その光球に力を与える。
(暴君的加速!)
魔法原理的に人間には扱うことが不可能な核爆弾なみのエネルギーを、『加速』に限定することで攻撃に利用する、俺たちの究極奥義!
発動と同時に、世界が閃光に包まれた。
光が消えたとき、そこには胸の中央を撃ち抜かれた巨人がいた。
両方の前腕も完全に消失していた。
「見事だ……」
巨人が、今までよりさらに低い声でそう言った。
人間であれば血が傷口から吹き出すように、魔族である巨人の傷口からは紫色の煙が吹き出していた。
「あんた、強かったよ」
俺は杖で巨人を指しながら、そう言った。
後ろで、エディスが複合回復魔法を使って、俺達を万全な状態に戻す。
巨人の体が崩壊し始めたのを確認して、俺達は再び階段を登る。
魔王に闘いを挑むために。
「我が王は、喜ばれるであろうな……」
背後で、死の際にある巨人の声が聞こえた。
「何をだ?」
俺は、振り返ることなく訊いた。
「お前たちの到来を……だ」
それが巨人の最後の言葉となった。
「ダイチ」
エディスは少し気弱な声で俺の名を呼んだ。
「先を急ごう……それと、エディス」
「はい」
「魔王を倒したら、俺と一緒に来てくれないか、俺の世界に」
エディスの表情に、喜びの色が溢れた。
「はい!」
俺は、満ち足りた気分で階段を登っていく。
魔王は、もうすぐそこにいるだろう。
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