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第2章 俺と幼馴染と異世界
10.
しおりを挟む〔宿屋 カンパレリ〕
ギルドから歩いて、20分くらいの静かな街並みの中にその宿屋はあった。
レンガ作りのしっかりとした建物だった。
カラン、カラン
「いらっしゃいませ~」
小柄な女性が対応してくれた。
「宿泊先を探しておりまして、こちらを勧められたので
きたのですが、、、、」
「勧めてくれたのは、ギルドのエルミンさんかしら?」
「そうです」
「大まかな状況は理解したわ、こちらどうぞ。
はじめに宿泊カードを書いて欲しいのよ。あなた達は初級冒険者かしら?」
受付のカウンターへと案内される。
宿泊カードは、名前と職業を書いて終わりだった。
もっと細かく聞かれるかと思ったけど大したことなくてよかった。
「何泊の予定かしら?」
「私たちはここを拠点に冒険者としての力を身につけたいと思っており、
長期期間での宿泊を希望しているのですが、、、」
「なら、半年まずは結びましょうか。
一人前になるにはそれくらいかかるでしょうから」
「「よろしくお願いいたします」」
「ただ、今案内できる長期宿泊用の部屋はツインしかないのだけれど?大丈夫?」
その女性は、俺の方を見た。
そうだよなー。思春期の男女が一緒の部屋ってなぁ。
「問題ないです。それでお願いいたします」
悠理が答えた。
悠理にとって俺は夜の狼にはなれないのか。。。。
関係性を察したのか、ちょっと気まずそうに女性が対応する。
「私はシュリアよ。これからよろしくね。
部屋は203号室よ。基本鍵は渡したまんまだから無くさないようにね。
朝食は8:30、夕飯は18:30。昼は出かけることが多いだろうけど
必要であれば用意するわ。お弁当も前日に言ってくれれば可能だから。
ツインと言っても、お風呂トイレは別だから安心してね。」
その女性は悠理にいう。
「はい………?」
なんで自分に言われたのか分かってないな。
「あと、あなた、ちょっと」
シュリアが、キッチンに声をかけた。
すると大男がキッチンから出てくる。
175cmの俺でも見上げるくらいの大男だ。
「主人のダルタよ」
「「お世話になります」」
「………………ふん」
ダルタはキッチンへ戻って行った。
(嫌われたのだろうか…)
「あなた達は気に入られたわね♪」
シュリアさんが喜んでいる。
そうなの??いまので??
カラン、カラン
「ただいまーー」
少年が入ってきた。
「お帰り、アルラ」
息子です。とシュリアさんが教えてくれた。
「お兄さん達は、冒険者さんなんだね。しかもなりたて。」
「あぁ、今日この国にきたばかりなんだ。
長く滞在する予定だからかよろしくね」
おれは握手するため右手を差し出した。
アルラは握手に気づかなかったのか
悠理のことを見ている。
「おねーさん、綺麗だね。おにーさんの恋人?」
「褒めてくれてありがとう、おにーさんとは恋人じゃないよ」
悠理はしゃがんでアルラと話をする。
なんか、胸が痛い。つらい。失恋した気分。。。。
「ふーん。んじゃ、俺が大きくなったらおねーさん結婚しよう?」
アルラが無邪気な眼差しでプロポーズをした。
ちょい、ちょい、ちょい、ちょい!!!
握手無視してプロポーズかい!!!
このませガキが!!
「ふふっ、私よりも良い子はいっぱいいるからね。
それに君が大人になるのを待ってたら、
私はおばさんになっちゃうからダメ」
え、悠理は意外と早めの結婚が希望だったりするのか………??
「こら!お兄さん達をからかうんじゃないの……!!」
シュリアさんが怒る。
「ごめんなさーい。あ、おにーさん達今日夕飯ここで食べる?」
「??………そのつもりだけど??」
悠理も頷く。
「今日の夕飯の仕込み、俺が頑張ったやつだから
楽しみにしててなー」
そうしてアルラはダルタさんがいるキッチンへ入って行った。
「ごめんなさいね………」
シュリアさんが謝る。
「いえいえ、全然気にしてませんので…全然…」
うそです、めっちゃ気にしてます。
俺たちは部屋へ向かった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
外観がレンガ造りだったが、意外と中はビジネスホテルのような部屋だった。
もちろん、風呂トイレ別!!(重要)
そして脱衣所もあった!!(重要)
真っ先に俺はベットへダイブする。
ふかふかで沈み込むような感覚があるくらいふかふかだ。
「あー、幸せだーーーーーー」
そう、思わず言ってしまうくらいに気持ちがいい。
「昨日しか野営してないはずなのに、体は正直だね」
悠理は笑う。
都会っ子の俺には野営は厳しかったのだ。きっと。
悠理は風呂やトイレを見回って、
アメニティを確認していた。
どうやら、日本とは違ってそういうのは整えてないらしい。
悠理も生き延びるためのグッズは持ってきていたが
生活用品に関しては準備が抜けていたようだ。
「明日、シュリアさんにお店聞いて買いに行こうか」
「うん、色々揃えたい。楽しみ」
「あとは、服とか冒険用の武器とかも一通り揃えたほうがいいんだろうな。」
(っても、どんなのがいいのか分からないままいって
ボッタクリに遭うのもいやだしな。。。。)
真司は、買い物際には基本下調べをするタイプだ。
なぜなら、損をしたくないから。当たり前である。
「それならギルドのエルミンさんに聞いてから買い物する?」
確かにそれなら間違いないな。
「んじゃ、明日はギルド行って、買い物して下準備の日にしよう」
「うん!」
あ、そろそろ夕飯の時間だな。
「悠理 夕飯に行こうぜー」
「お金、金庫に入れてるから待って。」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
明日は真司と買い物に行く。
(まるでデートみたい。しかも生活用品を買うなんて…まるで新婚さん…)
ふと悠理の中にある、今まで奥に潜めていた気持ちが出てくるかと思ったが
夕飯の美味しさが上回ってしまった。
牛肉のコロッケとスープとパン。
まともな食事にありつけることの大切さを感じた2人はたくさん食べた。
「「お代わり」」
キッチンで見ていたアルラも笑顔になっていた。
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