俺と幼馴染だけ、異世界の別の場所に転移したそうです

ふじ

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第2章 俺と幼馴染と異世界

13.

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エルミンさんとは、ここでお別れだ。

このあとは日用品メインだから
流石にそこまで付き合わせるのはおこがましい。

「付き合ってもらっちゃって、すみませんでした。ありがとうございました」
「助かりました」

「大丈夫ですよ。今度来るときのお姿が楽しみです。ではまたギルドで」

エルミンさんはギルドに戻っていく。

俺たちは地図を見て近い〔アルシーブ〕に向かう。

カラン、カラン

「いらっしゃいませ~」

小柄な女性が出迎えてくれた。

「あの、カンパレリのシュリアさんからの紹介でこちらにしました。化粧品とか洗剤とか日用品類を買いに来たのですが…」

「シュリアさんからのご紹介ですね!お安くさせていただきますよー!ご希望の品物でしたら、右側の棚がメインになりますね。品名のタグを触って頂くと効能とかわかりますのでご参考ください。」

俺は洗濯用の洗剤や歯磨きとかを
悠理は化粧品類、スキンケアとかを吟味していく。

カラン、カラン

「こちらに、ローリエ殿はいるか。」

しっかりとした体格の男が入ってきた。

「店長は今作業中です。何か御用でしょうか?」

「《リービッヒ国により召喚された勇者御一行向け》に治癒ポーション、魔力増幅ポーションが欲しくてな。この店にある品全て頂こう!」

「それは困ります。この国には、他の冒険者さんもいるのです。買い占めはご遠慮ください」

「お前は魔王討伐に行かれる勇者殿の足を引っ張ると言うのか、たかが小娘が!」

男は彼女に手を挙げる。

「影踏み!」

俺も彼女も殴られる!?そう思った時に、男の動きが止まる。

「な、なんだ!?」

「ここで聞いてたらなんとも理不尽だったので思わず使ってしまいました。今回は、彼女の方がごもっともだわ。勇者だかなんだか知らないけど、自分たちが召喚したなら自国で対応しなさいよ。それに安易に暴力を振るうなんて、人として最低だわ!」

悠理が暗殺者のスキルから《影踏み》を使って男の動きを止めだのだ。いかにも喧嘩が始まりそうな雰囲気が漂う。
俺はとっさに店員である彼女をお店の後ろの方に誘導する。

(どうすれば平和的解決が望めるんだ…)

相手がどんな人なのかもわからない状況で俺は頭をフル回転させていた。



「お店が騒がしいと思ったら、一介の冒険者に聖職者が動き止められてるなんて滑稽だねぇ」

キセルをふかしながら彼女は奥の部屋から出てきた。

「ロ、ローリエさん」
店員の彼女が彼女に抱きつく。

「私がこの店アルシーブの店長、ローリエだけど?私になんの御用だい?聖職者殿」

「勇者殿のためにポーション類を頂きたいのだ。いくらになる。金ならあるぞ」

いまだ悠理が影踏みしているため男は顔のみ動かせていた。

ローリエがキセルをふかして男に問う。
「ポーションを売るのは構わないけど、全品持ってかれちゃこっちも商売が続かなくなっちまうよ。それに、勇者御一行の中には治癒を使えるものもいるんじゃないのかい??そこまでポーションも量が必要になるとは思えないけどねぇ」

「治癒を使えるものもまだレベルが高くないため、保険として用意をすることとなったの
だ!早くこの術を解いてもらおうか!!」

「お前さんたちがここ2-3日で買い占めているのは知っていたが、ここまでとは。そこまでしてお前さんのところの治癒能力者は頼りないのだな。聞いててため息がでるわ。そんなんで魔王討伐に行って勝てるのかい?」
ローリエが鼻で笑う。

ローリエは悠理のところまで歩いて行き、小声で「まだ踏ん張れるかい?」と聞いた。悠理は首を縦に振った。

「私はね、、これが全てだと思っている。あんたが欲したものの代価としては、勇者御一行殿の器は小さすぎる。申し訳ないが帰ってもらおうか」

「なん……だと……」

「中級のポーションくらい、お前の国にも作れるやつがいるだろう?お前さんたちはそれで十分だ。それともお抱えの魔術師たちがリービッヒ国からというのは本当なのかな?」

聖職者である男は唇を噛んでいた。
もしかして、ローリエさんは言ったのか??

「お前らに頼らずともほかにアテはある。失礼する。」

悠理は影踏みを解除した。
男が攻撃をしてくることはなかった。

やっと落ち着いた。

「変なところを見せちまったよ。すまないねぇ。」

「い、いえ。けど、追い出して大丈夫でしたか?あとで報復とか。。」

「あぁ、あとで防御の術式をこの建物に入れておくから大丈夫だよ。お前さんたちシュリアの紹介だろ、今回の迷惑かけた分も兼ねてさらに値引きするようにするから、好きなの選びな」

ローリエさんはまたキセルをふかして奥の部屋にこもった。

俺たちは、必要な品を揃えて会計を済ます。

「悠理、どうした?」
「ローリエさん、本当になのかな?」
「どうしてだ?本人が言ってだろ、魔術師だって」
「なんか、さっき肩に触れられた時に魔力を感じたんだけど、あの人の魔力はなんか感じがした」
「俺にはよくわかんねぇけど、それって個性とかと同じで、一人一人違うんじゃねーの?」
「分かんない。。けど、違ったのは確か。」

そういうもんなのかね。

とりあえず俺たちは一通りの買い物を済ませて、カンパレリに戻った。

時間はもう17時になろうとしていた。
夕飯にちょうどいい時間だろう。

---------------

あの子彼女の肩に手を置いた際に、あの子は私の魔力を感じていた。

(気づかれちまったかな…)

ローリエは魔女である。しかも純潔だ。
魔女の中でも純潔か否かで魔力のが異なる。
魔女は基本的に子をなす訳ではない、むしろ魔力によって性欲というものは皆無に等しいのだ。
ただ、唯一の方法として魔女の元で修行を積み、大魔神アルカナとの契約によって死んだものがという存在になれるのだ。

あの子も純潔の魔力は認識したことがないだろうから、違和感はあっても魔女だとは思わないだろう。

(勘がいい子じゃないことを願うだけだね…)

今日はカンパレリの夕飯が食べたい気分だ。
早々に仕事を終わらせて宿へ戻るとするか。

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