3 / 91
再び手にした決意
34年後──
しおりを挟む
「おじいちゃん!ヒルダ先生来たよ!
魔法のお勉強の時間だよ!」
「ん?ああ、今いくよ」
春と夏の合間の、暖かくもあり涼やかな風が優しく頬を撫でる季節。
儂はこの季節が一番好きだ。
よく晴れた青空を、手入れのされた庭で番犬と共に眺めていると、孫娘のユリアがすぐそばの屋敷の窓から身を乗り出し元気に声を上げる。
週に3回、魔法ギルドから講師を呼んでいる。
儂と孫娘のユリア、あと一人生徒がいる。
かつての仲間である大魔法使いの御墨付きの魔法使いで、技術もさることながら教え方も上手く、ユリアもメキメキと成長しているのが素人目でもわかる。
儂は…、魔法は得意ではないが、実は魔法や術式の理論に関してはそこら辺の魔法使いには負けない!と、自負しているほどの知識はある。
結婚し子供が産まれ、その子供も結婚し孫娘も出来たが、日々の勉強や鍛練のおかげもあってかその知識は衰えることなく残っている。
身体の鍛練も同様に行ってはいるが、流石に歳も52になると全盛期に比べ体力は半分位には衰えている感もある。
ただ、魔法の知識はあるのだが如何せん魔力の絶対量が少なく、構築した術式を上手く顕現出来ないのである。
番犬兼愛犬 ──と言っても本当の犬ではなくウィンドウルフという魔物なのだが、赤ん坊の頃に傷付き倒れていたところを拾い、そのまま番犬となった── の、ハリルの頭を一撫でして屋敷へと向かう。
勉強部屋として机と椅子、先生が使う大きな記入板を壁に設置した元応接間に庭から直接入ると、ちょうど廊下とを繋ぐドアが開き、孫娘のユリアと先生である魔法使いヒルダが入ってくる。
「フェンスさん、おはようございます。お庭にいらしたんですね。今日は最高のお天気で気持ちが良いですね。お邪魔してすみません」
こちらがお願いして来てもらっているのに、ヒルダは邪魔をしたと頭を下げてくる。
確か、17だったか。
この謙虚で丁寧な物腰をその若さでどこで身に付けたのだろうか?貴族などの出ではなかったはずたが…。
「ヒルダ先生、頭を上げて下さい。教えを乞う身、わざわざ屋敷へと来ていただいているだけでもありがたいのに、こんな爺に頭を下げる必要などありませんよ」
「じ──!そ、そんなっ!フェンスさんはまだまだお若くいらっしゃいますよ!」
パッと顔を上げたヒルダがわたわたと手を振って否定してくる。その仕草や表情は年相応だ。
「おじいちゃんもヒルダ先生もいつものお決まりはそのくらいにして、早く勉強しようよ」
呆れ顔のユリアがトントンと専用にしている机を指で叩く。
儂は平民の出ではあるが魔王討伐の恩赦として、何度も辞退は申し出たのだが根負けして貴族の地位を王国から貰っている。
ユリアには貴族として恥ずかしくない教育を、騎士爵ではあるが貴族出の母親コーネリアが行っているはずだが…。儂も息子のアルディも貴族としての自覚も素養も足りていないので何も言えない。
この出来たヒルダと比べると贔屓目に見てややお転婆だ。
まぁ、そこが可愛らしいところでもあるのだが。
「ヒルダ先生、今日ルシオスは来ないんですか?」
いつの間にか席に着いたユリアが、教壇としている記入板の前へと向かうヒルダの背中に話しかける。
ヒルダはそのまま教壇へと向かいこちらに向き直ってから答える。
「ええ。ルシオスは今日、先輩冒険者の手伝いで東の森に行っています。なんでもゴブリンの被害がここのところ増えているらしくて、その調査とついでの薬草採取だそうです」
「ふーん、そっか・・・。これでまた、あたしとの差が出来ちゃうね」
ルシオスとは、ヒルダの弟である。姉とは違い魔法ではなく剣の道を選んだ、新米冒険者でもある。
剣士ではあるが多少の魔法を使えた方が何かと便利ではあるため、普段はヒルダの授業を一緒に受けている。ユリアはああいった態度ではあるがルシオスを気に入っているのだろう。常にああいった言動でルシオスをからかっている。
ルシオスも言われて悔しそうにしてはいるが、ひとつ歳上なこともあってかなんだかんだ面倒見は良い。
まぁ年頃の男女、よくある光景だ。
恋仲?断じて違う!
ユリアは嫁にはやらん!!
しかし、ゴブリンか。一応報告は入ってはいるが、冒険者ギルドに調査依頼が出るくらいに被害が増えているのか。
儂の方でも少し動かないといけないか…。
「フェンスさん?」
「ん?お、おぉ・・・」
そんなことを思っている内に授業は進んでいたようだ。記入板には呪文の一文と術式を表した魔法陣が描かれている。
「おじいちゃん、ヒルダ先生に見蕩れてたんじゃないでしょうね。おばあさまに言いつけちゃうよ」
「はは・・・何を言ってるんだユリア。儂はこう見えて一途なんだぞ」
ユリアが横目でじとっとした視線を突き刺してくる。
綺麗な娘だとは思うが、孫ほど歳の離れたヒルダに見蕩れるなど、間違ってもありえない。一途と言ったのも本心ではあるが、頭が上がらないのも事実ではある。謂れのない告げ口はやめて頂きたい。
「~~っ!ユ、ユリアさん!?
な、何をおっしゃってるんですかっ?!」
ヒルダはまたわたわたと手を振っている。
「おほんっ!ところで、ヒルダ先生。すまんが少し呆っとしてしまっていたようだ。その術式についてかな?」
「え?あ、あ、そ、そうですっ!
フェンスさんには雑作もない質問でしょうが・・・」
ちらっとユリアに目をやる──
が、質問を振られたら困るとばかりにユリアはパッと視線を反らす。
「うむ。その呪文は『パラライズ』、麻痺の呪文、陣はその展開術式だな。
このタイプの術式は古く古魔術ではこれとはまったく別の呪文と術式で表されるが、そこに書かれている近代魔法では『与える』といった共通術式で呪文と術式を表せる。
それぞれ『麻痺』に当たる部分を『毒』や『睡眠』に変えることによって様々な効果の魔法に対応出来る。また、その複合も可能となる…。で、良かったかな?」
「す、すごい。完璧です!!」
ヒルダは一瞬キョトンとした顔をしていたが、すぐにキラキラした目でパチパチと手を鳴らす。
「おじいちゃんは相変わらずね」
「はぁ~~、これがフェンスさんの無駄な魔法知識」
「んんっ?!」
何か聞き捨てならない言葉が聞こえたような。
「あ!あぁっ!?す、すみません!そういったわけではなくてっ、その、あの、前に師匠がそう言ってたもので・・・つい」
あいつめ。弟子にまでそんなことを言っているのか。
恐縮してペコペコと頭を下げ続けるヒルダを落ち着かせるために、落ち着いた声を作って話しかける。
「魔法を録に使えない儂がこんなことを言うのもなんだが、魔法に無駄なことなど無いと儂は思ってる。
基礎を突き詰めれば、詠唱の効率化や効果の上昇、また基礎から新たな発見があることもある。
魔法だけの話ではないが、剣でもなんでも基礎は大事なものだよ」
「「・・・・・!」」
偉そうなことを言ってしまったかと思ったが、二人とも儂に目を向けたまま黙っている。
変なことを言ったか?
「す、素晴らしいですっ!正にその通りだと私も思います!」
ヒルダがまた、キラキラ目でパチパチ手を鳴らす。
ユリアの儂を見る目も少し変わったかな?
「師匠にも、今の言葉を延々と聞かせて上げたいです。」
「はは・・・。あいつは直感的な天才だからなぁ」
ヒルダの師匠ミリアーナは、誰もが認める天才魔法使いではある──のだが。
猫獣族であることも関係しているのか、魔法は理論的なものではあると思うのだが、彼女は本能的に魔法を使う。
そのため、他者に教えるといった行為を一番の苦手としているようだ。ヒルダはよくそんな師匠の元でここまで成長したものだ。反面教師といったところか?
「で、では!座学はここまでにして、この後は外でこの付与魔法の実践と魔力鍛練を行いましょうか」
そう言ってヒルダはパタンと手元の魔導書を閉じる。
「やった!
ほら!おじいちゃんも早く準備して!」
ユリアは座学より課外授業が好きなようで、外に行くとなると表情がガラッと変わる。考えるよりも動く、戦士向きな性格だとは思うが、それは加護の儀式が終わってからでも良いな。
ユリアこそ、ミリアーナに弟子入りした方が良いのでは。と、ふと思う。
三人連れ立って部屋を出てエントランスへと向かう。
途中、先を歩いていたヒルダが我が家の中心、入口から見て正面に大袈裟に飾られている大盾を見て立ち止まる。
「・・・先生?」
「え?あ、あぁっ!すみません。少し呆っとしてしまいました」
「どうかしましたか?」
「い、いえ!いつも見て思うことなんですが、フェンスさんはこの盾を持って戦っていたんですよね」
「あ、ああ。そうだな・・・」
ちらっと盾の方に視線を向けるがすぐに戻す。
普段はなるべく視界に入らないようしているし、そもそも近づかない様にここを通らず庭から出入りしている。儂としては倉庫にでも押し込んでおきたいのだが、家族の総意でここに飾られている。
「師匠から色々とお話は聞きますが、激しい戦いをくぐり抜けたとは思えないほど、綺麗で神聖な雰囲気があって、見ているだけで安心する様な感じがします」
「・・・・・・」
「あっ!すみません!余計なことを申しました。」
ヒルダがわたわたと頭を下げる。
「構わないよ。神の加護を受けた盾、そう感じるのが普通。
さぁ!先生!そんなことより早く行きましょう。」
話している間に入口の扉まで進んでいたユリアに向けて歩き出す。
「儂にはそうは感じられんがな──」
「おじいちゃん・・・」
ぼそっと漏らした言葉をユリアに聞かれてしまったか?
何でもないと言って先に外に出る。
二人も黙って後をついてくる。
行き先は南門を出て少し歩いたところにある草原だ。
魔法のお勉強の時間だよ!」
「ん?ああ、今いくよ」
春と夏の合間の、暖かくもあり涼やかな風が優しく頬を撫でる季節。
儂はこの季節が一番好きだ。
よく晴れた青空を、手入れのされた庭で番犬と共に眺めていると、孫娘のユリアがすぐそばの屋敷の窓から身を乗り出し元気に声を上げる。
週に3回、魔法ギルドから講師を呼んでいる。
儂と孫娘のユリア、あと一人生徒がいる。
かつての仲間である大魔法使いの御墨付きの魔法使いで、技術もさることながら教え方も上手く、ユリアもメキメキと成長しているのが素人目でもわかる。
儂は…、魔法は得意ではないが、実は魔法や術式の理論に関してはそこら辺の魔法使いには負けない!と、自負しているほどの知識はある。
結婚し子供が産まれ、その子供も結婚し孫娘も出来たが、日々の勉強や鍛練のおかげもあってかその知識は衰えることなく残っている。
身体の鍛練も同様に行ってはいるが、流石に歳も52になると全盛期に比べ体力は半分位には衰えている感もある。
ただ、魔法の知識はあるのだが如何せん魔力の絶対量が少なく、構築した術式を上手く顕現出来ないのである。
番犬兼愛犬 ──と言っても本当の犬ではなくウィンドウルフという魔物なのだが、赤ん坊の頃に傷付き倒れていたところを拾い、そのまま番犬となった── の、ハリルの頭を一撫でして屋敷へと向かう。
勉強部屋として机と椅子、先生が使う大きな記入板を壁に設置した元応接間に庭から直接入ると、ちょうど廊下とを繋ぐドアが開き、孫娘のユリアと先生である魔法使いヒルダが入ってくる。
「フェンスさん、おはようございます。お庭にいらしたんですね。今日は最高のお天気で気持ちが良いですね。お邪魔してすみません」
こちらがお願いして来てもらっているのに、ヒルダは邪魔をしたと頭を下げてくる。
確か、17だったか。
この謙虚で丁寧な物腰をその若さでどこで身に付けたのだろうか?貴族などの出ではなかったはずたが…。
「ヒルダ先生、頭を上げて下さい。教えを乞う身、わざわざ屋敷へと来ていただいているだけでもありがたいのに、こんな爺に頭を下げる必要などありませんよ」
「じ──!そ、そんなっ!フェンスさんはまだまだお若くいらっしゃいますよ!」
パッと顔を上げたヒルダがわたわたと手を振って否定してくる。その仕草や表情は年相応だ。
「おじいちゃんもヒルダ先生もいつものお決まりはそのくらいにして、早く勉強しようよ」
呆れ顔のユリアがトントンと専用にしている机を指で叩く。
儂は平民の出ではあるが魔王討伐の恩赦として、何度も辞退は申し出たのだが根負けして貴族の地位を王国から貰っている。
ユリアには貴族として恥ずかしくない教育を、騎士爵ではあるが貴族出の母親コーネリアが行っているはずだが…。儂も息子のアルディも貴族としての自覚も素養も足りていないので何も言えない。
この出来たヒルダと比べると贔屓目に見てややお転婆だ。
まぁ、そこが可愛らしいところでもあるのだが。
「ヒルダ先生、今日ルシオスは来ないんですか?」
いつの間にか席に着いたユリアが、教壇としている記入板の前へと向かうヒルダの背中に話しかける。
ヒルダはそのまま教壇へと向かいこちらに向き直ってから答える。
「ええ。ルシオスは今日、先輩冒険者の手伝いで東の森に行っています。なんでもゴブリンの被害がここのところ増えているらしくて、その調査とついでの薬草採取だそうです」
「ふーん、そっか・・・。これでまた、あたしとの差が出来ちゃうね」
ルシオスとは、ヒルダの弟である。姉とは違い魔法ではなく剣の道を選んだ、新米冒険者でもある。
剣士ではあるが多少の魔法を使えた方が何かと便利ではあるため、普段はヒルダの授業を一緒に受けている。ユリアはああいった態度ではあるがルシオスを気に入っているのだろう。常にああいった言動でルシオスをからかっている。
ルシオスも言われて悔しそうにしてはいるが、ひとつ歳上なこともあってかなんだかんだ面倒見は良い。
まぁ年頃の男女、よくある光景だ。
恋仲?断じて違う!
ユリアは嫁にはやらん!!
しかし、ゴブリンか。一応報告は入ってはいるが、冒険者ギルドに調査依頼が出るくらいに被害が増えているのか。
儂の方でも少し動かないといけないか…。
「フェンスさん?」
「ん?お、おぉ・・・」
そんなことを思っている内に授業は進んでいたようだ。記入板には呪文の一文と術式を表した魔法陣が描かれている。
「おじいちゃん、ヒルダ先生に見蕩れてたんじゃないでしょうね。おばあさまに言いつけちゃうよ」
「はは・・・何を言ってるんだユリア。儂はこう見えて一途なんだぞ」
ユリアが横目でじとっとした視線を突き刺してくる。
綺麗な娘だとは思うが、孫ほど歳の離れたヒルダに見蕩れるなど、間違ってもありえない。一途と言ったのも本心ではあるが、頭が上がらないのも事実ではある。謂れのない告げ口はやめて頂きたい。
「~~っ!ユ、ユリアさん!?
な、何をおっしゃってるんですかっ?!」
ヒルダはまたわたわたと手を振っている。
「おほんっ!ところで、ヒルダ先生。すまんが少し呆っとしてしまっていたようだ。その術式についてかな?」
「え?あ、あ、そ、そうですっ!
フェンスさんには雑作もない質問でしょうが・・・」
ちらっとユリアに目をやる──
が、質問を振られたら困るとばかりにユリアはパッと視線を反らす。
「うむ。その呪文は『パラライズ』、麻痺の呪文、陣はその展開術式だな。
このタイプの術式は古く古魔術ではこれとはまったく別の呪文と術式で表されるが、そこに書かれている近代魔法では『与える』といった共通術式で呪文と術式を表せる。
それぞれ『麻痺』に当たる部分を『毒』や『睡眠』に変えることによって様々な効果の魔法に対応出来る。また、その複合も可能となる…。で、良かったかな?」
「す、すごい。完璧です!!」
ヒルダは一瞬キョトンとした顔をしていたが、すぐにキラキラした目でパチパチと手を鳴らす。
「おじいちゃんは相変わらずね」
「はぁ~~、これがフェンスさんの無駄な魔法知識」
「んんっ?!」
何か聞き捨てならない言葉が聞こえたような。
「あ!あぁっ!?す、すみません!そういったわけではなくてっ、その、あの、前に師匠がそう言ってたもので・・・つい」
あいつめ。弟子にまでそんなことを言っているのか。
恐縮してペコペコと頭を下げ続けるヒルダを落ち着かせるために、落ち着いた声を作って話しかける。
「魔法を録に使えない儂がこんなことを言うのもなんだが、魔法に無駄なことなど無いと儂は思ってる。
基礎を突き詰めれば、詠唱の効率化や効果の上昇、また基礎から新たな発見があることもある。
魔法だけの話ではないが、剣でもなんでも基礎は大事なものだよ」
「「・・・・・!」」
偉そうなことを言ってしまったかと思ったが、二人とも儂に目を向けたまま黙っている。
変なことを言ったか?
「す、素晴らしいですっ!正にその通りだと私も思います!」
ヒルダがまた、キラキラ目でパチパチ手を鳴らす。
ユリアの儂を見る目も少し変わったかな?
「師匠にも、今の言葉を延々と聞かせて上げたいです。」
「はは・・・。あいつは直感的な天才だからなぁ」
ヒルダの師匠ミリアーナは、誰もが認める天才魔法使いではある──のだが。
猫獣族であることも関係しているのか、魔法は理論的なものではあると思うのだが、彼女は本能的に魔法を使う。
そのため、他者に教えるといった行為を一番の苦手としているようだ。ヒルダはよくそんな師匠の元でここまで成長したものだ。反面教師といったところか?
「で、では!座学はここまでにして、この後は外でこの付与魔法の実践と魔力鍛練を行いましょうか」
そう言ってヒルダはパタンと手元の魔導書を閉じる。
「やった!
ほら!おじいちゃんも早く準備して!」
ユリアは座学より課外授業が好きなようで、外に行くとなると表情がガラッと変わる。考えるよりも動く、戦士向きな性格だとは思うが、それは加護の儀式が終わってからでも良いな。
ユリアこそ、ミリアーナに弟子入りした方が良いのでは。と、ふと思う。
三人連れ立って部屋を出てエントランスへと向かう。
途中、先を歩いていたヒルダが我が家の中心、入口から見て正面に大袈裟に飾られている大盾を見て立ち止まる。
「・・・先生?」
「え?あ、あぁっ!すみません。少し呆っとしてしまいました」
「どうかしましたか?」
「い、いえ!いつも見て思うことなんですが、フェンスさんはこの盾を持って戦っていたんですよね」
「あ、ああ。そうだな・・・」
ちらっと盾の方に視線を向けるがすぐに戻す。
普段はなるべく視界に入らないようしているし、そもそも近づかない様にここを通らず庭から出入りしている。儂としては倉庫にでも押し込んでおきたいのだが、家族の総意でここに飾られている。
「師匠から色々とお話は聞きますが、激しい戦いをくぐり抜けたとは思えないほど、綺麗で神聖な雰囲気があって、見ているだけで安心する様な感じがします」
「・・・・・・」
「あっ!すみません!余計なことを申しました。」
ヒルダがわたわたと頭を下げる。
「構わないよ。神の加護を受けた盾、そう感じるのが普通。
さぁ!先生!そんなことより早く行きましょう。」
話している間に入口の扉まで進んでいたユリアに向けて歩き出す。
「儂にはそうは感じられんがな──」
「おじいちゃん・・・」
ぼそっと漏らした言葉をユリアに聞かれてしまったか?
何でもないと言って先に外に出る。
二人も黙って後をついてくる。
行き先は南門を出て少し歩いたところにある草原だ。
0
あなたにおすすめの小説
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる