盾の騎士は魔法に憧れる

めぐ

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再び手にした決意

魔法への憧れと盾への自責4

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 盾の神の加護を得た俺は悩みもしたが、ヨルニール先生とギリアムにも相談し、本格的に盾騎士へなることを決めた。

  どう悩んだところで結局魔力は無いのだから、魔法使いはもちろん、補助的に魔法が必要になる職業には就けない。

  魔力を使わず気力を使う技、『スキル』は各職にあるが、剣士系統では、一気に相手の懐に接近するために速力アップの魔法や、防御の固い相手にも確実にダメージを与えられる様に剣の斬れ味をアップする魔法などが必要になる。

  弓使い系統でも、属性矢だとか、追尾する攻撃などにも魔力が必要になる。

  盾騎士にも魔力を使うスキルはあるが、基本の技から上級の技まで気力で扱える技が多い。

  選んだ──と、言いたいところだが、どちらかと言うと消去法だ。まぁ、自分のタイプや加護を考えるとベストな選択とも言えるが。

  それからの俺は、たまにお願いや協力をすることもあったが、二人の薦めもあり、ソロとして冒険者の活動を行った。

  一人で依頼をこなすこともあったし、臨時のパーティを組んで討伐依頼に参加することもあった。
  ギリアムに教わった盾騎士の技術は大いに役立ち、他の冒険者からも絶賛され、ギルド内はもちろんギルド外でも名が知れたようで、道を歩いていて声をかけられる事が多くなった。

  多少、調子に乗っていたとは思うが、冒険者達に頼られ、街人からも笑顔を向けられ、充実した毎日が楽しくもあった。
  過去の出来事を夢に見なくなるほどに。

  そんなある日、あの出来事が起こった──

  クラーゼル王国を旗頭とする連合軍と、シャルマート帝国との戦争は既に表面化し、連合軍が劣勢気味だという噂や、帝国軍が何やら異形の魔物を使役しているなどといったまことしやかな噂が、ギルド内や酒場で囁かれていた。

  俺はいつものように宿を出たあと、冒険者ギルドへと向かった。何か稼ぎの良い依頼が出ていないか、ギリアムに頼まれていた品の情報が出ていないかを確かめるためだ。

  目当てのものが無いときは、しばらくギルド内で時間を潰しているとパーティのお声かけがかかるときもある。そうやって日銭を稼ぐ。

  ギルドへの道すがら、通りの商店の主や売り子に挨拶したりされたりしながら最後の角を曲がる。ギルドの建物の入口が目に入ったとき、そのドアを破壊しながら冒険者らしき男が吹き飛んできた。

  中から複数人の大声も聞こえる。

  俺は、駆け足でギルドに飛び込む。
 
 そこに居たのは──

  金色の髪に真っ直ぐな蒼の瞳、何かしらの大きな決意を胸に抱いた表情。白銀のプレートアーマーに何やら神聖な雰囲気すら感じる剣を携えた一人の青年。

  彼は静かに剣を鞘に収めると、受付のギルド職員に何やら話しかけている。

  俺は近くにいた顔見知りの冒険者に声をかけ、何が起こったのかを尋ねる。

  どうやらあの青年が急に現れ、このなかで一番強い者を雇いたいと言ったそうだ。それでさっきの男が名のり出て、腕試しにと飛び掛かったところ返り討ちにされ、吹き飛ばされたとのことらしい。

  ギルド職員と話し終えたらしい青年は、周囲からの野次などまったく気にもかけず入口へと歩き出す。

  なんとなしに目が合ってしまった。

「・・・その大盾、貴方は盾騎士なのですか?」

  そう尋ねられる。

「あ?あ、ああ。そうだ。盾騎士をやってる」

  青年は俺の目を真っ直ぐに見て語りかけてくる。

「貴方は、かなり腕が立ちそうですね?このギルド一番の使い手は貴方でしょうか?」

「・・・・・・」

  何と答えたものかと思案していると、

「フェンスはつえーぞ!さっきの奴なんて比べもんにならねぇよ!!」

  と、隣に居た顔見知りの冒険者が要らぬことを言う。

  ただ何故か、俺もこの青年と腕試しをしたくて堪らなかった。

「一番かどうかは知らないが、それなりにやれる自信はあるぜ?」
「どうですか?良かったらひとつ、腕試しでもしますか?」
「!?・・・いいぜ。やろうか?」

  お互いにニタッと笑い会う。

  これが、聖剣を授かった勇者フリオニールとの出会いだった。





  それから俺とフリオニールはパーティを組んだ。

  加護の儀式で世話になった僧侶マリア、ギリアムの依頼で訪れた山村で出会った魔法使いミリアーナを仲間に加え、街を襲う魔物退治や神の加護を受けた武具集め、帝国軍との戦争に介入し、そして最後の魔王との決戦に挑んだ。

  魔王との決戦は熾烈を極めたが、俺達は互いに協力しあいあと少しというところまで魔王を追いつめた。

  魔王最後の攻撃をなんとかいなし、その力を逆に利用して魔王へとどめの一撃を喰らわせる!

  そこで、俺はミスを犯した──

  パーティの盾として、どんなときも仲間の安全、相手の動きに注意しなければいけない立場を忘れ、攻撃に転じてしまった。

  そのため魔王最後の反撃に対応が遅れ、俺がやるべき守りの役割りをフリオニールに半分任せる形となった。

  なんとか魔王を倒すことは出来たが、大きな代償を払うこととなった。

  魔王の反撃を身体全てで止めたフリオニールは、右腕と右目を失った──

  その傷は魔王の最後の悪足掻きか、呪いがかかっているようで治癒魔法も効かなかったらしい。

  フリオニールはなんとか命を取り留め、回復したあとは帝国領土をまとめることに尽力した。

  滅んだ帝国の領土はかなり広大であり直接の統治は難しいと、連合各国の王達は談義を重ね、領土を大きく五つに分けた。そこにそれぞれの王公貴族を送り属国として間接統治を行うこととした。
  フリオニールは、もともとクラーゼル王国の第二王子ではあり、魔王討伐の功績の恩赦として、帝国首都を中心に建国されたシャルマート王国の初代国王となった。

  人は彼を『隻腕の勇者王』と呼び称えた。

  俺も、魔王討伐の功績に報いる恩赦として、新王都に屋敷と法衣男爵の地位を貰った。

  しばらくは、反乱などもありその鎮圧を行う軍の指揮などを行っていたが、それが落ち着いた頃合いを見計らって

  俺は、盾を手放した──
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