盾の騎士は魔法に憧れる

めぐ

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再び手にした決意

未知の神とその加護1

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「・・・付与の神?そんな神はいない。バカなの?」
「~~っ!相変わらず一言多いな、お前は・・・」

  大神殿を出た儂とユリアは、その足で魔法ギルドへとやって来ていた。
 
  魔法の事と言えば、まず思い浮かぶのはここだろう。

  魔法ギルドでは日々、実戦的な魔法の研究が行われ、既存の魔法の改良、複数属性を用いた新魔法の開発、生活品から洞窟探索、戦闘にも使える魔道具の開発などを行っている。

  建物内はいかにも魔法使いらしいローブを着た人々が、難しい顔で難しいことを日夜話し合っている。

  ヒルダの師匠でもあり、魔法ギルド特別顧問でもある魔法使いミリアーナ。
 彼女を頼って来てはみたが、目の前にいるこいつが答えを知ってるとは到底思えない。

「そういえばお前。余計なことを周りに言い触らしているみたいだな」
「・・・ん?何のこと?ああ。フェンスの無駄知識のこと?」

「・・・・・・」

  今さら、こいつに何を言っても変わるわけでもない。もう、何年も前に諦めている。

「し、師匠・・・フェンスさんの魔法に関する知識は、決して無駄なんかではありませんよ。基礎を突き詰めれば、魔法の効果の向上にも繋がりますし、新たな発見にも繋がるかもしれませんし。そ、そうですよね?フェンスさん・・・」

  お茶を入れてくれていたヒルダが、先日に儂が言ったことをそのままミリアーナに言いながら、カップをそれぞれの前に置いてくれる。
  ミリアーナのカップだけ魚の絵が描かれた可愛らしいものだ。

「・・・誰の受け売りなんだか。まぁ確かに、基礎は大事。私はキライだけど」

  カップを両手で持ち上げたミリアーナは、これでもかとフーフー息を吹きかけお茶をほんの少し口に入れる。

  猫舌か……。

  すぐに誰かの受け売り──儂だが──とバレ、ヒルダは顔を紅くして無言で後ろに下がっていく。

「話がずれたが、やはりお前も付与の神のことはわからないか」
「・・・そうだね。名前からして付与魔法に、関係しているんだろうけど」

  ズズッとお茶を一口飲む。

「・・・そんな神さま、聞いたこともない」

  ミリアーナは確か、火の神の加護を受けているはずだが、火 水 風 地の四元属性全ての魔法を得意とし、亜人であるため人間には修得不可能な無属性の魔法も修めている。

  確かめたことはないが、きっと知らない魔法は無いのであろう。その彼女が知らないと言うのだ。ここの誰に聞いても知らないだろう。

「やはり、聞いたことないよな。さて、どうしたもんか」
「・・・わかってるんなら、わざわざ聞きにこないで。わたしもこう見えて忙しいの」

  やはり、一言多い。

「・・・悪かったな、邪魔をして。たまには顔でも見てやろうかと思ったもんでな」

  儂とミリアーナは魔王討伐の際、同じパーティとして旅をしていた。戦闘のときなどは問題なく連携も取れ、仲間として互いに信頼出来ていたと思うが、普段は何かと突っかかってくる。

  儂が何かしたか?まったくわからん。

  これ以上ここに居ても何かが解るわけでもないし、そろそろ出ようかと思い、ヒルダに顔を向けてふと気付く。

「ヒルダ。今日もルシオスは依頼で出てるのか?」

  先日の魔法の授業に来ていなかったからか、しばらく顔を見ていない気がする。

「え?え、ええ。この前お話しした東の森の調査に今日も行くと言っていました。今回は何日かかかるかもとも言っていました」
「そうか・・・」

  そんなに何度も調査に出なければいけない程の状況になってるのか?
 まだ街に被害は出ていないのか、守備隊から儂のところに報告は届いていない。明日あたりにでも冒険者ギルドに話を聞きに行こう。街の防備も考えなければいけないかもしれないな。

「ヒルダ、ではこの辺でお邪魔するよ……。
  ミリアーナも、じゃ・ま・し・た・な!!」
「・・・ホント。でも、少し調べとく」

  少しは興味を持ったらしい。

  儂は無言で部屋を出る。外に出るところで後ろからヒルダが追いかけて来る。

「フ、フェンスさんっ!師匠がまた失礼なことを言って、申し訳ありませんでしたっ!!」
「ん?ああ、気にしなくていい。いつものことだ。あいつが儂に突っかかってくるのは昔からだ。理由はさっぱりわからんが・・・」

「あたしは何となくわかるけどなぁ~」

  ユリアにはわかるらしい。やはり、似たところがあるのか。

「何でだと思うんだ?」
「ん~~。ナイショ!」

  そう言って、少し前に駆け出す。

「おじいちゃん、この後はどうするの?」

  クルッと振り向いたユリアが聞いてくる。

「ん?あぁ、儂はもう一軒寄るところがあるから、ユリアは先に帰ってなさい」
「どこ行くの?」
「療養所だ」

  魔法に関してはもう一人頼りにしている人がいる。

「あ~、わかった。先に帰ってるね。
  ヒルダ先生!また明後日、授業ヨロシクお願いします!」

「はい。こちらこそヨロシクお願いします」

  ユリアはヒルダに挨拶をすると屋敷の方へと小走りに駆けていく。成人を迎えたのだから、もう少し大人らしく淑やかに出来ないものか。

  ヒルダを少しは見習いなさい。

「・・・はぁ。では、ヒルダ。儂も失礼するよ。」
「は、はい!また明後日お伺いします。」
「ああ、宜しく頼むよ。」

  魔法ギルドを後にした儂は、療養所へと向かう。

  週に一度は顔を出しているが、今日の手土産は何にしようか──
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