盾の騎士は魔法に憧れる

めぐ

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再び手にした決意

付与の可能性

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 もう少し街を散策して帰ろうかとも思ったが、ユリアもずっと慣れない盾を持っているのは辛いだろうし、先程からグーグーグーグーとハリルの腹が鳴き止まない。

 そろそろ昼時だし、屋敷に戻って食事にすることにする。

 屋敷に戻るまての間もユリアは盾を抱いたままニコニコニコニコ、上機嫌だ。重そうにしていたから持とうかと聞いたが断られてしまった。
 そんなに盾が欲しかったのだろうか。

 まあ、喜んでくれたのならそれが一番だ。

 屋敷に到着し門をくぐるとどれだけ腹が空いていたのか。ハリルはいつも食事を貰っている庭の定位置に勢い良く駆け出し、行儀良くお座りする。
 
 儂はユリアも一緒なので今日はちゃんとした入口から中に入る。
 扉を開けてすぐのところで、我が家のメイドの一人カーラがせっせと屋敷の掃除をしてくれている。

「お帰りなさいませ。思っていたより、お早いお帰りでございますね」
「カーラさん、ただいま!見て!あたしの盾!」

 ユリアは喜びを誰かと分かち合いたくて堪らないようで、大切そうに抱いていた盾を頭上に掲げカーラに見せつける。

「あらあら、ユリアお嬢様。旦那様の御盾とご一緒の素敵な色合いの盾でございますわね。おめでとうございます」

 カーラの返答を受けて、ユリアは更に嬉しそうだ。

「ただいま、カーラ。腹が空いてしまってね、少し早いが食事の用意をお願い出来るかい? あと、お土産だ。いつも頑張ってもらっているからな。ジュディと一緒に食べるといい。」
「まあ!ありがとうございます。御心遣い感謝致します。
 お食事はもう下準備は出来ていますので、すぐにご用意致しますね。ハリルの分も」

 流石カーラ。長く我が家のメイドを努めているだけあって、完璧な仕事ぶりだ。

 カーラは、この屋敷に住むようになったときから勤めて貰っている。もとはシャルマート帝国城の見習いメイドだったが、王国に変わり、儂がこの屋敷をフリオニールから貰った際に、斡旋してもらったのだ。

 ちなみにもう一人のメイド、ジュディはカーラの娘である。

 

 食事を食べ終わり、食後のお茶を飲んでいると扉が開きジュディが入ってくる。

「旦那様。ごゆっくりなされているところ、申し訳ございません。ミリアーナ様がお見えです。応接間にご案内してありますので」
「ん、分かった。ありがとう」

 ミリアーナが我が家を訪ねてくるとは、珍しい。

 昨日、ユリアの加護について話したばかりだが、何か解ったのだろうか。ユリアも同席のほうがいいな。

 カーラにユリアを呼んでくれるよう頼み、応接間に向かう。

 部屋に入ると、ジュディが入れたお茶と菓子をもくもくと食べるミリアーナが目に留まる。
 亜人は人間の倍ほど長く生きるため年齢の割りに若く見える。ミリアーナは小柄でもあるため、余計に若く見えるためパッと見は子供にも見えなくない。

「・・・ん。モグモグ フェンス、昨日のこと  モグモグ ちょっと調べたんだけど   モグモグ」
「ミリアーナ・・・。食べてからでいいぞ」
「・・・ん。ありがと   モグモグ  モグモグ」

 遅れて部屋に入ってきたユリアはその姿を見て唖然としていた。





「・・・調べた結論から言うと、やっぱり付与の神については何も解らない」

 皿に乗った菓子を全て平らげたあとに、おもむろに話し出す。

「その件に関しては、こちらでどうにかなるかもしれない」
「・・・そうなの?それは良かった」

 その辺はあまり興味が無いのか、どうしてかを聞きもせず話を終わらせる。

「・・・じゃあ、その加護についてなんだけど」

 加護に関しては、何か解ったのか?昨日の今日で仕事が早いものだ。ありがたい。

「・・・加護の源になる神がよく解らないから、あくまでもわたしの推測だけど。基本的に加護は、その神と同じ属性や武器を扱う技術に恩恵をもらえるもの」

 神の加護を授かるとその加護に合った才能や能力に恩恵を受ける。フリオニールなら剣の加護だから剣の腕。聖剣の勇者に選ばれたのもそのためだろう。

「・・・付与の加護は、そのまんま付与魔法に恩恵があるんだと思う」
「付与魔法って言うと、『パラライズ』とか『アクセルブースト』とかですか?」

 ユリアが代表的な付与魔法の名前を上げる。

「・・・そう。敵や味方に、状態異常や能力向上を付与する魔法のことね。火の加護が、火属性魔法の威力向上の恩恵があるように、付与の加護は、状態異常魔法の付与確率の向上とか、能力向上魔法の性能が上がったりするんじゃないの?」

 なるほど。補助的な役割り向きということか。

「・・・付与の神っていう、わけわからないのは関係ないみたいだけど、過去には付与術士っていう職業の人がいたってのは知ってる」
「ほぉ!そんな職業があるのか。本当に付与の神は関係ないのか?」
「・・・ええ。わたしのおばあちゃんの、仲間だったらしいから。でもその人は普通に地の加護だったって」

「そうか・・・」

 付与の神に関しては相変わらず解らないが、この件はヨルニール先生の知り合いだという人にとりあえず期待をしておこう。

 付与の加護に関しては、ある程度方向性が見えたのは僥倖だ。
 後で、効果の程を確認してみようか。どのくらい効果が上がるかでユリアの方向性も決めやすいだろう。

「ありがとう、ミリアーナ。参考になったよ」
「・・・別に。たまたま手が空いただけ。あとは、フェンスの無駄知識でどうにかして」

 こ、こいつは・・・。

 たまには役に立つじゃないかと、思ったばかりなのに。
 やはり一言多い。




      
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