18 / 91
再び手にした決意
ゴブリンスタンピード2
しおりを挟むあの壁があった場所は、にわかには信じられない光景となっていた。
多数のゴブリンが崩れた壁の穴から次々と街になだれ込み、守護隊の面々がその対応に当たっている。
既に何匹かは街の奥に入り込んでしまっているようだ。
「ゴードンっ!一人を王城前に待機させている2番隊に使いに出せ!2番隊には街に入り込んだ魔物の捜索とその討伐を行えと伝えろ!」
「了解しました!」
近くに居た、3番隊の隊長ゴードンに指示を飛ばす。
ゴードンは弓の名手だ。話ながらも次々と矢をつがえゴブリンの頭を射抜いていく。
儂も、次々と襲いかかってくるゴブリンを愛用のランス剣を手繰り片っ端から突き殺していく。
一体どれだけいるというんだ?!
冒険者達はどうなっている?!
確認したいことがいくらでもあるがまずはここの鎮圧が優先だ。急いで壁の穴を塞がなければ。
「カインっ!ゴードンっ!半分は東門に残しておけ!向こうも抜かれたら、目が当てられん。」
「はいっ!既にそのように動いています!」
「っ!上出来・・・だっ!!」
少し大きめの個体を突き刺す。ホブの更に上位種、ファイターだな。
これは、更に上がいそうだ。
棲みかとなっている洞窟にはキング・・・。いや、最悪ゴブリンロードがいる可能性がある。
冒険者達の無事と成功を信じるしかあるまい。
「何人かで穴を塞げる物を探せ!残りは、引き続き入り込んだ魔物の討伐と、援護だ!」
ひとまずの方針を伝え、儂も援護に廻る。
壁の穴から入り込んでくるゴブリンの数も、流石に少なくなってきたようだ。あと、もう少し耐えれば──
「そ、総隊長っ!!」
唐突に、2番隊の隊員の一人が駆け込んで来た。
何を言わないでも、表情はかなり緊迫した状況を伝えてくる。
「どうしたっ?!要点だけ話せ!」
「はっ!!き、北門からもゴブリンが侵入しました!」
?!!なんだと!?
「現在、魔法ギルド所属の魔法使い達が、結界を張り食い止めています。ミリアーナ様が参戦されたようですので、間もなく鎮圧されるかと思われますが・・・」
ミリアーナが出たか。なら、そちらは問題ないだろう。
今は急ぎここを──
「そ、それでミリアーナ様が、急ぎ総隊長を呼ぶようにと」
今このときに?何だ・・・?
しかし、ミリアーナは無駄なことをするような奴ではない。何か、大切な何かがあるのだ。
先程出した指示に沿って行動をしている二人の隊長に叫ぶ。
「カインっ!ゴードンっ!ここは任せる!儂は北門に行く!」
「「はっ!了解しました!」」
北門に辿り着くとかなり激しい戦いがあったのか?周囲の建物の損壊が大きい。破壊力のある魔法が何発も放たれた様な壊れかただ。
その壊れた残骸の中に、見覚えのある後ろ姿を見つけ、駆け寄る。
「はぁっ、はぁっ。ミ、ミリアーナ。何があったんだ・・・?」
「・・・フェンス、遅い。体力衰え過ぎ」
「ああ、否定せんよ。・・・それより、何があった?どうして俺を呼んだ?!」
「・・・魔人が出た」
は?魔人だと──?
魔人とは魔王の眷属。魔王討伐の旅の際も、何度も戦った。
そこいらの魔物とは比べ物にならないほどの力と魔力を持ち、かなり苦戦を強いられた記憶がある。
そいつが、今、この街に。
「なんと・・・。そ、それでその魔人は?」
「・・・倒した。なかなか厄介な奴だった」
一人で倒したのか?流石は元勇者パーティの大魔法使い。
まだまだ腕は健在なようだ。
「そ、そうか。で、どうして俺を呼んだ?」
「・・・あいつら、神器を狙ってるみたい。わたしの神器をよこせって言ってた」
神器とは、フリオニールの持つ聖剣と同じ神の加護を受けた武具の呼び名。
実はミリアーナは四元属性の神々の加護を受けた4つもの神器を持っている。風の神の加護を受けた帽子、地の神の加護を受けたローブ、火の神の加護を受けたロッド、そして水の神の加護を受けた指輪の4つだ。
それぞれに、一般の武具とは一線を画す、凄まじい性能を秘めている。
「神器を狙う?・・・何が目的だ?」
「・・・それは、わからない」
神器を奪って何をしようというのか。
ん?待てあいつらっ・・・て、言ったのか?
「・・・ミリアーナ。まさか倒した奴以外にも魔人がいるのか?」
「・・・そうみたい。だからフェンスを呼んだ。わたしが倒しに行こうと思ったんだけど、流石にもう魔力切れ」
「倒しにって、どこに……」
「・・・他にも神器はあるでしょ?フリオニールの聖剣と・・・」
ミリアーナはじっと儂の目を見つめる。
「・・・フェンスの盾」
!!??
しまった!!ユリアが危ない!!
もうひとつの神器。
儂の盾、だった『神盾アイギス』──
0
あなたにおすすめの小説
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―
ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」
前世、15歳で人生を終えたぼく。
目が覚めたら異世界の、5歳の王子様!
けど、人質として大国に送られた危ない身分。
そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。
「ぼく、このお話知ってる!!」
生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!?
このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!!
「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」
生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。
とにかく周りに気を使いまくって!
王子様たちは全力尊重!
侍女さんたちには迷惑かけない!
ひたすら頑張れ、ぼく!
――猶予は後10年。
原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない!
お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。
それでも、ぼくは諦めない。
だって、絶対の絶対に死にたくないからっ!
原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。
健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。
どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。
(全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる