盾の騎士は魔法に憧れる

めぐ

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再び手にした決意

ゴブリンスタンピード1

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「今朝、傷付いたルシオスを連れ帰った冒険者。そこにいるクフルトってやつなんだが」
「初めまして。クフルトと申します」

 紹介された冒険者、クフルトはその場でペコリと頭を下げる。
 上級冒険者にもなると結構荒くれ者が多くなるが、珍しいくらいに行儀の良さそうな冒険者だ。

「ああ、フェンスだ。ルシオスを助けてくれて、ありがとう」

 儂もその場で軽く頭を下げる。

「まずはそいつの話を聞いてくれ。クフルト、時間は少ないんで手短にな」

 そう言ってグストフは、手元においてあった煙草を咥えて火をつける。いい加減にやめろと言っているのだが、本人にその気はまったくないようだ。

「昨日、ギルドマスターからの指名依頼を受けた私達のパーティは、準備を済ませ昼過ぎに森に入りました。問題の洞窟の場所は、事前の調査報告にありましたので、一直線に急行したのですが、途中5匹程のゴブリンの群に何度か遭遇し戦闘になりました」

 5匹程のゴブリンの群。あぶれか、偵察か。

「群の中には、数匹上位種のホブも混ざっていました。
それで少し時間を取られてしまいまして、洞窟前に着いたのはもう暗くなった頃です。交替で見張りをしながら、近くに潜む場所を築いていた際に、運悪くゴブリンに見つかってしまい。 
 倒し損ねた一匹に仲間を呼ばれてしまって、洞窟内から50匹以上のゴブリンが湧き出て来ました。仕方なく応戦をしながら撤退行動に移行しました。その最中に観察したんですが、ゴブリンの中に見覚えのある鎧や武器を手にした個体が数匹。
 あれは、ルシオス君と一緒に調査に出ていた冒険者達の、装備品でした」

「・・・間違いないのか?」
「はい。何人かは顔見知りでしたので、間違いなく・・・。その後、大木の根の陰で傷付き気を失っていたルシオス君を発見し、連れ帰った次第です」

 ルシオスが発見され命のある状態で戻ったのは、相当に運が良かったようだ。

「とまぁ、そんな感じだ」

 グストフは煙草を皿にねじ消す。

「ギルドとしては、間違いなくスタンピードが発生すると見ている。発生する前に冒険者にて編隊を組み、棲みかとなっている洞窟に先制攻撃をしかける予定だ」

 グストフはもう一本、煙草を咥える。

「ここにいる奴らは、王都を拠点にしている上級冒険者パーティのリーダー達だ。突入の際に指揮を取ってもらう」

 なるほど。全員それなりに出来る雰囲気を纏っている。

「・・・わかった。そちらはギルドに任せる。街の守備は守護隊に任せてくれ。何かフォローはいるか?」
「なぁに、ゴブリン程度。何も問題はないさ!街にやつらが辿り着くこともないだろうから、守護隊で宴会の準備でもしといてくれや」

 そう言って、グストフは豪快に笑う。
 周りの冒険者達も不安な顔はしていない。

 ただ一人、クフルトを除いて──




 東門では、既に防衛の準備は終了していた。

 門の外側には土嚢が積まれ、その先には木の杭で作られた柵が築かれ、門に簡単には到達出来ないようになっている。
 城壁に沿って簡易的な射手台も築かれており、備えは万端のようだ。

 この短時間でこの手際。本当に守護隊に収めておくのは勿体ない奴等だ。希望があれば、王城の衛兵などに取り立てるようフリオニールに頼んでみようか。

「カイン、備えは万端のようだな」

 隊員達に指示を飛ばしているカインを見つけ、声をかける。

「フェンス総隊長。はっ!準備はほぼ完了しています!」
「2番隊のほうはどうだ?」
「はいっ!先程伝達がありまして、年配者、女性子供の王城への避難は完了したとのことです。2番隊は指示通り王城前にて待機中です」

「ああ、ご苦労。ギルド側は冒険者の編成が出来次第ゴブリンの棲みかとなっている洞窟に、先制攻撃をしかけるそうだ。
 我々は、あぶれ出て街に向かってくる魔物を迎え撃つのと、負傷した冒険者の救助を行う。療養所とも確認を取っておいてくれ。」

「はっ!了解しました!」




 しばらくして、東門の前に50人程の冒険者がやってくる。10人ずつの隊に別れ、洞窟を取り囲むようだ。

 先程、ギルドで会ったクフルトが近づいてくる。

「フェンスさん。では、我々は森に入ります」
「ああ、くれぐれも気を付けてくれよ」
「はい、ありがとうございます。街のほうは宜しくお願い致します」

 そう言い頭を下げたクフルトは冒険者達に声をかけ門の外に消えていく。

 全員、無事に帰ってこいよ。





冒険者達が森に入って数時間──

 辺りはすっかり日も暮れ、森は既に何も見えない暗闇だ。
 不気味なほどに森は静まり返っている。

「東門周囲は変わらず異常ありません」

 見廻りの隊員が報告をして去る。

 森も街も静かなもんだ。
 洞窟に向かった冒険者達は、もう既に突入したのだろうか。

 このまま何事も無く終わるといいが、何かをひとつ忘れている気がする。なんだっただろうか・・・。

 東門から少し離れた場所に設営した指揮所兼休憩所に、1番隊の隊長カインがやってくる。

「休憩か?」
「ええ。悪いことではないんですが、静か過ぎて逆に息が詰まります。こういう時に煙草を吸っていれば、気が紛れるんでしょうかね・・・」
「あんなもの、ただの毒だ!止めとけ。吸ったらクビにするぞ?」

「ははっ・・・。絶対に吸いませんよ」

 二人でカラカラと笑う。

「・・・なぁ、カイン。何かを忘れている気がするんだが、何だか分かるか?」
「・・・何でしょうか?私にはさっぱりですが・・・」

「「??!!」」

 その時、東門北寄りの方角から何かが爆発したような大きな音がこれまでの静かさをぶち破り響き渡る。

「なっ?!何が!?」

 カインは慌てて飛び出して行く。

 東門の北寄り──大きな音──

「?!!」

 しまった!!あそこだ!

 あの、破城槌で打たれたような痕があった場所──




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