盾の騎士は魔法に憧れる

めぐ

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火の竜の王との邂逅

更なる脅威

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 #ジョルジュ


  総隊長の咄嗟の指示は見事の一言だった。

  迎撃を決めた瞬間には誰よりも早く、あの大きな盾を操っているとは思えないほどの速さで敵の眼前へと踊り出した。

  総隊長は魔力が無いということは知っている。自己での属性耐性を使えないためそれをカバーするよう瞬時に魔法使いに『水域ウォーターレギオン』の魔法を使わせブレスの威力を緩和させる。

  伝説の武具、神盾の防御もまったく隙がなく、その後の魔物の挙動もしっかりと見極め、俺が矢をつがえるより僅かに早くやるべき対処を行うため俺の名を叫んだ。

「アベルっ!ジョルジュっ!二人で先にレッサーを仕留めてくれ。儂は火竜の足止めをする。危ないときはすぐカバーに入るから安心して全力でやれ!」

「はっ!了解しました!」
「シッ!」

  レッサードラゴンに向かって駆け出すアベル隊長の後ろから目を狙って矢を四本連続で放つ。

  2頭には翼で矢を弾かれてしまったが残り2頭の目には矢が深々と突き刺さる。アベル隊長は瞬時にその内の1頭に狙いを切り替え首を目掛け斬りかかる。斬り落とすとまではいかなかったがかなりの傷を負ったレッサーの体勢が崩れる。すかさずさっきの斬り口を狙い斬撃を打ち込む。首を斬り飛ばされたレッサーはそのまま後ろに倒れた。

  うちのゴードン隊長もかなりの腕だがこの人も負けず劣らずの凄腕だ。入隊して気付いたが、城の近衛や騎士ならいざ知らず、たかが街の守護隊の隊長から一隊員まで実力が普通ではない。これだけの面子をどうやって集めたのだろうか。

  アベル隊長はもう1頭の傷を負ったレッサーに標的を移す。俺は援護のために残り2頭に続けざまに矢を射かける。傷を負ったレッサーは片目が潰れているため力任せに暴れまわっていたが、アベル隊長は隙をつき魔石のある胸部辺りに剣を突き刺す。

「ハッ。ひとりでもやれるんじゃないか?」

  俺が矢を射かけていた2頭は標的を俺と定めたようで矢を気にせずに真っ直ぐ突っ込んできた。俺は矢を二本弓につがえ弦を力いっぱいに引き矢に魔力を込める。

凍レル矢フリージングアローッ!』

  氷の魔力を纏わせた矢を放つ。二本の矢は真っ直ぐ無防備に突進してくるレッサードラゴンの胸部を貫くとたちまちその体躯を氷つかせる。少しやり過ぎたな。

「ジョルジュ副隊長。凄まじい一撃ですね・・・」
「アベル隊長もお見事です。さあ、あとは火竜を──

『シールドバッシュっ!』

  援護に入ろうと後ろを振り向くと、総隊長が構えた盾の突進の衝撃で火竜を吹き飛ばしていた。

「おいおい・・・。あの巨体が吹き飛ぶか?」

  総隊長はそのまま火竜の腹部に飛び乗り手に持つランスの様な剣で急所を一突きにする。火竜はそのまま力を失い崩れ落ちた。

「ふぅ。そちらも終わったか?」
「え?あ、はいっ」

  俺としたことが・・・。余りの迫力に呆っとしてしまっていた。

「総隊長は剣だけでも鬼のような強さですが、盾を持った総隊長はもはや鬼神と言っても差し支えありませんね。」
「いや、流石に儂も衰えているよ。さて、ルーテ達を迎えに行くぞ」

  軽やかに火竜から飛び降りると血を払い剣を鞘にしまう。これで衰えている?全盛期はどれだけの強さだったというんだ。
 
  一度手合わせでもしてみたいと思うが、今は任務が先だ。

  魔法使いの女が落ちていった辺りに目をやると何かが落ちている。どうやら女が持っていた鞄のようだ。

「?!」

  ビシッ!という大きな音が響く。

「マズイ!足場が崩れるぞ!」

  火竜の落下によってひび割れた足場が戦いの衝撃に耐えきれなかったようだ。段々と亀裂が大きくなり端から崩れ始める。

「総隊長!こちらに逃げれますっ!」
「仕方ない!ルーテのことはひとまずロディとルークに任せよう。ジョルジュ、行くぞ!」

  落ちている鞄を手に取り足を亀裂に取られないよう全力で走る。岩壁に空いた穴に飛び込むと今までいた足場が火竜達を巻き込んで崩れ落ちていった。

「・・・危なかったな。皆大丈夫か?」
「はい。私は大丈夫です」

  俺も特に怪我はない。無言で首肯く。

「かなり豪快に崩れたな・・・。ルーテやロディらは無事だろうか」
「ロディさんとルークさんもかなりのやり手。きっと上手く回避してると思いますよ」
「アベルは二人をよく知ってるのか?」
「ええ。以前合同訓練を行った際に」
「そうか。アベルがそう言うのなら信用出来るな」

  確かにあの騎士二人も動きは良かった。きっと無事だろう。
  この任務のために組まれた即席パーティではあるがかなりの実力者揃いのようだ。

「さて。戻るにしろ合流するにしろ道はこちらにしかないな」

  総隊長は神妙な面持ちで奥を見つめている。逃げ込んだ通路は更に奥へと伸びていて、そこ以外に進む道はない。
  突然火竜の襲撃にあったため忘れてしまっていたが、さっきの場所にあった首を刈られた火竜を誰がやったのか解っていない。

  総隊長も感じている。
  通路の奥からはひどく異様な雰囲気が漂ってくる。

「・・・総隊長」

  どうするかべきか・・・。間違いなくこの先に火竜の首を難なく斬り落とした奴がいる。目的は分からないがきっと友好的ではないだろう。

「・・・悩んでも道はこちらにしかない。慎重に進むとしよう」

  俺は無言で首肯いた──
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