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火の竜の王との邂逅
火竜王と魔人
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#フェンス
逃げ込んだ先の更に奥へと道は続いていた。
さっきまで居た場所は火竜との戦いで足場が崩れてしまい、戻ることは出来ない。どちらにせよ進むしかなかったのだが。
道の先は異様なほどに静かだ。
小型の魔物の鳴き声も気配すらも感じない。
代わりに何か得体の知れない何者かの気配を感じる。
火竜などではない。それ以上のナニかだ。
「総隊長。いったいこの先に何が・・・」
近付くにつれ威圧を増すこの空気にアベルも気付いたか、自然と小声で話しかけてくる。ジョルジュはかなり前から気付いていたようだが。
「・・・分からん。分からんが気付かれないよう気配は最大限抑えろ。まずは様子を窺う」
隠れられそうな岩陰を探しながら慎重に進む。禍禍しい気配はどんどんと強くなる。汗が流れる。喉が渇く。唾を飲み込む音にすら注意を払う。少し何かが聴こえたような気がする。
しばらく進むとかなり開けた空間が見えてきた。
ちょうどよく三人でも余裕を持って隠れられそうな大岩があった。素早くその陰に隠れ様子を窺う。
そこには──
先程戦った個体より更に大きな火竜が何頭も倒れている。
陰になったり重なっていたりで全てを見ることは出来ないが、その全てが最初に見た火竜と同様に首を刈られていた。
その奥にそれは居た。
火竜の主であろうか。これまで見た中で最大級に大型の火竜が威厳高く佇んでいる。
その前に、黒い装束のひとりの男。火竜の主であろうものから感じるより更に強大な威圧を放っている。
魔人──か?!
火竜とその男は何か話しているようだ。先程聴こえたのは二人の会話だったようだ。息を潜め耳を凝らす。
「さぁ、君以外は皆死んでしまったよ?君もそろそろ諦めたらどうだい?」
『・・・邪悪なる者よ。我らを殺し何を成そうとする』
火竜の首を刈っていたのはこの男のようだ。一体何の目的で?
「ハハッ!これから君のお仲間同様に死んでしまうのに教えることに意味があるのかい?」
『・・・火竜王たる我を愚弄するか。真に不逞な輩だな』
「だって本当のことだしね?」
王だという火竜からもかなりの威圧を感じるが、相対する男はまったく臆することもなく飄々としている。火竜の王を前にして武器も持たず構えすらもしていない。
「・・・まぁ、でもいいか。冥土の土産って言うの?これから死んでいく君への餞に教えてあげるよ!」
この場の雰囲気にそぐわない明るい声で男が語る。
「僕が必要としてるのは君の魔石なんだよね。君の仲間の魔石だけじゃ全然足りなくてね?君ならさぞかし大きくて力のある魔石を持ってそうだからさぁ?」
『・・・同胞の命で何を成そうとする』
「フフ・・・、それはね? 魔神の復活──」
さも当たり前のことのように、男は妖艶に微笑みそう言った。
『マジン』の復活?!!
『マジン』とはいったい何だ?! 魔人とは違うのか?
かなりの数の火竜の魔石では足らず、火竜王の魔石すらも使って復活を目論むもの。ただの魔人ではないだろう。
とてつもなく嫌な予感しかしない。
「ねえ?隠れてないで出てきたら?」
!?・・・バレていたか!どうする・・・。
「出てこれないの?じゃあ僕が出してあげるよ」
「マズイ!!散れっ!!」
言うと同時に横に飛ぶ。その瞬間に隠れていた大岩が漆黒の暗い穴に吸い込まれるように消えた──
な、何だっ!?魔法なのかっ?!
「くっ!・・・二人とも、無事か?!」
「はいっ!だ、大丈夫です!」
「・・・イカれた奴だな」
二人とも怪我はないようだ。しかし、どうする?真面に戦って勝てる気はしない・・・。かつての旅の勇者パーティであればなんとかなるとは思うが、この面子でどこまでやれるか。
ジョルジュは多分力を隠している。かなりの実力を持っているとは思うが、ひとりでは火力不足だろう。アベルではまだ奴には敵わない。
「ハハッ!これは面白いものが紛れ込んだね」
男はまったく脅威と捉えていないのか火竜の王に背を向け、まるで欲しかった玩具を手に入れた子供の様な笑顔でこちらを見る。
「それは『神器』だね?態々持ってきてくれたんだ。先日、取りに行かせたザンズエルが失敗したみたいだから面倒だなぁって思ってたんだ。ガグギエラはボロボロにやられてたし、ひとりは死んじゃったみたいだしね?」
神器を狙っていること。儂の屋敷を襲った魔人の名前を知っていること。もうひとりの名前は知らんが多分最後に現れた奴だろう。それを知っているということは魔人で間違いない。
「・・・届けに来たのはこの盾ではない。届け物はお前の死だ」
「?! ハハッ!君、面白いね?」
この魔人から全員で逃げるのは無理だ。ならせめて二人だけでも逃げられるよう敵意を儂に向けさせなければ。
「っ!総隊長……」
ジョルジュは儂の意図に気付いたようだ。下手なことはせずに逃げる準備をしろよ。
『・・・我に背を向けるとは、愚か者よ。滅ぶがよい!』
背を向け儂らと話していた魔人を消し去ろうと火竜王が特大のブレスを吐き出す。魔人に集中し過ぎて対応が遅れた!スキルは間に合わない!
「アベルっ!ジョルジュっ!儂の後ろに!!
『オーラシールドッ!!』
高温の炎が魔人を包む。そして儂らをも焼き尽くさんと襲いくる。なんとか広範囲防御スキルだけを展開し堪える。あまりの熱で盾の持ち手や鎧が熱を帯び皮膚が焼ける臭いが漂う。
なんとか防げたようだ。後ろに目をやると二人も無事なようだ。
盾の横から前方を窺う。そこには何事もなかったかのように魔人が立っている。
「急にびっくりするじゃないか。服が少し焼けてしまったよ」
魔人は服の裾を手で払う。ブレスで焼けた衣服の煤が風に流れる。あのブレスを盾もなく受けて火傷のひとつもしていないようだ。儂らの持つ攻撃手段ではまったく歯が立たないだろう。
どうにか切り抜ける手立てを考えなければ・・・。
奴の攻撃は不明だが全力の防御なら何発かは耐えられるだろう。儂が奴の攻撃を防いだ瞬間に最大の一撃を畳み込み、隙を見て離脱する他ない。ただ隙を作れるだけの攻撃が出来ない。火竜王くらいの火力がなければ。どうにかあのブレスを利用出来ないだろうか。
「あのバカデカイ火竜、私たちまで燃やすつもりでしたね。巻き添えは勘弁願いたいものです」
「・・・そうだな。まぁ火竜もあの魔人相手に加減などしてられないだろうがな」
ん?巻き添え・・・。そうか!その手があるか!
上手くいく保証はまったくないがな。
「アベル、ジョルジュ、儂に策がある。成功の可能性は低いが上手く運んだら儂の動き出しに合わせて魔人を避け火竜の前まで走れ」
「なっ?!そ、総隊長はそれはどういった・・・」
「説明の余裕はない。走る準備だけしておけ」
大きく息を吸い込む。先程のブレスで焼かれたか胸が痛む。目一杯肺を膨らまし大声で火竜に向け叫ぶ。
「火竜の王よっ!倒すべき敵は同じ。ここは共闘しよう!!」
「なっ?!」
先程までの攻防が嘘のように静まり返る。誰もが儂の発言に言葉を失ったようだ。
「プッ!ハ、ハハッ!君、本当に面白いね!」
静寂を破ったのは魔人。腹を抱え愉快そうに笑う。涙まで流しているようだ。
火竜の王よ、乗ってこい!!
何やら上の方が騒がしい。この状況で新手でも来られたら堪らない。早くこの場をどうにかしなければ。
『・・・人の子よ。我に共に戦えと申すか。お前にそれだけの力があると申すのか・・・?』
乗ってきた!
「あ、ああ!儂は神の加護を受けた『神器』神盾アイギスの持ち手。邪悪なる者の攻撃など全て防いでみせよう!!」
『・・・魔の者と意見が合うのは不快だが、面白い者のようだ。良かろう!力を合わそうではないか!」
よしっ!上手くいった。火竜とともに奴を撃退する!
足に力を込め火竜の前へ走り出そうとしたときそれは落ちてきた。
「──ぁぁぁぁあああああフェンスさまああぁぁぁぁぁぁ!!!」
なっ?!! ル、ルーテっ!!?
上からルーテが降ってきた──
逃げ込んだ先の更に奥へと道は続いていた。
さっきまで居た場所は火竜との戦いで足場が崩れてしまい、戻ることは出来ない。どちらにせよ進むしかなかったのだが。
道の先は異様なほどに静かだ。
小型の魔物の鳴き声も気配すらも感じない。
代わりに何か得体の知れない何者かの気配を感じる。
火竜などではない。それ以上のナニかだ。
「総隊長。いったいこの先に何が・・・」
近付くにつれ威圧を増すこの空気にアベルも気付いたか、自然と小声で話しかけてくる。ジョルジュはかなり前から気付いていたようだが。
「・・・分からん。分からんが気付かれないよう気配は最大限抑えろ。まずは様子を窺う」
隠れられそうな岩陰を探しながら慎重に進む。禍禍しい気配はどんどんと強くなる。汗が流れる。喉が渇く。唾を飲み込む音にすら注意を払う。少し何かが聴こえたような気がする。
しばらく進むとかなり開けた空間が見えてきた。
ちょうどよく三人でも余裕を持って隠れられそうな大岩があった。素早くその陰に隠れ様子を窺う。
そこには──
先程戦った個体より更に大きな火竜が何頭も倒れている。
陰になったり重なっていたりで全てを見ることは出来ないが、その全てが最初に見た火竜と同様に首を刈られていた。
その奥にそれは居た。
火竜の主であろうか。これまで見た中で最大級に大型の火竜が威厳高く佇んでいる。
その前に、黒い装束のひとりの男。火竜の主であろうものから感じるより更に強大な威圧を放っている。
魔人──か?!
火竜とその男は何か話しているようだ。先程聴こえたのは二人の会話だったようだ。息を潜め耳を凝らす。
「さぁ、君以外は皆死んでしまったよ?君もそろそろ諦めたらどうだい?」
『・・・邪悪なる者よ。我らを殺し何を成そうとする』
火竜の首を刈っていたのはこの男のようだ。一体何の目的で?
「ハハッ!これから君のお仲間同様に死んでしまうのに教えることに意味があるのかい?」
『・・・火竜王たる我を愚弄するか。真に不逞な輩だな』
「だって本当のことだしね?」
王だという火竜からもかなりの威圧を感じるが、相対する男はまったく臆することもなく飄々としている。火竜の王を前にして武器も持たず構えすらもしていない。
「・・・まぁ、でもいいか。冥土の土産って言うの?これから死んでいく君への餞に教えてあげるよ!」
この場の雰囲気にそぐわない明るい声で男が語る。
「僕が必要としてるのは君の魔石なんだよね。君の仲間の魔石だけじゃ全然足りなくてね?君ならさぞかし大きくて力のある魔石を持ってそうだからさぁ?」
『・・・同胞の命で何を成そうとする』
「フフ・・・、それはね? 魔神の復活──」
さも当たり前のことのように、男は妖艶に微笑みそう言った。
『マジン』の復活?!!
『マジン』とはいったい何だ?! 魔人とは違うのか?
かなりの数の火竜の魔石では足らず、火竜王の魔石すらも使って復活を目論むもの。ただの魔人ではないだろう。
とてつもなく嫌な予感しかしない。
「ねえ?隠れてないで出てきたら?」
!?・・・バレていたか!どうする・・・。
「出てこれないの?じゃあ僕が出してあげるよ」
「マズイ!!散れっ!!」
言うと同時に横に飛ぶ。その瞬間に隠れていた大岩が漆黒の暗い穴に吸い込まれるように消えた──
な、何だっ!?魔法なのかっ?!
「くっ!・・・二人とも、無事か?!」
「はいっ!だ、大丈夫です!」
「・・・イカれた奴だな」
二人とも怪我はないようだ。しかし、どうする?真面に戦って勝てる気はしない・・・。かつての旅の勇者パーティであればなんとかなるとは思うが、この面子でどこまでやれるか。
ジョルジュは多分力を隠している。かなりの実力を持っているとは思うが、ひとりでは火力不足だろう。アベルではまだ奴には敵わない。
「ハハッ!これは面白いものが紛れ込んだね」
男はまったく脅威と捉えていないのか火竜の王に背を向け、まるで欲しかった玩具を手に入れた子供の様な笑顔でこちらを見る。
「それは『神器』だね?態々持ってきてくれたんだ。先日、取りに行かせたザンズエルが失敗したみたいだから面倒だなぁって思ってたんだ。ガグギエラはボロボロにやられてたし、ひとりは死んじゃったみたいだしね?」
神器を狙っていること。儂の屋敷を襲った魔人の名前を知っていること。もうひとりの名前は知らんが多分最後に現れた奴だろう。それを知っているということは魔人で間違いない。
「・・・届けに来たのはこの盾ではない。届け物はお前の死だ」
「?! ハハッ!君、面白いね?」
この魔人から全員で逃げるのは無理だ。ならせめて二人だけでも逃げられるよう敵意を儂に向けさせなければ。
「っ!総隊長……」
ジョルジュは儂の意図に気付いたようだ。下手なことはせずに逃げる準備をしろよ。
『・・・我に背を向けるとは、愚か者よ。滅ぶがよい!』
背を向け儂らと話していた魔人を消し去ろうと火竜王が特大のブレスを吐き出す。魔人に集中し過ぎて対応が遅れた!スキルは間に合わない!
「アベルっ!ジョルジュっ!儂の後ろに!!
『オーラシールドッ!!』
高温の炎が魔人を包む。そして儂らをも焼き尽くさんと襲いくる。なんとか広範囲防御スキルだけを展開し堪える。あまりの熱で盾の持ち手や鎧が熱を帯び皮膚が焼ける臭いが漂う。
なんとか防げたようだ。後ろに目をやると二人も無事なようだ。
盾の横から前方を窺う。そこには何事もなかったかのように魔人が立っている。
「急にびっくりするじゃないか。服が少し焼けてしまったよ」
魔人は服の裾を手で払う。ブレスで焼けた衣服の煤が風に流れる。あのブレスを盾もなく受けて火傷のひとつもしていないようだ。儂らの持つ攻撃手段ではまったく歯が立たないだろう。
どうにか切り抜ける手立てを考えなければ・・・。
奴の攻撃は不明だが全力の防御なら何発かは耐えられるだろう。儂が奴の攻撃を防いだ瞬間に最大の一撃を畳み込み、隙を見て離脱する他ない。ただ隙を作れるだけの攻撃が出来ない。火竜王くらいの火力がなければ。どうにかあのブレスを利用出来ないだろうか。
「あのバカデカイ火竜、私たちまで燃やすつもりでしたね。巻き添えは勘弁願いたいものです」
「・・・そうだな。まぁ火竜もあの魔人相手に加減などしてられないだろうがな」
ん?巻き添え・・・。そうか!その手があるか!
上手くいく保証はまったくないがな。
「アベル、ジョルジュ、儂に策がある。成功の可能性は低いが上手く運んだら儂の動き出しに合わせて魔人を避け火竜の前まで走れ」
「なっ?!そ、総隊長はそれはどういった・・・」
「説明の余裕はない。走る準備だけしておけ」
大きく息を吸い込む。先程のブレスで焼かれたか胸が痛む。目一杯肺を膨らまし大声で火竜に向け叫ぶ。
「火竜の王よっ!倒すべき敵は同じ。ここは共闘しよう!!」
「なっ?!」
先程までの攻防が嘘のように静まり返る。誰もが儂の発言に言葉を失ったようだ。
「プッ!ハ、ハハッ!君、本当に面白いね!」
静寂を破ったのは魔人。腹を抱え愉快そうに笑う。涙まで流しているようだ。
火竜の王よ、乗ってこい!!
何やら上の方が騒がしい。この状況で新手でも来られたら堪らない。早くこの場をどうにかしなければ。
『・・・人の子よ。我に共に戦えと申すか。お前にそれだけの力があると申すのか・・・?』
乗ってきた!
「あ、ああ!儂は神の加護を受けた『神器』神盾アイギスの持ち手。邪悪なる者の攻撃など全て防いでみせよう!!」
『・・・魔の者と意見が合うのは不快だが、面白い者のようだ。良かろう!力を合わそうではないか!」
よしっ!上手くいった。火竜とともに奴を撃退する!
足に力を込め火竜の前へ走り出そうとしたときそれは落ちてきた。
「──ぁぁぁぁあああああフェンスさまああぁぁぁぁぁぁ!!!」
なっ?!! ル、ルーテっ!!?
上からルーテが降ってきた──
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