盾の騎士は魔法に憧れる

めぐ

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火の竜の王との邂逅

反撃の兆し

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「フ、フリオニール?お、お前が何故ここに・・・?」

  崖の上から颯爽と飛び降りてきた人物。

  それは『隻腕の勇者王』フリオニールその人であった。

「上から覗いてみたらお前がピンチに見えたのでな、助けに来たのだ。感謝しろ?」
「~~っ。俺が聞きたいのはそういうことじゃなくてな!」

  見ていたのなら状況は把握しているだろうに、随分と余裕なものだ。流石は勇者王様といったところか?

「ハッハッハッ!ああ。分かっているさ。で・・・、あれは魔人か?」

  フリオニールも大分戦いから遠ざかっているから鈍っているのかと一瞬疑ったが、当時を彷彿とさせる鋭い眼光で魔人を睨み付けた。

「フェンス。奴が敵だというのは分かるが、これはどういった状況だ?些か理解に苦しむ」

  魔人から儂の背後に視線を移したフリオニールは、勇者の眼光はすでに消え失せ上を見上げ困惑顔をしている。二枚目が台無しだな。

「あ~~、説明したいところではあるが今がそういう状況ではないのはお前も見て分かるだろう?」
「それは分かるがその巨大な火竜は敵ではないのか?」
『我は人の子の仲間などではない』
「?!やはり敵か!フェンス!どっちをやる?!」
『・・・よかろう。邪悪なる者の前に消し炭にしてくれよう』

  大混乱だ。

「待て待て待ていっ!!この火竜は今は敵ではないっ!」
「何を言っている!?仲間ではないと言っているではないか!それ即ち敵であろう!」

  ぐっと青く光る剣を握りしめる。

「あ~~もうっ、剣を引けっ!火竜の王も紛らわしい言い方をしないでくれないか!」
『・・・仲間でないことは事実であろう』
「それより!今は魔人を──」

「ねぇっ!!」
「?!!なっ!」

  構えていた盾を凄まじい怒気が貫く。

「君達の攻撃の番だって言ったよね?してこないならパスってことで僕がまた攻撃しちゃうよ?」

  マズイ。怒らせてしまったか?くそっ!
  仕方ない、もう一度耐えるしかない!

  スキルを使おうと盾を構える。その横をスッとフリオニールが前に歩み出た。

「なっ?!フ、フリオニール何をする気だ?!」
「よくは分からんがこちらの攻撃の番と言うのだろう?では応えるのが礼儀というもの・・・」
「なっ!?お、おい!やめっ──」

『ソニックスラッシュッ!』

  言い終えるより早くフリオニールの神速の剣が逆袈裟に空間を薙ぐ。衝撃波が水の魔力を纏い魔人に襲いかかるが、障壁に阻まれ魔人の目前で弾け消える。

  魔王にも傷を与えたフリオニールの剣技は然程衰えを感じなせないが、やはり奴の障壁は砕けなかったようだ。水属性の効果も追加されていたというのに・・・。

  ん?水属性だと?

「お、おい!フリオニール、い、今のは・・・?」
「かなり厄介な障壁であるな。ん?これか?これはな──」

「「!!」」

  突然空間が歪むような禍禍しい気配が膨らむ。フリオニールの背後、魔人の手に一撃目より大きな漆黒の球体が浮かびあがる。

「残念でした。さぁ次は僕の番だね?」

  しまった!スキルが間に合わないっ!

「フリオニールっ!!後ろに──」

  咄嗟に盾を構えるがこれでは・・・、切り札を使うしかっ──

『『インペリアルガードっ!!』』

  どこからか二人の騎士が現れ儂の盾を挟むように立ち並び魔法を唱える。これは、二人以上で行使する特級防御魔法。近衛騎士が使う魔法だ。

「ぐうっ!!」

  魔法の盾が儂の盾と重なった瞬間、先程よりも強烈な暴威が盾に衝突する。かなりきついが魔法の盾のお陰でなんとか最悪の結果は回避出来そうだ。

「どんどん人数が増えるね?じゃあオマケもあげるよ──」

  魔人はそう言うと魔法を放った開いたままの手をグッと握りしめる。 盾に襲いかかっていた暴威が弾ける。その衝撃波で二人の騎士は後方に吹き飛ばされてしまった。

「ぐあぁっ!!」「キャアッ!!」
「ディーン!エダ!」

  フリオニールが騎士のであろう名を呼ぶ。アベルとジョルジュが二人を受け止めていた。あの二人はフリオニールがいつも連れている近衛騎士のようだな。

「・・・フェンス。すまんな。・・・1回分の攻撃を無駄にしてしまったようだな」
「・・・いや。どう攻めるか決めあぐねていたところだ。何かしたところで有効打にはならなかっただろうよ」

  下手に攻撃して手の内を晒すよりはいくらかましだろう。そしてフリオニールが現れたことによって攻撃の幅が広がった。あの青い剣も気になる。

「人数が増えたのを反則と言いたいところだけど、まぁ2回目もよく防げたね。おめでとう♪さぁそちらの番だよ?あまり時間をかけないでよ。僕もヒマじゃないからね」

  魔人は自分の攻撃を防がれたことを気にも留めず、遊戯を愉しむかのように振る舞っている。まだ全然本気ではないのだろう。
  次の攻撃は更に強力なものになる。出来れば次で決めたいところだが・・・そのためには──

「・・・フリオニール。その剣はどうした?お前は属性剣の魔法など使えなかっただろう?」
「ん?あ、ああ。これは『付与魔法』によるものだ」

  やはりか。

  出発の際にやけに素直だと思ったがこういう事だったか。

「・・・ユリアも近くにいるのか?」
「あ、ああ。あそこの岩陰に隠れている」

  視線で崖の端にある大岩を指す。合流したのであろう、ロディとルークに守られるようにユリアが居た。三人は魔人を警戒しながら儂の背後へ廻る。

「・・・お、おじいちゃん?そ、そのごめんなさい・・・」
「・・・はぁ」

  まったくこの孫娘は・・・。ヤンチャにも程がある。

「言いたいことは山ほどあるが、それはここを切り抜けてからだ。今は儂の後ろにいろ。ロディ!ルーク!ユリアを頼むぞ。」
「「は、はっ!!」」
 
  帰ったらたっぷりと説教だが、反面褒めたい気持ちもある。
  フリオニールの持つ属性剣をやったのがユリアだと言うのなら、まだ何も解っていない『付与の加護』を自分なりに考え自分なりに工夫をし、水の属性剣をフリオニールの剣に付与させた。

  よくやったと思いきり褒めてやりたいが、それも終わってからだ!

「ユリア!まだ魔力に余裕はあるか?」
「えっ?!う、うん。フリオおじさんの剣に『付与魔法』かけたのに大分使っちゃったけど、多分まだ半分くらいは・・・」
「上出来だ」

  一度体感しているから分かるが、ユリアの魔力であれば半分でも十分な量がある。これなら──

  これで2手目の不安は解消できた。
  3手目から最後の手までの道筋も見えた。

  これならきっと上手くいく。

「さぁて、駒は揃った。反撃といこうか──
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