盾の騎士は魔法に憧れる

めぐ

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火の竜の王との邂逅

第二回対策会議2

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「・・・ほ、本当に竜の居場所も封印の場合も知らないのか?」

  あれだけ自慢気に語っていたというのに、善神の借り物の叡智でも分からないと言うのか?

『・・・何か無礼なことを言ったか?』

  おっと。心の声を読めるんだったな。

『・・・まあよい。知らぬものは知らぬが、正確には分からなくなったと言ったほうが正しいかの』

「・・・分からなく、なった?」

  どういうことだ?確かに火竜の峰以外に竜の名前が付いた土地は知る限りはない。儂が知らないだけで存在はしているのかもしれないし、名前は人間が付けたものだろうから単純に竜という名が付いていないだけかもしれない。

『……うむ。先程話した神々の戦いがあったのがどれほど昔のことだと思う。あまり刻の感覚は分からぬが何万年もの刻が経っておるだろう。
 火山の怒りによって森や河は塗り潰され、無慈悲なる大海によって文明は洗い流され、大地の胎動によって人の国は海へと沈み海底から現れた陸地に新たな国が生まれ。それもまた嘆きの嵐に呑み込まれ。
 そもそも他の竜との交流などはないしの、封印の地も地形が変わりどこにあるかなど分からぬのだ』

  神々の戦いからそれほどの時間が過ぎ、分からなくなるほどに地形が変わってしまっているのか。

  それでは分からなくなっていても仕方がない。

  何か各地に伝説や伝承などで伝わっていないものか。

「フリオニールは何か知らないか?」

  城内には王立魔道院の他に、様々な情報を扱う王立情報調査局、通称『王調』がある。国内の情報だけでなく近隣諸国の事や裏の事情などにも精通しているらしい。
 
  そこにそういった情報はないだろうか。

「そうだな。私が知る限りではそういった情報はないが、確認してみるとしよう」

  あとそういったことを知っていそうなのは──
 
「グストフ。冒険者ギルドで竜の棲息地や目撃したなどの情報はないのか?」

  餅は餅屋。魔物は冒険者。各地の魔物のことなら冒険者が一番詳しい。竜のことを知っている冒険者がいるかもしれない。

「う~む。ここのところ竜の素材や魔石がギルドに持ち込まれたって話は聞かないが、過去に持ち込んだ冒険者がいるにはいる。その冒険者が今この国にいるとは限らんからな。調べてはみるが時間はかかるかもしれん」

  竜を倒せるとなるとそれなりに実力のある冒険者だ。そういった冒険者はあまり同じ場所に留まらず各地を転々としていることが多いし、最悪の場合既に命を落としている可能性もある。

  確認には時間がかかるだろう。

  もしかしたらヨルニール先生やギリアム辺りが知っているかもしれん。あとで訪ねてみるとしよう。

「しかし、こうなると八方塞がりだな。せめて何かひとつくらい手懸かりがあればいいんだが・・・」

『・・・ううむ。水竜の所在だけでも分かればの』
「ん?イグナーツ、どういうことだ?」

  水竜の王が何かを知っているのだろうか。

『・・・うむ。あやつは我ら竜の中でも特に魔法や知識といったものに五月蠅いやつでな。全てに秀でた我よりも、多少そういったとに詳しいだろうからの』

  自慢を織り込んでくるところがイグナーツらしいが、水竜の王が知っている可能性が高いのであれば、闇雲に全てを探すよりは効率的だろうか。

「・・・そうですね。水竜王が知っている可能性が高いのであれば、まずはその捜索に力を入れるのが無駄がないでしょう」

 「そうだな。水竜であれば必ず水に関わる地にいるだろう。他の竜と比べ捜索もしやすいだろう。」

  マリアもフリオニールと同意見のようだ。水竜が棲息出来そうな水のある場所も限られるだろうし、調べればすぐに分かるだろう。

「イグナーツ。何か水竜王を探す手掛かりとかはないのか?」
『・・・うむ。手掛かりか。・・・神の名付けた名くらいしか知らぬの』

  水竜王の名前。それが分かれば土地名や伝承などに記されているかもしれない。
 
「何と言うんだ?」
『・・・水竜の王の名は、確か『ティアマト』であるな』

「ふえぇっ?!!!」

  何に驚いたのか、またルーテが大きな音を立てて後ろに倒れた──



 #ルーテ


  ふえぇぇ・・・。び、びっくりしたなぁぁ・・・。

  会議が始まっても私は原稿を見られてしまった恥ずかしさと目の前にフェンス様がいらっしゃる恥ずかしさで話なんか全然聴こえてこず、チラチラとフェンス様のご尊顔を窺っていたら急に立ち上がれたものだから。

  変な声を上げて後ろに倒れてしまった。

  しかも・・・、しかも!倒れた私を気遣ってフェンス様が抱き起こしてくれるなんとぅぇぇっ!!

  本当は倒れたときにぶつけたお尻が痛かったけど、恥ずかし過ぎてすぐに離れてしまったぁぁぁ。モッタイない・・・。

  マリア様の視線がとても恐ろしかったけど、違うんです!

  確かに一番敬愛しているのはフェンス様ですが、奪おうだとか、寵愛を頂こうなどとは恐れ多くも思ってはいないのです!

  私は四英雄の皆様を尊敬し、そして、愛しているのですっ!!


  はぁ・・・でもモッタイない。


  そのあとはまだ恥ずかしさと心臓の鼓動が治まらなかったけど、またびっくりして倒れるのも恥ずかしいから少しは話を聴こうと思って耳を済ましていた。

  魔人とか魔神?とか、あと竜とか封印の話をしているらしい。

  ただの魔法使いの私には全く関係のない話ばかりで、改めてここに呼ばれる必要があったのかと疑問に思うばかり。

  でも、竜といえば私の生まれ育った街に竜人族の女性がひとり暮らしていたなぁ。

  街の片隅で、何に使うのかまったく分からない変なものや何が書いてあるのか全然分からない古い本を並べてお店をやっていた。

  買っている人を見たことはないけど。

  私がまだ小さい頃、興味本意で覗いていたところ声をかけられ、店に置いてあるものを見せてもらったり、色々な話を聞かせてもらったりした。

  その話はどれも聞いたことのない話ばかりで、彼女の語る言葉が宙を舞いキラキラと輝いてみえたほどだった。

  フェンス様たち四英雄の冒険譚を初めて知ったのも彼女の話からだった。彼女はまるで側で見ていたかのようにその活躍をその苦悩を語り、私はすぐに心を奪われてしまった。

  四英雄に憧れた私は魔法にも詳しいという彼女から魔法のことを教わった。私はまだ加護の儀式を受ける前でその時は何の加護になるか分からなかったはずなのに、彼女は水属性の魔法をよく教えてくれた。

  成人し加護の儀式を終えた私は、街を出て魔法ギルドに入った。

  彼女から教わった水属性魔法の知識が、授かった『水の加護』と噛み合いその他の候補より実力を認められたからだ。

  その時は彼女への感謝の気持ちのほうが大きくて不思議には思いつつもあまり気にしてなかったけど、今になって予知したの?と思ってしまう。

  あのとき以来会ってないけどまだあの街に居るのかな?

  彼女の名前はそう──


『・・・水竜の王の名は、確か『ティアマト』であるな』

「ふえぇっ?!!!」

  そして私はまた後ろに倒れた──
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