盾の騎士は魔法に憧れる

めぐ

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火の竜の王との邂逅

第二回対策会議3

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 #フェンス


 また派手な音を立てて倒れたルーテの話には正直驚いた。

  彼女の故郷である街に『ティアマト』という名の竜人族が居るというのだ。それが水竜王『ティアマト』だという確証はないが、同じ名前の竜人族であることに何かしらの理由はあるだろう。
 ルーテに水属性の魔法を教えたのもその人であるらしい。ルーテの魔法の実力を考えると、その人物の能力も非常に高いだろうと思われる。水属性だという点も気になるところだ。
 どうせ何も分かっていないのだ。もし何も関係がなかったとしても会う価値はあるだろう。

「その方はまだそちらにいらっしゃるのでしょうか?」

  マリアがそう尋ねるとルーテは肩をビクッと震わせると勢いよく立ちあがり姿勢を正した。

「ひぃっ?!ぅお、おおお、お、王都で働き始めてからは、そのっ、かかか、帰っていませんので、ま、まだ居るのかは分かりません。・・・も、申し訳ありませんっ!!!」

  儂が助け起こした件で自分もマリマに怒られるとでも思っているのだろうか、腰を直角に曲げ頭を下げると急に誤りだした。

「・・・フフ」

  そんなルーテを見たマリマは小さく微笑むと彼女の前に歩み寄り優しく肩に手を置いた。

  ルーテはまたビクッと震える。

「責めてはいませんよ、顔をお上げなさい。今の現状で、貴女の情報はかなり有用です。是非詳しく教えて頂けますか?」

「・・・ふわぁぁ。マ、マリマ様・・・なんてお優しい・・・」

  マリマも努めて優しく語りかけたのだろうが、顔を上げたルーテの表情はまるで聖母でも崇めるかのようだ。

  儂やフリオニールにも変な話し方をするしな、変わった娘なのだろうか。

  いや!!きっとそれが作家の才能へと通じているのだろう。是非その感性を更に磨いて頂きたい!


  落ち着きを取り戻したルーテは椅子に座り直すとゆっくりと話し始めた。

  ルーテの故郷は王都から西へ馬車で2日程の距離にあるロレーヌ王国との国境に程近い宿場街だという。

  竜人族の『ティアマト』は、その街で雑貨商を営んでいるらしい。

  不思議な物への知識や色々な物語などにも詳しく、何と儂らの旅のこともこと細かく話し聞かせてくれたそうだ。

  国王であるフリオニールや聖杖教会枢機卿のマリマ、マニア垂涎の天才猫魔法使いミリアーナならまだ分かるが、何故ほぼ隠居暮らしの儂のことまで知っているのかは謎だ。

  面識はないはず・・・だよな?

  旅の途中で知り合ったり係わった人も勿論何人もいるが、その中に竜人族はいなかったはずだ。

  まぁ会ってみれば分かることだろう。

「その者には是非にとも会うべきであろうな。早速使者を送り所在の確認と合わせて出立の準備も始めねばな」

  パンッと手を打ったフリオニールがそう話をまとめる。

「ああ、そうだな。合わせて王調と冒険者ギルドには念のため水竜を含めた竜の捜索と、封印の地の探索をお願いしたい」

  竜人族の『ティアマト』がまったくの無関係の場合もある。
  時間を無駄にしないためにも同時に動いておくべきだろう。

「うむ。そう指示を出しておこう」
「ああ。ギルドの記録の確認と冒険者達の聴取を行っておこう。他国のギルドへも連絡したほうがいいな」

  そう言うとグストフは早く動いたほうがいいだろうと出ていった。前回の様にフリオニールが居ても固くならず普通に話しはしていたが、いつもはギルドマスター部屋の椅子にふんぞり返って座っている奴がずっと背筋を伸ばして座っていたからな。流石に疲れたんだろう。

  ここのところバタバタしていて、グストフと呑みにも行けていないな。色々と面倒をかけているから時間が出来たら誘うとしよう。

「ではあとは誰が行くかだが、顔見知りであるルーテと代表としてフェンスは行くべきであろうな」

  竜人族の『ティアマト』に会いに行く面子をフリオニールが決めていく。ルーテは必須だが儂が代表?確かにフリオニールはまた城を留守にするわけにはいかないだろうし、マリマも色々と忙しいだろうからな。ミリアーナは・・・まぁ消去法であろう。

「・・・私も行く」

  などと思っていたらまさかのミリアーナが立候補する。あの面倒臭がりのミリアーナがどういった風の吹き回しだろうか。

「・・・私もたまには冒険したい。フェンスとフリオニールだけズルイ」

  なるほど・・・、そういうことか。

  この前の魔人の拾得物の調査はもう大丈夫なのかと確認したところ、ほぼ終わっており明日には報告出来るとのことだった。

  それに、火竜の峰での話を聞いて旅をしていたころを思い出しでもしたのだろう。それほど楽しそうにしていた記憶はないが、彼女なりに思うところはあるのだろう。

  まぁ今回は火竜の峰でのようなことはないと思うがな。

「う、うむ。そうだな。魔法に詳しい者だというし、魔法に精通しているミリアーナが適任だろう」

「道中の護衛要員で守護隊から二人ほど連れていくぞ?」

  街道沿いの馬車旅のみで危険も少ないだろうが、念のため守護隊から誰が連れて行くとしよう。飲み比べは禁止だと言っておかねばな。

「う、うむ。ご、護衛は二人だけで大丈夫か?火竜の峰でもあのようなことになったのだ。多いに越したことはないだろう?」

  それは確かにそうだ。

  火竜の峰へ同行した面子も決して悪かったわけではないが、フリオニール達の増援がなければ今ここにはいれなかっただろう。

  もう何人か都合したほうが良いだろうか。ミリアーナとルーテがいるから魔法に関しては問題ない。守護隊からはカインかゴードン、それと1・2番隊の副隊長の誰かになるだろう。

  儂も入れて通常戦力としては十分かとは思うがもうひとりくらい前衛がいたほうが良いだろうか。

「フェンス。もうひとりくらい前衛がいたほうが良いだろう?それなら、ほら!ここに──」

  儂の考えを読んだかのようにフリオニールが前衛の追加を推してくるが、それは──

「おほんっ!!」

  フリオニールの言葉を遮るようにマリマが大きく咳払いをする。

「陛下?陛下が戻られたことは既にもうジェイガン大臣に使いを出してお知らせしてあります。会議が終わり次第戻られるようにと迎えが既に来られてますので、こちらのことはご心配なく。1日以上にされたのですから御公務がさぞ溜まっておいででしょう?」

  そう言って優しく微笑むがそこに込められた感情はきっと違うのだろう。フリオニールは冷や汗を流し何も言えなくなっていた。


  さて、ひとまず今後の方針はこれで良いだろう。

  準備もあるだろうし、出発は早くても明後日。

  ユリアとも話さなければならないし、ヨルニール先生のところに顔を出して、あと守護隊の詰所にも行かないとな。

  色々とやることは多いが、とりあえず屋敷に戻って食事にでもするとしようか──
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