盾の騎士は魔法に憧れる

めぐ

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火の竜の王との邂逅

出発と特訓

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 翌朝、ルーテの故郷の街に向かう面々が西門に集合する。

  儂とミリアーナ、ルーテに守護隊のカインとドーガの計5人である。

  聞いたところによるとフリオニールはジェイガン大臣の手によって城の自室に軟禁されているらしい。代わりに火竜の峰にも来ていた近衛騎士のディーンとエダが見送りに来ていた。王立魔道院の者らしき魔法使いも二人いる。

  ユリアは今朝から特訓を始めさせているためここには来ていない。そもそも今回は長旅でも危険のある旅でもないので見送りは大げさだろう。

「さて、皆揃ったな。途中夜営の準備もあるだろうし早めに出発しようか」

  宿場街までは馬車で約二日程かかる。街道の途中に村などもないので必然的に夜営をする必要がある。
 もうすっかり夏も近付き気温も高くなっているが夜は流石にまだ冷え込む。夜の番で使うだろう毛布なども背嚢にくくりつけてある。守護隊の二人も勿論しっかりと装備している。

「ミリアーナとルーテは荷物はそれだけなのか?」

  二人の魔法使いは毛布はおろかほとんど荷物を持っていない。

  ルーテはまだしも、ミリアーナは旅の経験があるだろうから必要になるものは分かるだろうに大丈夫なのか。

「・・・ん。必要ないから」
「ぇえっ?!わ、わわ、私はミリアーナ様に、必要ないと言われたので・・・」

  必要ない?よく分からんが収納の魔道具などを利用しているのだろうか。

「それなら構わんが。それで、ミリアーナ。今回馬車はどうなっているんだ?」

  前回、火竜の峰への行き帰りの馬車はフリオニールが用意してくれていたが、今回もそうだったはずだ。

  まだ着いていないのだろうか。

「・・・馬車も必要ないから用意してない」

  ん?馬車も必要ない?

  どういうことだ?歩いてでも行くつもりか?

  ミリアーナは儂の顔を見てニヤリと口角を吊り上げたかと思うと、後ろに控えていた魔道院の魔法使いに指を鳴らし合図を送った。

  すると二人の魔法使いはおもむろに両手で抱えられるくらいの大きさの黒塗りの箱を運んできて地面に置く。

  何だ?何をするつもりだ?

  ミリアーナがその箱の蓋を開けると中には何かしらの術式を刻まれた二重円が淡い光を浮かべていた。

「ミリアーナ。何だそれは?」
「・・・これで移動する」

  はぁ?

「・・・これはこないだ魔人が来たときに見つけた魔道具。分析したところ風属性上位の空間属性と、地属性上位の重属性の魔法文字が刻まれていて、亜空間への接続が可能になるの」

「・・・はぁ」

  アクウカン?
 
  更に分からなくなったがその魔道具でどうする気だ?

  ミリアーナはどんどんと得意気な表情を増し、普段では考えられないほど流暢に説明を続ける。

「・・・フフン。で、その術式に六桁の数字が一緒に刻まれてて最初はそれが何か解らなかったんだけど、実験によって座標を意味するものだってことが解った」

「ザ、ザヒョウ?」

  カインとドーガもポカンと口を開けたままだ。

「・・・それで、その魔道具でどうやって移動するというんだ?」
「・・・フェンスの無駄知識でも分からないみたいね。私の勝ち」

  訳も分からないまま勝利宣言をされる。

「・・・まぁとりあえず近くに集まって」

  そう言うとミリアーナは儂らを箱を囲むように並ばせる。

「・・・座標は場所を数値化したもので、最初の三桁が南北。後の三桁が東西の位地を表してるのが解った」

  ミリアーナは話しつつ術式に魔力を込める。二重円が先程よりも強く光を放つ。

「・・・それで数値を地図と照らし合わせて少しずつ変えながら実験して、物だけでなく生物も問題ないことが昨日の実験で解った」

  箱から溢れ出た光は儂らを優しく包む。

「・・・簡単に言うと転移魔法を発動させる魔道具ね。これで目的地まであっという間」

  !?な、なんだって!?
  それは凄い画期的な魔道具ではないか!!

  二日の馬車旅があっという間に着けるなら、余計な時間を短縮出来る。これが量産されれば色々なものが進歩するだろう。

  まぁ、目的地に着くまでの会話や夜営の時間も馬車旅の醍醐味なんだがな。

  ん?待て・・・。

  あっという間に着くということは馬車旅をしないということ。
  つまりは馬車内での交流や夜営もないということ。

  ああっ!今度こそルーテ先生と色々と話やサインをお願いしようと思っていたのに、それでは出来ないではないか!!

「・・・じゃあ行くよ?」
「ミリアーナ!ち、ちょっとま──

  瞬間、視界は白い光に包まれた──



 ◇◆◇◆



 #ユリア


  おじいちゃんはもう出発したころだろうか?

  あたしは今回は見送りに行かない。

  何故ならたったいまから特訓を始めるからだ。

  昨日、おじいちゃんに叱られた。

  悪いのはあたしだから仕方ないんだけど、火竜の山で何も出来なかった自分を思い出してすごい悔しくて悲しい気持ちになった。

  でも、あたしがどうにか皆の力になりたいと考えて考えて付与魔法を使ったことを、おじいちゃんはちゃんと褒めてもくれた。

  頑張ったことを認めてくれたのはすごい嬉しかった。けど、色んな気持ちがゴチャゴチャになって涙が止まらなくなった。

  おじいちゃんはそんなあたしの目をじっと見つめて、『強くなりたいか?』と聞いた。

  あたしは迷うことなく頷いた。



  そして今あたしはここにいる。

  朝、おじいちゃんと一緒に食事をしてそのままそこで別れて、おじいちゃんの職場でもある守護隊の人達のいる詰所に来ている。
 ここで、あたしの特訓をしてくれる人と会うことになっている。頑張る!・・・つもりはあるけれど、恐い人じゃないといいなぁ。

  あたしの横にいるハリルも緊張しているみたい。

  しばらく待っていると、扉が開き誰かが出てきた。

「ユ、ユリアと申しますっ!特訓よろしくお願いしますっ!」

  あたしは大きく声を張り上げ、勢いよく頭を下げた。きっとこういったことは初めが肝心だ。本気でやる気を見せていかないと。
 扉から出てきた足音はあたしの前で止まる。どうやら二人いるみたいだ。

「良い心構えだね」
「・・・まぁ総隊長の頼みなら仕方ない」

  ん?この声どこかで・・・。

  ゆっくり顔を上げるとそこには、つい最近会った二人の男性がいた。

「守護隊2番隊隊長のアベルです。こちらこそ宜しくお願いします」
「・・・ジョルジュだ。やる以上は甘やかすつもりはないからな」


 「~っ!は、はいっ!!よろしくお願いしますっ!!」
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