盾の騎士は魔法に憧れる

めぐ

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加護の儀式と少女の願い

第三回対策会議5

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「フリオニール。お手柄だ」
「お手柄?・・・私は何かしたか?」

 今から大量の鉱石を集めるのは確かに時間がかかり過ぎる。だが、鉱石は既にもう充分に

「ふっふっふっ。造れるんだよ。お前が言う巨大な魔砲筒をな」
「・・・いや。自分で言っておいてなんだが、二人の言う通り現実的ではないだろう。良い案だと思ったんだが、別の方法を考えたほうが良い」

 フリオニールはもう諦めてしまったようだが、儂は絶対に造れると確信をしている。あとは場所の問題だけだ。

「・・・フェンス。適当言ってる?」
「相変わらず失礼な奴だな。適当ではない。ミリアーナも知ってるはずだぞ?つい先日の事だからな」
「・・・先日?」

 あの大量の鉱石は既にカルタスによって回収されているだろう。かなりひび割れて崩れてしまってはいるが、どうせ溶かして大筒に造り変えるのだから問題はない。
 いずれ調査のために王立魔道院へと運ばれるだろうが、量が量だけに重要そうな部分以外は武具などに再利用されてしまうはず。それを全て使えれば特大の大筒は間違いなく造れる。

「ああ。少し加工に手間がかかるが、鉄や鋼よりも丈夫で軽く、高く飛ばすための高威力の魔法に対しても抵抗力が高い理想的な鉱石がな。・・・まぁ少し使うのに抵抗があるが・・・」
「・・・それって、もしかしてあのゴーレム?」
「な──っ?!」

 そう。鉱石とはあの巨大な魔道ゴーレムに使われていた大量の──あれを使うのだ。

「ふ、ははっ。なるほど・・・、ゴーレムか。ふっ。まさかルードヴィングもそんなことに再利用されるとは思わんだろうな」

 あのゴーレムに手を焼いたのは事実だが、こうしてこちらの目的のために使えることを思うと、ルードヴィングに感謝の言葉のひとつでも贈りたくなるな。

「ミスリルはモンテフェルトが回収しているな?ディーン。すぐ城に戻りモンテフェルトに遣いを出すようウェンデルに伝えてくれ。それと運搬に人手も必要になるだろうから、ジェイガンに騎士団から人員を回すようにと頼んでおいてくれ」
「は、はっ!」

 入口の扉横で待機していたフリオニールの側付きの兄妹騎士の兄ディーンは、返事と同時に飛び出していった。

「・・・材料の鉱石はどうにかなったようですが、そもそも本当にそんな大掛かりなものを造れるのですか?出来上がったものを真上に向け立てるだけでも一苦労しそうな気がしますが・・・」
「ああ、問題ない。それについても考えがある」

 マリアがもっともな懸念を口にする。確かにいくらミスリルが鉄より軽いとはいえ、人の手で地面に横たわった特大の大筒を垂直に立ち上げるなど不可能だろう。
 間違って倒しでもしたらどんな被害が出るか分かったものじゃない。ではどうするかというと──

「フリオニール。魔砲筒を造る場所を先程言っていた城の一番高い塔にしたいのだが、構わんか?」
「塔・・・ああ、尖塔のことか。別にそれぐらいは構わないが、そんな場所でどうやって造るつもりだ?」
「まぁ任せておけ。ただ、少しばかり壁や床に穴を開けてしまうかもしれんが大丈夫か?」
「あ、穴?!本当に何をするつもりなんだ・・・。ま、まぁ少しだと言うのなら構わんだろう。くれぐれもやり過ぎてウェンデルを怒らせんようにな」
「ああ。気を付ける」

 これで、場所も確保出来た。まぁ少しとは言ったが、もう少し・・・いや、大分がよくなってしまうだろうが、世界の平和の為だ。塔の一本や二本くらい安いものだろう。

「ついでにもうひとつ、人の手配も頼みたいんだが・・・」
「・・・もう、何でも言ってくれ」
「すまんな。では、まず腕の良い大工を十人程頼む。それと火属性魔法が得意な魔法使い。これも十人もいれば大丈夫だろう」

 ミスリルの加工には、火属性魔法が必要不可欠となる。ミスリルはミリアーナの魔法にも耐えたあの魔道ゴーレムの丈夫さそのままに、非常に魔法に対する抵抗力が高い鉱石。そのため通常の鍛冶に使う炉では、火力が足らず溶かすことさえ出来ない。加工するためには高火力の火属性魔法を浴びせ続け溶かすしかないのだ。
 今回はかなり大量のミスリルを加工するため、最低でもそのくらいの人数は必要になるだろう。

 大工はまぁ・・・、穴を開けるからな。

「分かった。手配しておこう。肝心の鍛冶士は良いのか?」
「ああ。そこは俺のほうで当てがある。なんでもかんでも任せるわけにはいかんしな」
「今更な気がするがな・・・」

 さて、これで風竜王を呼び寄せる算段もついた。鉱石が王都に届くのには早くても三日はかかるだろう。それからすぐに着手したとして、特大の魔砲筒の完成は大体二週間後くらいだろうか。
 イグナーツと結界に関してもティアマトが言うには、三日から五日はかかるという話だから、暫くはのんびり出来るだろうか。

 しかし、ここ最近は王都を留守にしていることが多い。守護隊のことも隊員の皆に任せっきりになってしまっている。聖大結界のお陰で強大な魔物に襲われる心配は無くなったが、ゴブリンやコボルトなどの小さな魔物による被害や人間同士の諍いは起きる。まるっきり暇だというわけでもないし、小さなことが大きな事件に繋がることもある。守護隊の任務は決して疎かにしてはならん。

 色々と複雑な問題も増えてきたため、そろそろヨルニール先生の意見も聞いておきたいところだ。もしかしたらギリアムも戻っているかもしれんしな。いつもは酒を手土産にしているが、宿場街で買った珈琲コーヒーでも持っていってみるか。酒ではないから治癒士のメラリアさんにも怒られんだろうし、彼女もきっと飲めるだろう。まぁ、ヨルニール先生には文句を言われそうだがな。

 鍛冶士の手配もしておかなければいけないが、それは正直余り手間ではない。フリオニールに当てがあると言ったのはミスリル加工が得意な鍛冶士を知っているから。何を隠そう儂の愛剣もミスリル製なのだが、その製作から手入れまでを任せている鍛冶士──土竜族のダンダルその人である。
 普段は口が悪く酒癖の悪い男だが自らの作品にはどの鍛冶士より強い矜恃を持ち、同族の土竜族だけでなく様々な種族の弟子を持つ優れた師でもある。奴ならきっと喜んで力を貸してくれるだろう。

 のんびり出来るかと思ったが、なんだかんだやることは多そうで気が重くなる・・・。アベルとジョルジュに任せっきりになっているし、たまにはユリアに稽古でもつけてやろうとも思ったんだが。
 ああ、そういえば・・・、ギルドでユリアの冒険者登録もすることになっていたか・・・。

 ああ・・・

 屋敷の庭でのんびり珈琲コーヒーでも飲みながら、愛読書『元村人の勇者が村を救うついでに世界を救う』をじっくり読みたいものだ・・・。
 ルーテ先生。連れ回しておいて悪いが、早いとこ続きを頼むよ──
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