召喚されたらしい俺は何故か姫扱いされている【異世界BL】

ネオン

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本編

精霊姫様の専属騎士sideポプラ/ケイト②

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 ――やはり私はどうしても姫様の専属になりたい。

 完全に心を鷲掴みにされてしまった私は、気が付いた時には跪いて姫様の手の甲に口付けをして専属騎士の誓いを立てていた。
 団長には怒られてしまったが、念願の専属騎士になれたことを思えば説教くらいいくらでも受ける。
 副団長である私が姫様付きになるのならば、新たに副団長を選出しなければならないのだから、団長の怒りももっともだ。
 団長には苦労を掛けしてしまうが、早速王宮の姫様が生活なさっている部屋の横に引っ越した。

 私が専属を急いだ理由は実はもう一つある。
 それは昨日からこの国を訪れている隣国の王女がルシアン殿下に惚れ込んでおり、精霊姫様であるケイト様を敵視しているという噂を耳にしたからだ。
 そのうえ王女の従者がコソコソ何かを嗅ぎまわっているらしく、ケイト様の身に危険が迫っているかもしれないと思えば、一刻も早く専属になりお側で護衛をしたいと思ったのだ。
 ケイト様の部屋の隣室に私の部屋を用意してもらい、夜間であっても何か異変があれば直ぐに向かえるようにしている。
 ケイト様の守護精霊様のセイン様が結界を張ってくださっているから、心配はいらないということだが、複数人の刺客に襲われるようなこともあるかもしれないし、何より私がケイト様をお護りしたいのだ。
 セイン様と色々相談させていただき、もしケイト様の身に危険が迫った場合、すぐに私にも分かるように守護精霊様の契約を結んでいただいた。
 これでケイト様に張っている結界にケイト様の意思と関係なく接触するものが現れた場合、直ぐに分かるようになった。
 何もないに越したことはないが、隣国の王女は欲しいと思ったものはどんなものでも、手段を選ばず必ず手に入れると聞いている。
 今回の訪問もおそらくルシアン殿下との婚約を成立させるために来訪したに違いない。
 そうなると、精霊姫様であるケイト様を邪魔だと思うのは必然だろう。
 王女は昨日来訪されてからずっと、ルシアン殿下にベッタリだと聞く。
 用心するに越したことはない。

◇◇◇

 俺の専属騎士になったポプラさんは二十五歳で、小さい頃から絵本で見た精霊姫に憧れていて、騎士になると決めた時から精霊姫の専属騎士を夢見ていたのだそう。
 自分が騎士のうちに現れたら良いなと思っていたら、ルシアンが召喚したと聞いてテンションが上がりまくって、興奮を冷ますために運動場を走り回ったらしい。
 見た目は細身の長身のイケメンで、切れ長な目と薄く引き締まった唇からクール系の人だと思っていたから、それを聞いて凄く驚いた。
 水色っぽい長くてサラサラの銀髪を一つに括っていて、騎士団の制服を格好良く着こなしているポプラさんは、冷静沈着といった印象だった。
 それが話してみると、凄く俺のこと好き好きオーラというか、見えない尻尾がブンブン振られていそうな勢いで吃驚した。

 これがいわゆるギャップ萌え……。

 専属騎士への憧れがあったのは事実だけど、俺がこっちの世界に来てから塔に籠ったり、厨房に出入りしたりしているのを噂で聞いて、凄く興味を持ったんだって。
 それで今日突然ロイさんを伴った俺が訓練所に来て、一緒に鍛錬すると聞いて、この機会を逃すものかと思ったらしい。
 話し掛けるタイミングを計るため、俺がポワソン少年と一緒にタル引いてるのを実は見ていたらしい。
 それで精霊姫という立場にあるにも拘らず、飾らない感じを気に入ってくれたらしく、絶対に専属騎士になろうと思ったんだって。

 俺からしたら、こんな俺のために副団長という役職を降りてまでなるものなのか疑問だし、精霊姫への理想が高すぎて実物の俺の口の悪さや態度の雑さにガッカリするんじゃないかと心配になった。

 ポプラさんは話してみればクールビューティ―な見た目と違って話しやすいし、鍛練に行くときに俺の予定がなければ一緒に連れて行ってくれると約束してくれた。
 めっちゃいい人!
 俺は体を動かすことが好きだし、その申し出はすごく嬉しかった。
 じゃなくても昨日から隣国の王女様が来ていて、ちょっぴり鬱々していたから気分転換になってちょうどいい。

「これからよろしくお願いします」

「もったいなきお言葉。このポプラ、命に代えましても姫様のことをお護り致します」

 大袈裟な言い回しをするポプラさんに、命に代えてもというところは、自分の命を優先して欲しいとお願いした。
 不服そうにはしていたけど、俺を護るために誰かが傷付いたり命を失うことになるのは絶対に嫌だから……。

 今日もルシアンは一度も食堂に顔を出さなかったし、寝る前に部屋を訪ねて来ることもなかった。

 でも、日中思いっきり体を動かしたおかげか、あまり余計なことを考えずに眠りに就くことが出来た。
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