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第三篇 ~漆黒しか映らない復讐の瞳~
45案
しおりを挟む「…ところでさー、この荷馬車のゴミみたいなのって何~?」
荷馬車内。おもむろにニコがそう口を開いた。
「ゴミではない…兵器の部品だ」
重要な物なのだが、レグの言葉を聞いても気にせずニコはべシベシとその部品を叩いている。
そんな悠長な様子を見せる彼女を見つめ苦笑するリデ。
「それは襲撃地の周辺に着いたら組み立てる大事なものなのよ」
リデはレグの説明をそう付け足す。
「あー、訓練所でずっとやってたやつかー…新しいパズルゲームかなって思ってたー」
「一応…あれは実戦に向けて早く組み立てられるようにするための練習だったんだけど…」
和やかに続けられるリデたちの会話。
それを耳にしつつ、御者を務めるヤヲは静かに手綱を叩いた。
馬は嘶き、田畑へと様変わりした風景の中を荷馬車の列は進み行く。
荷馬車に乗った反乱組織ゾォバたちは、王都の中心部から離れた南西部へと辿り着いていた。
王都エクソルティスは、王国一大きなエクソル湖―――その浮島に聳え立つ王城を中心に栄えており、中心部から離れていくほど田畑や牧草地といった風景が広がっている。
彼らが今いる地区はその王都内でも最西端に位置する場所であり、生誕祭の恩恵どころか雰囲気も乏しく、閑散とした空気が漂っていた。
そんな南西地区一角にある宿へ着いた組織一行はそこを作戦決行までの根城に決めた。
「お金は払います。だから、暫く泊めてください」
麻袋に積まれた金を見るなり店主は快く了承してくれた。
それも当然だろう。その金があれば、半生は遊んで暮らせるほどの量だった。
どうやって集めたのかヤヲはあえて聞かなかったが、慈善活動で集めたわけではないことだけは確かだと思った。
「宿は全室俺らが貸し切った! 自由に使え! ベッドが足りなかろうがとりあえず適当に寝ろよ」
メンバーにそう告げるとロドは宿のロビーにあるソファへ腰をかけ、くつろぎ始めた。
ニコはレグを連れ回しながら、ロビー内を探索している。
傍から見ればその様子はまさに親子のようにしか見えない。
「ニコ、レグ、それにヤヲも! お前らは残れ。作戦を確認しとくから」
部屋へ向かおうとしていたヤヲであったが、ロドにそう呼ばれ、渋々足を止めた。
「えー。作戦なんてまた後でいいじゃーん」
「何度も確認して頭に叩き込んどくんだよ。特にお前は忘れっぽいからな」
「あの…僕がこの面々に参加するのは…場違いな気がするのですが…?」
眼鏡を押し上げながらそう異を唱えるヤヲ。
実際のところはさっさと部屋で長旅の疲れを癒したかったのだが。
足を組み変えながらロドは口角を吊り上げて言う。
「俺の大事なところ拝んだ以上は下っ端扱いは出来ねえんでな…」
「えーなになに大事なところって~?」
「ニコ…そういうのは、聞くものではない…」
色々な意味で反論は出来ず、閉口せざるを得ないヤヲ。そんな彼らを見て純粋に尋ねようとするニコと、それを制止するレグ。
仕方なくヤヲは無言のまま、近くの椅子へと腰を掛けた。
そんな不満をあらわにしているヤヲへ、リデは隣に座るとコッソリ耳打ちした。
「…私のせいで面倒な役回りをさせて…ごめんなさい」
素直に反省し謝罪してしまう彼女に、ヤヲは思わず苦笑した。
「いや、ついていった僕が悪いだけだから…気にしないで」
「そうだ。そこについては気にする話じゃねえ。重要なのは、これからのことだ」
そう言って話を強引に戻したロドは、いつものように横柄な態度を見せながら口を開いた。
「じゃあ作戦のざっくりとした説明をする」
「ざっくりと、ですか…」
「ああ、まあまずは聞け」
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