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エーデルヴァイス夫人について
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エーデルヴァイス夫人を一言でいうならば、『冷血女』なのでしょう。
花を見ても、可愛い動物を見ても、何を見ても決して笑うことはありません。
私が夫人の屋敷に勤め始めてから十数年、そうだったのですから…。
食事がおいしいとほめてくださることもなく。
掃除がなっていないと冷たい口調で叱責するだけ。
まるで真冬の氷のような、冷たい目を向けるのです。
住み込みでお給金が良いからこそ働いていたけれど、本来ならあのように不気味な老婆と暮らそうとは思わないでしょう。
―――口が悪くなってしまいましたが、メイドのみんなが言っていましたよ。
ですが、亡き旦那様が豪商だったとかで…不自由な生活はまったくしていませんでした。
町外れの屋敷に数人もの従者を雇えるのですから、間違いないと思います。
屋敷には高そうな置物や装飾品も数多くありましたし。
中でも特に豪華だったのが、夫人が描かれた絵画です。
特別大きいわけでもなかったのですが、黄金の額縁に飾られた若い頃の夫人はとても美しくて…。
絵心のない私でも惚れ惚れしたものです。
その絵画は亡き旦那様が生前夫人へ贈られたものだそうで…ええ、一番の宝物だと仰ってました。
ただ…その絵でも夫人は笑っていないです。
だからこそ、みなが口を揃えて言うのです。
『エーデルヴァイス夫人は笑わない人なのだ』と――。
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