エーデルヴァイス夫人は笑わない

緋島礼桜

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エーデルヴァイス夫人について4

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   ◆







 夫人を冷たいなんて悪く言う奴もいるけどよ…。

 俺は夫人に感謝してるんだ。



 何せ夫人は孤児で食いぶちのなかった俺を拾って庭師なんて仕事を与えてくださったんだから。

 俺だけじゃねえ。

 俺以外に仕えている連中だって、そもそもは職を失って路頭に迷ってる奴らばかりだったんだ。

 それを住み込みで働かせてくださって…感謝してもしきれねえよ。

 なのに、口うるさいだの、冷血女だの、笑わないだの。

 うるさいのはお前らだって話だったぜ。



 貴金属を突然窓に捨てたって騒動だってそうだ。

 もういらないから捨てた、だなんてへそ曲がりなこと言ったようだが…。

 あれは病気の妹のために急ぎの金が必要だった庭師の上へわざと捨ててみせたんだよ。

 夫人は素直じゃない…っていうか、極度の恥ずかしがりやだったんだと思う。

 だからああも勘違いされたんだろうぜ。



 …だが、晩年の夫人はさすがに様子がおかしかったな。

 もう限界だからとか、これ以上は耐えられないとか…。

 主治医は健全だって言ってたらしいが、ありゃあ病気だったんじゃないか?



 最期?

 ああ…看取ったぜ。

 玄関の前で倒れててな…それはもう苦しそうな顔だった。

 どこかに行こうとしてたんじゃないかって話だったが…苦しまぎれに飛び出そうとしただけかもしれねえし。

 とにかく、見るに堪えかねなかったし…あれはもう、思い出したくもねえな。

 


 

   ◆






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