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本編
走らないタイプのイケメンかと思ってた
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「おはよう、美優。」
「……。」
「美優、誰こいつ?」
澄んだ空気、爽やかな朝。
新学期2日目、
玄関を開けたら相澤君が笑顔で立っていました。私の隣には警戒心剥き出しの伊織が猫のようにフシャーッ!と相澤君を睨み付けている。
「おはよう、相澤君…何でここにいるの?」
「勿論、美優を迎えに来たんだよ。通学路は危険がいっぱいだからね」
「何こいつ、ストーカー?警察呼ぶ?美優、危ないから家入ってな」
「いやいやいや、伊織残して家に入れる訳ないでしょ。それに相澤君は一応クラスメイトだから大丈夫」
「俺は美優の彼氏(仮)だからね。」
「はぁ?」
伊織の拳がグッと上げられたのを見て慌てて腕を掴む。っていうか、彼氏(仮)って何?
「ちょっと、伊織!やめて」
「だけど…こいつ頭おかしいよ?」
「こら、先輩に向かってそんな口きかないの。伊織も学校遅れちゃうよ、ほら、大丈夫だから行って。相澤君は…歩きながらちょっと話そ」
頭の良い伊織は家から少し離れた市立の中学に通っている。そろそろ行かないと遅刻してしまいそう。
何度も振り返りながら渋々バス停に向かう伊織に手を振って、私と相澤君は二人並んで歩きながら駅に向かう。
「ねぇ、相澤君もこの辺りに住んでるの?中学は違ったよね?」
「俺は世田区だよ。あぁ、美優と一緒の中学に通いたかったなぁ。どうしても転校できなくてね、残念。でもこれから毎日一緒だからね」
「ちょっ…ちょっと待って。世田区?学校の近くだよね。それなのになんで家の前に居たの?偶然じゃないよね?」
ここは並木区で世田区からは2駅程離れている。登校中たまたま通りかかったと言うのには無理がある。
「だから、美優を迎えに来たって行ったでしょ?」
「迎えにって、わざわざ学校から離れた家まで電車に乗って来たの?!」
「あー、ここまでは車で送ってもらった。あ、でも美優と一緒に電車で学校に行くから安心してね。」
なんだろう…会話が噛み合ってるようで、全然噛み合ってない。あまりにも平然と話す相澤君に、私の方が変な事を言ってるのかと不安になるくらいなんだけど。
「…何で私の家を知ってるの?」
恐る恐る確信に触れてみる。これを聞いてしまったら取り返しのつかない事になりそうな気がしてならないけれど…。もしかしたら、本当に偶然って事もあるかもしれないし。
「美優の事なら何でも知ってるよ」
「…。」
何でも…?何でもの範囲はどのくらいでしょうか?
ズバリ確信に迫る回答も怖いけど、曖昧な回答も十分怖い。
どうやって知ったの?とか追求をしたら朝からダメージが大きそうだなと思い、私は質問を飲み込む。
「ねぇ、手を繋いでもいい?」
「え、やだ」
「なんで?弟とは繋ぐのに?」
「弟は家族だけど相澤君はクラスメイトだから」
「普通弟と恋人繋ぎする?」
「………ん?」
「昨日してたでしょ?」
「えっ?何?!なんで知ってるの?」
「え、だって…」
「あ!待って!言わないで!やっぱりいい!キャパオーバーです」
「今度は俺とパンケーキ食べに行こうね♪」
のぉぉーっ!!!
私は無言でスタートダッシュを決めた。
「はぁ、はぁ、はぁ…」
「美優、追いかけっこも楽しいね」
はいっ!即効捕まりました!!
高校受験で鈍った身体に朝からダッシュは危険ですね…。満員電車の中、私はドアに寄りかかりながら息を切らしていた。
「相澤君足早いんだね…。相澤君みたいなタイプのイケメンって走らないのかと思ってた」
「うーん、なんか誉められてる気がしないけど、嬉しい」
うぅ…もう好きにしてください…。
ニコニコ笑う相澤君は息切れする事無く、とてもスマートに私を満員電車の人混みから守ってくれてる。うっかり壁ドンされた体勢になってるけど…。
「美優、ちっちゃいね」
「相澤君が大きすぎるんだと思う」
156cmの私に対して相澤君30cmくらい大きそう。
「胸は大きいのにね」
「最低」
ギロリと睨み付けるけど、相澤君は頬を染めて
「ヤバイ、上目遣い…超絶可愛い。動画撮りたい」
とブツブツ言っていた。
なんなの一体…。
「……。」
「美優、誰こいつ?」
澄んだ空気、爽やかな朝。
新学期2日目、
玄関を開けたら相澤君が笑顔で立っていました。私の隣には警戒心剥き出しの伊織が猫のようにフシャーッ!と相澤君を睨み付けている。
「おはよう、相澤君…何でここにいるの?」
「勿論、美優を迎えに来たんだよ。通学路は危険がいっぱいだからね」
「何こいつ、ストーカー?警察呼ぶ?美優、危ないから家入ってな」
「いやいやいや、伊織残して家に入れる訳ないでしょ。それに相澤君は一応クラスメイトだから大丈夫」
「俺は美優の彼氏(仮)だからね。」
「はぁ?」
伊織の拳がグッと上げられたのを見て慌てて腕を掴む。っていうか、彼氏(仮)って何?
「ちょっと、伊織!やめて」
「だけど…こいつ頭おかしいよ?」
「こら、先輩に向かってそんな口きかないの。伊織も学校遅れちゃうよ、ほら、大丈夫だから行って。相澤君は…歩きながらちょっと話そ」
頭の良い伊織は家から少し離れた市立の中学に通っている。そろそろ行かないと遅刻してしまいそう。
何度も振り返りながら渋々バス停に向かう伊織に手を振って、私と相澤君は二人並んで歩きながら駅に向かう。
「ねぇ、相澤君もこの辺りに住んでるの?中学は違ったよね?」
「俺は世田区だよ。あぁ、美優と一緒の中学に通いたかったなぁ。どうしても転校できなくてね、残念。でもこれから毎日一緒だからね」
「ちょっ…ちょっと待って。世田区?学校の近くだよね。それなのになんで家の前に居たの?偶然じゃないよね?」
ここは並木区で世田区からは2駅程離れている。登校中たまたま通りかかったと言うのには無理がある。
「だから、美優を迎えに来たって行ったでしょ?」
「迎えにって、わざわざ学校から離れた家まで電車に乗って来たの?!」
「あー、ここまでは車で送ってもらった。あ、でも美優と一緒に電車で学校に行くから安心してね。」
なんだろう…会話が噛み合ってるようで、全然噛み合ってない。あまりにも平然と話す相澤君に、私の方が変な事を言ってるのかと不安になるくらいなんだけど。
「…何で私の家を知ってるの?」
恐る恐る確信に触れてみる。これを聞いてしまったら取り返しのつかない事になりそうな気がしてならないけれど…。もしかしたら、本当に偶然って事もあるかもしれないし。
「美優の事なら何でも知ってるよ」
「…。」
何でも…?何でもの範囲はどのくらいでしょうか?
ズバリ確信に迫る回答も怖いけど、曖昧な回答も十分怖い。
どうやって知ったの?とか追求をしたら朝からダメージが大きそうだなと思い、私は質問を飲み込む。
「ねぇ、手を繋いでもいい?」
「え、やだ」
「なんで?弟とは繋ぐのに?」
「弟は家族だけど相澤君はクラスメイトだから」
「普通弟と恋人繋ぎする?」
「………ん?」
「昨日してたでしょ?」
「えっ?何?!なんで知ってるの?」
「え、だって…」
「あ!待って!言わないで!やっぱりいい!キャパオーバーです」
「今度は俺とパンケーキ食べに行こうね♪」
のぉぉーっ!!!
私は無言でスタートダッシュを決めた。
「はぁ、はぁ、はぁ…」
「美優、追いかけっこも楽しいね」
はいっ!即効捕まりました!!
高校受験で鈍った身体に朝からダッシュは危険ですね…。満員電車の中、私はドアに寄りかかりながら息を切らしていた。
「相澤君足早いんだね…。相澤君みたいなタイプのイケメンって走らないのかと思ってた」
「うーん、なんか誉められてる気がしないけど、嬉しい」
うぅ…もう好きにしてください…。
ニコニコ笑う相澤君は息切れする事無く、とてもスマートに私を満員電車の人混みから守ってくれてる。うっかり壁ドンされた体勢になってるけど…。
「美優、ちっちゃいね」
「相澤君が大きすぎるんだと思う」
156cmの私に対して相澤君30cmくらい大きそう。
「胸は大きいのにね」
「最低」
ギロリと睨み付けるけど、相澤君は頬を染めて
「ヤバイ、上目遣い…超絶可愛い。動画撮りたい」
とブツブツ言っていた。
なんなの一体…。
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