【本編完結済】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!

O.T.I

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第七幕 転生歌姫と王都大祭

第七幕 30 『武神杯〜本戦 風神』

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 シフィルさんの攻撃によって何本もの矢が尽きることなく飛来する。
 …と言うか文字通り尽きないんですけど?


『さあ、静かな立ち上がりから一転、シフィル選手が弓矢による猛攻を仕掛けております!!』

『あれだけ放っても全然矢が尽きねぇな…魔道具か?』

 どうやら放った矢が矢筒に戻るような魔道具みたい。
 これは弾切れは期待できないわ。
 まあ、そんなセコい真似は最初から狙ってないんだけどさ。


 こうして避けているばかりじゃどうにもならないけど…こうも矢継ぎ早に攻撃されると大きい魔法は使いにくい。
 なんとか間合いを詰めて接近戦に持ち込みたいが…
 さてどうしたものか。


 そんなふうに、どうやって攻め込もうか考えていると…

「どうしたの?避けてばかりじゃ私には勝てないわよ!」

 そう言って攻撃の手は一切緩めずに、それに加えて魔力の高まりまで感じる。
 これは、魔法も組み合わせてくるね…!

「[風矢]!!」

 通常の矢に加えて、風魔法による不可視の矢も混ぜて攻撃してきた!


 いっそう攻撃の苛烈さが増したが…ここで巻き返しを図る!

「[纏風]!!」

 私の魔法によって薙刀の周囲を風が取り巻いた。

 そして、飛来する矢も風魔法も纏めて絡め取るように薙刀を振るい、勢いを増した上で送り返してやる。

 ヒュンッ!ヒュヒュッッ!!

 いくつもの矢が風切り音を伴い、雨あられと放った本人に向かって襲いかかる!!

「くっ!?」

 シフィルさんは思いもよらない反撃に驚きをあらわにし焦った声をだすが、冷静に躱したり弓で打払ったりして難を逃れる。

 その間、私は一気に間合いを詰めて細かな斬撃を見舞っていく。
 シフィルさんはそれを弓で防ぐが、反撃する暇は与えない!

 だが、丁々発止と打ち合ってタイミングが合ってくると、私の攻撃を大きく弾き飛ばし、弓をブンッ!と叩きつけてきた!
 やっぱり弓の使い方がおかしいよ!?

 私は手元に引き寄せた薙刀の柄でそれを防ぐが、見た目にそぐわない怪力によって大きく吹き飛ばされて、またもや間合いを引き離されてしまった。



「まさか私が風魔法で返されるなんてね…生半可な攻撃は通じないって事か」

「こっちも、接近戦で圧倒出来ないのは誤算かな…」


「ふふ…手の内を隠したまま勝てる相手じゃないわね」

「お互いにね」

 未だ前哨戦の域を出ないという事だ。
 彼女も私も。






「じゃあ、ちょっと早いけど…切り札を切りましょうか」

 そう言って彼女は後方へと跳び退り更に私との間合いを広げる。

 …どうする?
 何かヤバそうな雰囲気だけど、今のうちに距離を詰めて阻止に動くべきか?

 そう逡巡してる間に、彼女は詠唱を始める。
 距離を取ったのはこのためか!

 私はそれを阻止すべく駆け出すが、間に合うか…!?


『…遍く地を駆ける風の精霊よ。我に風神の加護を、天を統べる翼を授けよ』

 …ちっ!詠唱が早い!!

「[風神招来]!!」

 魔法が発動し、淡い緑色の燐光が彼女の身を纏う。

 そして、彼女は空に舞い上がる!!



『おおーっと!?なんとシフィル選手、飛んでいます!!』

「飛行魔法!?」

 予選で見せたような跳躍を補助するようなものじゃない。
 飛行の魔法は神代魔法とされてるはずだが、彼女はそれを使えるのか…


「ただの飛行魔法じゃないわよ!」

 そう言って彼女が手を振ると、猛烈な風が上空から吹き下ろしてきた!

「くっ!!」

 吹き飛ばされないように姿勢を低くしてやり過ごしたが…
 手を振るっただけであれほどの強風を巻き起こすとは。

「この通り、飛翔出来るだけじゃなくて、自在に風を起こせるのよ」

「凄い…!」

 思わず称賛の声が漏れるが、本当にすごい魔法だ。
 聞いたことのないものなんだけど、彼女のオリジナルだろうか?


『こりゃあ…弓兵に高所を押さえられると厄介だな』

『上空から一方的に弓と風の打ち下ろし…確かにこれはシフィル選手が圧倒的に有利なのではないでしょうか!?』

 そうだよねぇ…
 こっちの攻撃は届かないし。
 そうすると攻撃手段が非常に限られてくるのだが…何れにしても風に乗って飛翔する彼女を捉えるのは、なかなか厳しいものがあるね。


 そして、シフィルさんの怒濤の如き攻撃が始まる!

 強風でこちらの動きを制限しながら、弓矢はその風を計算した上で的確にこちらを狙ってくる。
 これまでの攻撃が児戯に思えるほどの猛攻だ。

 私は何とか強風に耐え、矢を躱し、打ち払い、猛攻を凌ぎながら反撃方法を考える。

 とにかく、攻撃が届かないことには始まらない。

 ここは風の影響を受けにくく速度も早い雷撃魔法で…


「[雷矢]!!」

 雷撃の初級魔法を連続で放つ。
 初級とは言え、人間相手なら一撃で昏倒させるくらいの威力はあるし、攻撃速度もそこそこあるので手数で攻めればかなり有効な攻撃手段ではある。

 だが、自在に空を飛ぶシフィルさんは悠々と雷の矢を躱して、自らの攻撃の手は緩めない。



 何度か同じような攻防が続くが…
 やはりそう甘くはないか。
 このまま手をこまねいていたのではジリ貧だ。

 だが、それは向こうも同じこと。
 強風で動きを鈍らせて降り注ぐ矢による攻撃は確かに脅威だが、何とか躱すことが出来ている。


 あの魔法とてずっと維持できるものではないだろう。
 必ずどこかで勝負に打って出るタイミングがあるはずだ。



ーーーー 貴賓席 ーーーー

「おねえさま、かつよね?」

 クラーナがぎゅっと両手を組んで祈るように、そして不安そうに呟く。

「大丈夫よ、クラーナ、お姉さまの力はこんなものではないわ」

「そうだぞ。なんせ、あの娘は今代のディザール様の眷族ぞ。だが、しっかり応援はせねばな。きっとお前の声は届いている」

「…はいっ!おとうさま!クラーナはもっといっぱいおうえんするのです!」

 そう力いっぱい言うクラーナを見て、ユリウスとカーシャは優しい笑みを浮かべた。



ーーーーーーーー







『さあ!お互いに一歩も譲りません!!果たして決着はどうなるのか!?』

『両者決め手に欠けるが…そろそろだな』


 激しい攻防が続く。
 しかし、お互いに決定打に欠く状況も変わらず。



「(まさかここまで粘られるとは…このままじゃ私のほうが先に魔力が切れるわね。仕方ない、リスクは承知でもう一つの切り札を…!)風の精霊よ…我にさらなる力を…!!」


 降り注ぐ矢の雨が収まった…?
 そして、シフィルさんの魔力がぐんぐんと高まっているのを感じる…!


 遂に来たね!
 もう時間がない、と勝負に出たのだろう。
 いつか好機が訪れると粘った甲斐があった…
 ここが勝負所なのは私も同じだ!



 さあ…どんな手で来るのか?

 私自身も次の一手の準備をしながら、迎え撃つべく身構えるのだった。
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