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第九幕 転生歌姫の学園生活

第九幕 37 『夜襲』

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 食事が終わって、暫く皆でお喋りに興じて…
 明日も朝が早いからと言う事で、もう就寝の時間となった。


 この辺りに強力な魔物はいないはずだが、念の為交代で見張りを行うことに。
 竈の火は大分小さくなったが、見張り番が火を絶やさないようにする。
 まあ、消えてもすぐ着火出来るんだけど。

 そういった諸々含めての実習だ。









「それじゃあ、お休みなさい」

「おやすみ~」

「お休みなさい。交代の時間になったら起こすからね」

 交代については平等にくじ引きで決めた。
 最初の見張りは私とユーグだ。
 男女ペアで2時間ごとに交代する事になる。
 真ん中の時間帯はちょっとキツイかもしれないけど、くじ引きだからしょうがない。
 まあ、皆若いから多少寝不足でも大丈夫でしょう…


 就寝する人達はテントに入り、私とユーグは竈の前に座る。
 散々お喋りして少し疲れているので会話はあまりないが、別に気まずい訳でもない。

「…代行の魔符で結界でも張っておけば、ホントは見張も必要はないけどね~」

「学習の一環ですから。こういう事も経験です」

「まあね。基本は大切だものね」


 暫くまったりしていると、こちらにやってくる気配を感じたので、念の為少しだけ気を張ってそちらを見やる。
 すると、現れたのは…

「こんばんは、カティアさん。見張り番お疲れ様です」

「お疲れッス」

「あ、リーゼ先生にロウエンさん…見回りですか?」

 それともデート?
 …と言う言葉は既の所で飲み込んだ。

 事前に計画は出しているから、こういった野営地にはそれぞれ教員や冒険者たちも配置されてるはず。
 道中では会わなかったけど、リーゼ先生はこっちに来てたんだね。


「ええ、点呼も兼ねて。全班が計画通りに来ているかどうか確認してるんです。あとは…抜け出して羽目を外す生徒が毎年いるということなので…」

 羽目を外すって…何するんだろね?
 何となく想像はつくけどさ…

「お疲れ様です。頑張ってくださいね。ロウエンさんはお手伝い?」

「そうッス。オイラたち冒険者もそこの教師陣の野営にご厄介になってるッスけど…まぁ暇なんで。あ、ケイトリンたちも一緒だったッスよ」

 ああ、二人には付かず離れずで苦労をかけるね…
 おかげで学生生活を問題なく送れているのだから感謝しないと。


「じゃあ、私達はもう少し見回りして行きますね」

「それじゃあ、またッス~」

 …何か随分仲が良くなったように見えるね。
 これはルシェーラ先生に報告せねば。










 その後は特に変わったことも無く時間は過ぎていく。
 他の班も見張り番を残して就寝したようで、夕方の喧騒と打って変わって野営地は静寂に包まれている。

 そうして、暫く時間が経った頃…

 …
 ………
 …………オオ~~ン


「…今のは?」

「…狼の遠吠えみたいな感じだったね」

 ある程度間引いてるとは言え、それはあくまでも生態系に大きな影響を与えない範囲での事なので、魔物が全くいないわけではない。
 魔物じゃなくても肉食獣がいる可能性だってある。

「まあ、随分遠くからみたいではあったけど。一応、注意はしててね」

「分かりました」

 気にはなったが、まだこの段階で動く必要はないと判断した。

 先生や冒険者たちもそう判断しているのだろう。
 特に変わった動きは見られない。









「……ありゃ、ちょっとマズイ感じなのかな?」

 更に時間が過ぎ、もう少しで交代の時間という頃になって、私は異変を感じた。

「どうかしました?」

「向こうの方が何だか慌ただしい雰囲気がする。ロウエンさんやケイトリンが何かを察知したのかも」

「魔物ですか?」

「かもね。さっきの遠吠えのヤツかな?」


 すると、こちらにロウエンさんがやって来た。

「カティアちゃん、ちょっと手を貸してほしいッス」

「魔物?」

「そうッス。大したことはなさそうッスけど、数が多いんで。まぁ、冒険者だけで問題は無いんスけどね。学生を護らないといけないから念の為お願いするッス」

「…私も学生なんだけど」

「何かあったら遠慮なく頼って良いって、スレイン先生が許可してくれてるッス!」

 私の許可は要らないんかい。

 退屈してたところだから別に良いんだけど。
 トラブルが続くなぁ…


「まぁ分かったよ。念の為って言うなら、リーゼ先生にも結界をお願いしたほうが良いんじゃ?」

「それはもうやってもらってるッス。ここら一帯を丸ごと結界で覆うんで、オイラたちはその外で迎撃ッスね」

「りょ~かい。…ユーグ、ここは安全だとは思うけど、一応皆を起こしておいてもらえる?」

「分かりました。…お気をつけて」

「ありがと。そんじゃ行ってくるよ」


 と言う事で、私は魔物を撃退すべく行動を開始するのだった。
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