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第十幕 転生歌姫と忍び寄る戦火
第十幕 8 『賢者の書』
しおりを挟む「いったい、あの人は何て言ってたの?」
私が先の映像の言葉を理解している前提で質問される。
…マズったかなぁ?
衝撃が大きすぎて取り繕う余裕が無かったよ…
さて、何と答えるべきか。
取り敢えずは当たり障りのないところから…
「え~と…先ずあの人は、この塔の主。賢者リュート様です」
「おお!やはりそうか!姿絵などは伝わっておらぬが、伝承では黒髪だったと言われていたでの。しかし…リュート様、か。名前を聞いたのは初めてじゃのぉ…」
そう。
どう言うわけか賢者の名前は今に伝わっていなかったのだ。
何気にそれも大発見ではある。
おそらくは意図的に秘匿したのだと思うが…
「それで~、賢者様は何と仰っていたのかしら~?」
さて、それを全て話して良いものなのか。
いや、世界に危機が訪れるかもしれない…というのは話しておかないとか。
「未来に対する警告…のようなものでした。詳しくは書に纏めるとの事でしたので、私も詳しい事はまだ分かりませんが、賢者様が生きた時代よりも遥か未来に恐るべき事態が起きる…と」
「賢者様の時代より未来…具体的にいつ、何が起きるのか分からなければ何とも言えないわね…」
「はい、賢者様も正確に予見出来ず、この事を話してもただ混乱させるだけ…と仰っていました。ただ、この部屋に入る事ができて、先程の言葉が分かる者ならば、その危機感を共有できるかもしれない…そのために先の『記録』を遺したと」
「…ふむ、カティア様がその者という訳ですかな?」
「…そういう事になりますね」
「そもそも~、さっきの言葉は何だったの?どこの国のものとも雰囲気が違っていたけど~。…強いて言うなら~、東方の言葉に似ていたかも~?」
この世界の東方地域は前世で言うところの中東から東アジアまで引っ括めた、ざっくりしたイメージだ。
その中には日本に近い文化を持った国もあるみたいなので、姉さんの感覚はなかなか鋭いと言えるかもしれない。
「私も詳しくは知らないのだけど、以前『神代語』を教えてもらったときに一緒に刷り込まれたものだよ」
一先ずはそういう事にしておく。
親しい人達になら、転生の話をしても良いかな?なんて思ったりもしたのだが。
どうも、さっきの衝撃で自分が本当は何者なのかがよく分からなくなってしまった。
何らかの要因で前世の『俺』が死んで…その魂はリル姉さんの力によって、この世界の『私』の身体に送り込まれた。
そして、もともとの『私』の魂とも融合して今の私になった…
そう考えていたのだが、事はもっと複雑なのかもしれない。
とにかく、リル姉さんに聞いてみなければ…気になって仕方がない。
リル姉さんも知らないのかもしれないけど…あの人、うっかりさんだしなぁ…
「とにかく、その書物とやらを探さないと…」
日本語で書いてあると言っていたけど、背表紙を見ていけば分かるのかな?
取り敢えず書棚に向かうが……
いくら見れば分かると言っても、これだけの蔵書の中から探し出すのはホネだなぁ…
まあ、地道に見ていくしかないか。
端から順に見ていく。
「あ!?これ、凄いわ~!ねえねえ、先生~、これ見てくださいよ~」
「ん、なんじゃ?……おお!?まさか、これは…!」
…何やら盛り上がっているが、無視無視。
気にしてたらいつまで経っても終わらないよ。
…あ、これは中々興味深い…………はっ!?いかんいかん!
珍しそうな本が沢山あるから思わず見てしまうよ!
もう!あとあと!!
そんなこんなで誘惑と戦いながら確認すること暫し。
ついに目的の本を見つけた!
「あった!これだ!」
背表紙に書かれている文字は正しく日本語だ。
タイトルは……『異界黙示録』?
………おかしい。
『俺』って、中二病は中二で卒業したはずなんだけどなぁ…?
ま、まあ、いいや……何か気の迷いがあったんだろう…
それよりも肝心なのは中身だ。
「あら~、見つけたの~?」
「ほう…これもまた、見知らぬ文字じゃの。カティア様はこれも読めるのじゃな?」
「え、ええ…まあ…」
私は曖昧に返事をしながら、表紙をめくって中を確認していく。
…大仰なタイトルだが、要するに自叙伝のようなものか。
彼がこの世界に転移して、それから何を為したのか…それらにはとても興味があるのだが、本題はこの先…途中からは、この世界についての考察、様々な伝承、魔法の理論など内容はバラバラだ。
さらに読み進めると……ここからだ。
おそらくこれこそが彼以外の転移者や転生者に向けて遺したかった内容だろう。
そこには驚くべきことが書かれているのだった。
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