【本編完結済】転生歌姫の舞台裏〜ゲームに酷似した異世界にTS憑依転生した俺/私は人気絶頂の歌姫冒険者となって歌声で世界を救う!

O.T.I

文字の大きさ
356 / 683
第十一幕 転生歌姫と迷宮の輪舞曲〈ロンド〉

第十一幕 12 『ガエル対スレイン』

しおりを挟む
 ガエル君スレイン先生の試合である。


「寸止めなんて考えなくて良いぞ。全力でかかってこい」

「…はい」

 …何さ、私達には散々釘を刺したクセに。
 でも、それだけ実力差があると言うことなのだろう。
 だけど…ガエル君はプライドを刺激されたんじゃないかな?
 感情の揺れがあまり無い人だから分かりにくいけど、内に秘めた闘志は相当なものだろう。




 ガエル君の武器はいつも通りの大剣。
 学園で用意されているものの中では最大級のものだ。

 一方のスレイン先生が手にするのは、オーソドックスな長剣。
 先生はあらゆる武器を使いこなし、かつては『武芸百般』の二つ名を持つ冒険者だったらしいが…一番得意なのは長剣だと聞いたことがある。



 さて、試合開始の合図の後は静かな立ち上がりだ。

 スレイン先生はどっしりと構えて相手の出方を待ち、ガエル君は少しづつ前に出ながら間合いを測っている様子。


 そして、あと一歩で攻撃が届く…というところで、ガエル君が動く!


 一気に間合いを詰めたガエル君が、上段に大きく振りかぶった大剣を渾身の力で振り下ろす!!

 ぶんっ!!

 猛烈な勢いのその攻撃を、スレイン先生はすっ…と紙一重で事もなげに回避する。

 だが、ガエル君の攻撃はまだ続く。
 勢い余って地面を抉ると思われた振り下ろしを、圧倒的な膂力で無理やり止めて、剣を翻して横薙ぎの斬撃を繰り出す!!

 先生は、今度は差し出した長剣で刃を滑らせながら力の方向を変えて、斬撃を上方にいなしてしまう。


 ここでガラ空きになったガエル君の胴に斬り込めば、その時点で試合終了だったろう。
 だが、これはガエル君にアドバイスするための手合わせなので、直ぐに終了させるはずもなく、そのまま続行だ。





 その後も、ガエル君が攻撃して先生が受ける…というやり取りが繰り返される。

 学園一とも噂されるパワーから繰り出される怒涛の攻撃は正に圧巻とも言えるものだが……それを全く危なげなく捌く先生の技量が凄まじい。
 必要最小限の動きで一切の攻撃を受け付けない。
 テオやお義母さまの鉄壁の防御に近いものがあるね。

 やはり先生は只者ではなかった。
 引退したとは言っても、かつてのAランク冒険者としての実力は衰えていないのだろう。



 そして、私には彼の弱点……と言うか、彼が目指していると言う父さんとの違いがはっきりと分かってきた。
 先生が分かりやすいように立ち回ってくれてるのだ。
 多分、先生も分かってるんだろうね。




「どうだ、カティア?分かったか?」

「え?あ、はい」

「流石だな。では、そろそろこちらからも攻撃するぞ!」

「…!」


 宣言してから遂に先生が攻勢に回る。
 ふらりとした、一見何でも無い足取り。
 およそ戦闘中とは思えないほどの全く気負いのないそれは…その実、相手の意識を巧みにすり抜ける高度な歩法だ。

 そして、軽く振るわれる長剣の一撃は、緩やかに見えて視認しにくい軌道でガエル君に襲いかかった。

 ガッ!!

 彼は大剣の大きさを活かして盾のように先生の攻撃を防いだ。
 目で見て、と言うよりは直感に従って自然に身体が動いたという感じだ。


「ほう、よく防いだな。だが、まだまだだ」

 防がれた長剣は直ぐに引き戻して、再びあの歩法でスルリとガエル君の背後に回り込み…

 ピタリと首筋に剣を当てた。
 ガエル君はまるで狐につままれたような表情だ。


「そ、そこまで!!」

 そして、私は戦いの終わりを宣告したのだった。
















「どうだ?」

 手合わせが終わって、先生が私に問いかける。
 答え合わせ…ということなのだろう。


「あ、はい。ガエル君がウチの父さんを目標にしてるとのことなので、両者の違い…ガエル君に足りないものが何なのか、という観点で試合を見させてもらいました」

 私達のやり取りに注目が集まる。


「で、結論としましては…一つは『技』ですかね」

 先生の方をチラッと見ると…続けろ、と目で促された。

「え~と、大剣の使い方としては今のガエル君みたいにパワーを最大限活かす戦い方に問題は無いと思うんですけど……目指すのが父さんレベルというのであれば、そこに『技』…相手の意表を突いたり、正確に狙った場所に斬り込むと言った技術面の底上げが必要ですね」

「ふむ……で、一つは…ということはまだ有るんだろう?」

 先生が更に先を促す。

「はい。あとは、『視野の広さ』ですかね。ウチの父さんって、見た目も言動も粗野だし脳筋っぽい感じがするんですけど」

「……ダードおじさんの評価がヒドイよ、カティア」

 レティが何か呟いたけど、取りあえずスルー。


「そう見えて、戦いのときの視野は凄く広くて色々考えてるんです。部隊指揮も取ったりするから。で、さっきの手合わせでは……あれはわざとだと思いますけど、先生は結構隙を見せてたんです。でも、ガエル君、気付いてなかったでしょう?最初は誘いを警戒してたのかな?とも思ったけど……」

「……そうなのか」

「ふむ。その通りだな。概ね俺の見立てと同じだ。後はそうだな……お前は感情的にならず冷静に状況を見つめることができる長所がある。だが、それを活かしきっていない。今カティアが言ったように、視野を広げてもっと考えて戦えば一皮向ける…かも知れん」

 そこは断定してあげましょーよ。
 でも、まぁそう言うことだね。

 パワーで押し切る戦闘スタイルは大剣使いとしては当然なんだけど、それだけだとやがて限界が訪れる。
 今行き詰まりを感じてるのなら、もう既にガエル君はそこまでのレベルに達している、ということなのだろう。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界で一番の紳士たれ!

だんぞう
ファンタジー
十五歳の誕生日をぼっちで過ごしていた利照はその夜、熱を出して布団にくるまり、目覚めると見知らぬ世界でリテルとして生きていた。 リテルの記憶を参照はできるものの、主観も思考も利照の側にあることに混乱しているさなか、幼馴染のケティが彼のベッドのすぐ隣へと座る。 リテルの記憶の中から彼女との約束を思いだし、戸惑いながらもケティと触れ合った直後、自身の身に降り掛かった災難のため、村人を助けるため、単身、魔女に会いに行くことにした彼は、魔女の館で興奮するほどの学びを体験する。 異世界で優しくされながらも感じる疎外感。命を脅かされる危険な出会い。どこかで元の世界とのつながりを感じながら、時には理不尽な禍に耐えながらも、自分の運命を切り拓いてゆく物語。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件

フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。 だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!? 体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

処理中です...