ホワイトデー ラプソディ

梨花

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3月13日 木曜日

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美保と行ったのは安くて早くてそこそこ美味しいのが有名なイタ飯のチェーン店。
そこでワイン片手に生ハムをつまむ。
「フライングのお返しは正解だと思うわぁ。」
美人なのにゲラゲラ笑われた。
「あたしはすっかり忘れてた。」
「まあ、そこが成美らしいわよね。
で。
村田とはどうだったの?」
「それが…。」
説明するには昨日の事から話をした。
市川さん達と飲みに行ったこと、そこで元カレに会ったこと、そこで言われたことやその後深酒になったことやら、全部。
美保は相槌を打って聞いてくれた。
「最後に好きだって言われた。」
「そう。」
にこりと笑みを浮かべて美保は言った。
「え?」
もっと突っ込んだ反応をすると思ってた。
「あいつ、やっと言う気になったんだ。」
何、その反応。
「美保、知ってたの?」
「知らない人を探す方が大変な位だと思うわよ。」
「あたし、知らない…。」
「そりゃ、そういう情報シャットアウトしてるじゃない。」
「あー、うん…。」
「で?」
「断わった、よ。」
「まあ、成美ならそう出るわよね。」
こくりと頷く。
「でも、あいつ、引き下がらなかったんでしょう?」
「…そこまでわかるの?」
「わかるわよ。
村田見てれば、ね。」

美保と別れて家に帰り、お風呂のお湯を張りながらメイクを落としていく。

村田はいつからあたしのことが好きだったんだろう。
顔色1つ変えずに砂糖を吐きそうなセリフをつらつらと。

村田との出会いは就職説明会だった。
鞄に入れたと思ったペンを忘れて、たまたま席が隣だった村田が気がついて貸してくれたのだ。
その後も別の会社の説明会でばったりあったり、入社試験で一緒になったこともあった。
それでも入社するところが決まるまではライバルだから話しかけることはしなかった。
まともに話をしたのは入社説明会の後。
ビルを出たところで声をかけられた。


「木崎、さん。」
振り返ると村田がいた。
あたしは顔を覚えていたけど名前の知らない彼をこっそり謙信と呼んでいた。
敵に塩を送るの故事からの謙信だ。
「あ、」
「村田です。よろしく。」
「はい、よろしくお願いします。」
多分氏名の確認をされた時に覚えてくれていたのだろう。
あたしはどうせバラバラになるからと覚える気がなかったけど。
「もし良かったら昼飯どうですか?」
あたしは誘われて頷いた。
1人で食べるのは少し味気ないと思っていたから。

その時入ったのもファミレスだった。
互いの自己紹介をして、就職活動の時の話をした。
思っていた通りあたしと村田は似た系列の商社希望だったようで、あたしが気がつかなかった会社の説明会や入社試験も一緒だったようだ。
村田は気がついていたけど声をかけなかったそうだ。
ライバルと仲良くなるのはな、と笑って言った。


そんなこともあったなぁと思いながらあたしはお風呂に入った。
でも。

明日の返事はもう決まっている。
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