冷酷非情の雷帝に嫁ぎます～妹の身代わりとして婚約者を押し付けられましたが、実は優しい男でした～

20

ある日の昼下がり、私は東の聖域で訓練をしていた。


「はっ！」


私は気合いを入れて魔法を放つ。しかし炎は途中で消えてしまった。


（やっぱり難しいな……）


私が悩んでいると、背後から声をかけられた。


「フィーナ、少し休憩したらどうだ？」


振り返るとライトニングが立っている。彼は心配そうな表情を浮かべていた。私は彼に笑顔を向けて答える。


「大丈夫よ！もう少し練習するわ！」


私は再び魔力を集中させて魔法を放とうとしたが、集中できずに魔力の出力が弱まってしまったため攻撃も上手くいかなかった。そんな私を見てライトニングが言う。


「無理はするな。時には休むことも大切だぞ」


「うん、分かったわ……」


私は素直に返事をしたものの、悔しくて仕方がなかった。


（私だってもっと強くなりたいのに……）


そんなことを考えていると、ライトニングが優しく微笑んだ。彼は私に近づくと手を取って言う。


「よし！ それじゃあ二人で出かけようか？」


「えっ！？」


（いきなりどうしたのかしら？）


私は困惑しつつも了承するしかなかったのだった。


ライトニングに連れ出されて街に出た私は、彼に手を引かれて歩く。彼は私を気遣ってかゆっくりと歩いてくれた。そして私たちは近くの公園にやってくる。ベンチに腰掛けると彼が口を開いた。


「フィーナ、何か悩み事でもあるのか？」


ライトニングが心配そうに尋ねるので私は正直に答えることにした。


「実はね……私強くなりたいの」


私の答えを聞いたライトニングは微笑むとこう言った。


「そうか……」


（あれ？ 反応それだけ？）


私が不思議に思っていると彼は話を続けた。


「ならば私が稽古をつけてやろう！」


「えっ！？ でも……いいの？」


私が尋ねるとライトニングは頷く。彼は私の手を握るとこう言った。


「もちろんだとも！ フィーナが望むならいくらでも付き合ってやるさ！」


（ライトニング様の稽古なんて豪華すぎるわ！）


私は心の中で感動に打ち震えた。


（でも、ライトニング様に迷惑かけちゃうかも……）


私はそう思いつつも、思い切ってお願いする。


「じゃあお願いします！」


私が頭を下げるとライトニングは満足そうに微笑んだのだった。

その日から私は毎日、ライトニングに稽古をつけてもらうことになった。時には訓練場で魔法の練習をしたり、時には森に出かけて魔物討伐の演習を行ったりした。そんなある日のこと、いつものように訓練場に行くと友人達が集まっていた。そして私を見つけると嬉しそうに声をかけてきたのだ。


「フィーナ！いいところに来たわ！」


「どうしたの？」


私が尋ねると、友人の一人が説明する。


「ライトニング様との稽古が辛いなら相談に乗るわよ？」


私はその言葉に驚いた。そして慌てて否定する。


「そんなことはないよ！」


（むしろ幸せすぎるくらいだもん！）


私は心の中で呟いたが、友人達はまだ納得していないようだった。そこでライトニングが現れる。彼は友人たちに対して言った。


「お前たち……余計なことを吹き込むんじゃない」


（あれ？ なんか怒ってるような……？）


私が首を傾げている間にも友人たちが弁明していた。


「いえ！ 私たちはただフィーナのことを心配していたんです！」


「そうです！ 決して悪気があったわけではありません！」


しかしライトニングは冷たい視線を彼女たちに向け、口を開く。


「フィーナは私の弟子だ。貴様たちに頼る必要はない！」


「申し訳ありませんでした……」


ライトニングに気圧された友人たちは謝罪するとそそくさと帰っていったのだった。ライトニングはため息をつくと私に向き直る。


「すまない……驚かせてしまったな」


「ううん、気にしないで」


私はある疑問を口にした。


「あの……どうして私が辛いって思っているの？」


私の疑問を聞いたライトニングは一瞬固まったように見えたが、気を取り直して私に説明してくれた。


「最近、フィーナの顔色が悪い気がするんだ。もしかしたら稽古が負担になっているんじゃないかと……」


「そんなことないよ！ライトニング様のおかげで毎日充実しているし、とっても楽しいわ！」


私は慌てて否定した。するとライトニングは安心した表情を浮かべると私の頭を優しく撫でてくれる。その手つきはとても優しかったので、私は思わず赤面してしまったのだった。