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翌日、俺たちを乗せた馬車はアルヴヘイムの目前まできていた。


「主よ。超高速で、何かが接近してくるぞ」


「何かだと?」


「どうやら真っ直ぐこっちに突っ込んでくるようじゃぞ」


俺は窓から身を乗り出して、荷台の屋根の上に乗っかる。


「あいつらか……」


【千里眼】で確認すると、黒装束の男たちが馬車を囲うようにして歩いてくるのが見えた。


「お前がカイトだな?」


「だったらなんだ?」


黒装束の一人が問いかけるが、俺は平然と答えた。


「死んでもらおう」


男たちは一斉に武器を取り出し、襲い掛かってくる。だが、俺はその動きを完璧に見切っていた。


「遅いな……」


俺は男たちの攻撃を避けつつ、反撃に移る。まずはリーダー格らしき男に回し蹴りを喰らわせると、男は血反吐を吐きながら吹き飛んでいく。


「ば、馬鹿な! 我ら【闇鴉】は帝国でも最強の暗殺部隊と言われているんだぞ!? それをこうもあっさりと!?」


「今なら許してやるから、さっさとこの死体を持って帰れ」


「ふざけるな! どっちにしても見られたからには生かしてはおけない! 全員でかかれ!!」


そして10人くらいの集団が襲いかかってくる。だが、俺は掛かって来た全員を一瞬で全滅させた。


「ば、馬鹿な……今までどんな相手も暗殺してきた我ら【闇鴉】が全滅するなんて……」


生き残った一人は逃げようとするが、俺は暗殺者を逃がすようなお人好しではない。俺は【千里眼】で居場所を看破すると、そちらへ向かって敵から奪った剣を投擲する。


「く、くそっ……だが帝国の力はこんなものではないぞ……」


そんな言葉を残して、ダルク帝国とやらの暗殺部隊最後の一人はあっさり死んでしまった。


「こいつらは一体なんなんだ?」


「おそらくは暗殺ギルドの連中じゃろ」


アリアに聞いてみると、そう答えてくれた。


「暗殺ギルド……まさか闇ギルドか!?」


「その言い方だと知っているみたいだな」


「ああ、帝国には大きな裏組織があって、そいつらが絡んでる可能性もあるな」


「なるほどのう……」


俺たちは馬車を再び走らせながら考える。もし本当に闇ギルドの連中が絡んでいるとしたら面倒なことになりそうだな……そんなことを考えながらも、俺たちはついにアルヴヘイムに到着した。


「うぉーっ! でけぇーっ!」


目の前には、山に届くほどの樹木の森が広がっている。その景色に思わず俺は感嘆の声を漏らしてしまう。


「気をつけるのじゃ、何やら嫌な魔力の気配を感じる」


突然、アリアがその場に倒れ込んだ。顔も真っ青になっている。


「どうやら瘴気を吸って倒れたようじゃ」


「瘴気? 普通の空気が毒ってことか?」


「そうじゃな。我は平気だが、エルフや妖精族のような耐性を持たないものはすぐに体調を崩すじゃろう」


「アリア、大丈夫か!?」


「うぅ……」


どうやら意識を失っているらしい。早くなんとかしないと命に関わるかもしれない。


「【治癒の女神】!」


地面に魔法陣が描かれる。そして太陽のような、強烈な光が発生する。目を開けてられないほどの、強い光だ。

やがて魔法陣の中から羽の生えた女神像が出現した。まるで神殿に祭られているような真っ白な女神像だ。


『病人発見、ただちに治療を開始します』


女神像の目から黄金色のビームが放たれる。するとアリアの体から、黒い靄のようなものが吹き出す。


「これが瘴気か?」


『その通りです。かなり濃い瘴気が体内に溜まっていました』


女神像は手をかざすと黒い靄は、一瞬にして消滅した。どうやら治療は終わったようだ。


「ありがとう、助かったよ」


『いえ、当然のことをしたまでです』


女神像はそう言うと姿を消した。


「うう……あれ?」


アリアが目を覚ます。


「調子はどうだ?」


「すっかり元気になりました!」


「そうか、よかった」


しかしこのままではアルヴヘイムに入れない。


「こんな高濃度の瘴気の中に入ったら、死んでしまうぞ」


「心配するな、俺にはこれがある」


【収納】を発動し、異空間に瘴気が吸い込まれていく。巨大樹が揺れ動くほどの吸引力だ。


「おぉ、凄いですね!」


瘴気の量は物凄く、全力で吸い込んでも、中々終わらない。


「ふぅ~」


数時間後、ようやく全ての瘴気がきれいさっぱり無くなった。


「す、すごい……森を包んでいた、あんな高濃度の瘴気が……すっかり……」


空気もすっかり綺麗になり、アリアも歩けるようになっていた。


「よし、これで大丈夫だな」


俺たちは改めてアルヴヘイムの中へと足を踏み入れた。
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