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数日後、俺たちは東の大陸に向かうべく船の旅をしていた。船の先端に立ち、海を眺める。潮風が心地よかった。


「いい天気ですね」


隣に立つフィーナが話しかけてくる。彼女は目を細めて微笑んでいた。


「ああ、そうだな」


俺も同意して頷く。真っ青な空と海を見ていると心が洗われるようだった。しばらく眺めていると、フィーナが口を開く。


「ねえ、カイト様」


「ん? どうした?」


俺が聞き返すと、彼女は少し恥ずかしそうにしながら言った。


「その……手を繫いでもいいですか?」


俺は一瞬驚いたものの、すぐに笑顔になる。そして左手を差し出した。


「もちろん!」


俺の言葉にフィーナは嬉しそうに笑うと、俺の手を握る。柔らかくて温かい感触が伝わってきた。


(なんだかドキドキするな……)


俺は緊張しながらも握り返す。すると、フィーナも握り返してきた。お互いに見つめ合うと、なんだか気恥ずかしくなり視線を逸らす。


「ふふっ」


フィーナはおかしそうに笑うと、俺にもたれかかってきた。柔らかな感触と甘い香りが伝わってくる。


「フィーナ!?」


俺は動揺しながら名前を呼んだ。だが、彼女は気にした様子もなく俺の肩に頭を預けている。


(まいったな……)


俺は苦笑しながらも、彼女を受け入れることにしたのだった……。


「魔物が出たぞ!」


船員の叫び声が聞こえ、俺は我に返った。すぐに武器を構えて臨戦態勢に入る。そして前方を見ると、そこには大きな影があった。


「あれは……クラーケンか?」


俺が呟くと、隣にいたフィーナが頷く。


「そのようですね」


俺は剣を抜くと構える。クラーケンは触手をウネウネさせながら近づいてきた。まるで獲物を狙うハンターのようにゆっくりと近づいてくる。


「フィーナは下がっていろ!」


俺は叫ぶと、クラーケンに向かって走り出した。それと同時にフィーナも詠唱を始める。


「『風刃』!」


風の刃が放たれると、クラーケンの胴体に直撃する。しかし、あまり効いている様子はなかった。


「くっ! やはり効かないか……」


俺は悔しそうに呟くと、クラーケンに向かって走り出す。そのまま剣を振り下ろした。だが──。


「なに!?」


クラーケンの体は弾力があり、剣が弾かれてしまう。それどころか反動で手が痺れてしまった。


(まずいな……)


俺が顔をしかめていると、フィーナが叫ぶ。


「カイト様! 私が援護します!」


彼女は杖を構えると詠唱を始めた。


「『光矢』!」


光の矢が放たれると、クラーケンの体を貫く。だが、それでも致命傷には至らなかった。


「くそっ! どうすればいいんだ……」


俺が悩んでいると、クラーケンの触手が襲い掛かってくる。俺は咄嵯に回避すると、距離を取った。


(どうすれば倒せるんだ?)


俺は必死に考える。すると、ある作戦を思いついた。


(やってみよう……!)


覚悟を決めると、剣を構えて走り出す。そして触手の攻撃をかわしながら隙を窺った。そしてついにその時が来る──。


「ここだ!」


俺は触手に向かって剣を振り下ろす。すると、触手はスパッと切れた。


(よし!)


俺は心の中でガッツポーズをする。だが、喜んでいる暇はなかった。クラーケンが再び襲ってきたのだ。俺は慌てて回避する。


「くそっ! そう簡単にはいかないか……!」


俺は焦りながらも反撃の機会を窺った……。


「カイト様! 危ない!」


フィーナが叫ぶと、後ろから魔法を放つ。


「『火球』!」


放たれた火の球は、見事にクラーケンに直撃した。さすがに効いたのか、クラーケンの動きが鈍る。俺はその隙を見逃さなかった。


「今だ!」


俺は一気に間合いを詰めると、渾身の一撃を放つ。すると、クラーケンの体に大きな傷が入った。


「よし! 効いているぞ!」


俺が叫ぶと、フィーナは嬉しそうに笑う。しかし、すぐに真剣な表情に戻ると叫んだ。


「気をつけてください! まだ終わっていません!」


「っ! 分かっている!」


俺は気を引き締めると、追撃の準備をする。すると、クラーケンが再び反撃してきた。


「『雷神剣』!」


俺は雷の斬撃を飛ばす。それはクラーケンの体に直撃し、大きなダメージを与えた。


「カイト様! 今です!」


フィーナの言葉に俺は頷くと、もう一度剣を構える。そして勢いよく振り下ろした。


「これで終わりだぁぁ!!」


ズバッという音と共にクラーケンは真っ二つになる。そしてそのまま海へ沈んでいったのだった……。


「ふぅ……」


俺は息を吐くと、剣を鞘に収める。フィーナも安心したように微笑んだ。


(なんとかなったな……)


俺は心の中で安堵する。クラーケンのような強敵を倒したのは初めてだった。


「カイト様、お怪我はありませんか?」


「ああ、大丈夫だ」


俺が答えると、フィーナはホッと胸をなでおろす。そして笑顔で言った。


「お疲れ様でした」


「ああ、フィーナもな」


俺とフィーナは笑い合うと、船室に戻って行く。そして夕食を食べながら勝利を祝ったのだった……。
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