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翌日、俺は王国へ向け出発していた……今回は単身なので馬に乗っての旅路となる。
「ふぅ……」
俺は息を吐きながら空を見上げる。空は雲一つなく澄み渡っていた……絶好の旅日和だと言えるだろう。俺は手綱を握り直すと馬を走らせる。そしてしばらく走り続けると前方に大きな街が見えてきた。恐らくあれが目的地なのだろう。
(あそこがニブルム王国か……)
俺がそう思っていると、街の入り口が見えてきた。門番が立っているので身分証を見せる必要があるかもしれない。
(一応フードを被っておくか)
そう思った俺はフードを被ると門の方へ歩いて行く。すると案の定、門番に呼び止められた。
「止まれ!」
俺に向かって槍を突きつけてくる……俺は素直に立ち止まると口を開いた。
「入国したいんだが……」
俺が言うと門番は怪訝な顔をする。
「見ない顔だな……お前、何者だ?」
どうやら怪しまれているらしい……まあ、無理もないか。俺は少し考えると口を開く。
「実は旅人でね、この国に観光しに来たんだよ」
俺が言うと門番は訝しむような視線を向けてくる。そして俺を上から下まで眺めると口を開いた。
「ふむ……怪しいが、まあいいだろう」
彼はそう言うと道を開けてくれる。どうやら入国許可を得られたようだ。俺は安堵のため息をつくと街の中に入って行った……
(さて、まずは宿を見つけるか)
そう考えた俺は街の中を歩いて行く。しばらく歩いていると宿屋らしき看板が見えたので、そこに入ることにした。中に入ると受付に座っている女性が話しかけてくる。
「いらっしゃいませ」
彼女は微笑みながら挨拶をしてきた。俺はカウンターまで行くと懐から金貨を取り出す……そしてそれを受付の上に置いた。
「ここに泊まりたいんだが」
俺が言うと受付の女性は笑顔のまま答える。
「ありがとうございます、何名様でしょうか?」
「一名だ」
俺が答えると受付の女性は頷く。
「かしこまりました、ご案内致します」
彼女はそう言うと立ち上がり、俺を部屋に案内してくれた。部屋は個室でベッドや机などが置かれているシンプルな作りになっていた。窓から外を見ると大通りが見える……かなり大きな街のようだ。
「あれが王宮か」
中央には一際大きな城が建っている……あれが王女のいる城なのだろう。俺はそれを見つめながら今後の展開を考えるのだった。
夜になった頃、俺は部屋の窓から大通りを眺めていた。通りには多くの人々が行き交い、活気に満ち溢れているように見える。
(さて、そろそろ行くか……)
そう考えた俺は行動を開始することにした。まず最初に鎧を外し、軽装になる……そして腰に剣を携えフードを被ると部屋を出た。宿を出ると大通りに向けて歩き出す……辺りは既に暗くなっており人通りも減っているようだ。
大通りに出ると昼間とは打って変わって静まり返っていた。酒場や娼館などが並んでいるが、そこも閉まっているところが多いようだ。
(まずは情報を集めるか……)
俺は心の中で呟くと酒場や娼館を探してみることにする。しばらく歩いていると一軒の建物を見つけた……看板には『妖精の酒場』と書かれている。どうやらここが目的の場所らしい。俺は中に入ることにした。
ドアを開けるとカランカランというベルの音が鳴り響く……店内は割と広く、カウンター席とテーブル席が幾つかあるようだ。客層は若い女性や男性が多いようだが、ちらほらと女性だけのグループやカップルなどもいるようだ。
俺が店内を見回していると一人の女性が話しかけてきた。
「いらっしゃいませ」
彼女は笑顔で言うと俺の前にメニュー表を置く……どうやら注文を聞いてくるつもりらしい。俺はフードを取ると口を開いた。
「ここのオススメを貰おうか」
俺が言うと彼女は笑顔で頷く。そしてカウンターの方へ歩いて行くとカクテルを作り始めた……その様子を見ながら店内の様子を観察する。
(ふむ、なかなか良い雰囲気の店だな……)
俺は心の中で呟くと周囲を観察する……客層はやはり若い女性が多いようだ。そして客たちは皆、笑顔で会話をしているように見える……恐らくここはそういう場なのだろう。
俺は店員の動きを見ながら待つことにした。暫くすると店員が戻ってくる……その手にはオレンジ色の液体が入ったカクテルグラスが握られていた。
「お待たせいたしました」
そう言って彼女は手慣れた手つきでグラスを差し出すとニッコリと笑って見せた。
「ありがとう」
俺は礼を言うとグラスを受け取り、口を付ける……爽やかな柑橘系の香りが鼻を通り抜けていった。アルコール度数は低めだが中々美味い酒だ。
「美味いな……」
俺が感想を述べると店員は嬉しそうに微笑んだ。その後も俺は静かに酒を飲んでいたが、やがて店を出ることにした……代金を支払うと店を出て行くことにする。すると後ろから声をかけられた。
「お客様、また来てくださいね」
振り返ると先程の店員が手を振っていた……俺は軽く手を振り返すと店を後にしたのだった。
「ふぅ……」
俺は息を吐きながら空を見上げる。空は雲一つなく澄み渡っていた……絶好の旅日和だと言えるだろう。俺は手綱を握り直すと馬を走らせる。そしてしばらく走り続けると前方に大きな街が見えてきた。恐らくあれが目的地なのだろう。
(あそこがニブルム王国か……)
俺がそう思っていると、街の入り口が見えてきた。門番が立っているので身分証を見せる必要があるかもしれない。
(一応フードを被っておくか)
そう思った俺はフードを被ると門の方へ歩いて行く。すると案の定、門番に呼び止められた。
「止まれ!」
俺に向かって槍を突きつけてくる……俺は素直に立ち止まると口を開いた。
「入国したいんだが……」
俺が言うと門番は怪訝な顔をする。
「見ない顔だな……お前、何者だ?」
どうやら怪しまれているらしい……まあ、無理もないか。俺は少し考えると口を開く。
「実は旅人でね、この国に観光しに来たんだよ」
俺が言うと門番は訝しむような視線を向けてくる。そして俺を上から下まで眺めると口を開いた。
「ふむ……怪しいが、まあいいだろう」
彼はそう言うと道を開けてくれる。どうやら入国許可を得られたようだ。俺は安堵のため息をつくと街の中に入って行った……
(さて、まずは宿を見つけるか)
そう考えた俺は街の中を歩いて行く。しばらく歩いていると宿屋らしき看板が見えたので、そこに入ることにした。中に入ると受付に座っている女性が話しかけてくる。
「いらっしゃいませ」
彼女は微笑みながら挨拶をしてきた。俺はカウンターまで行くと懐から金貨を取り出す……そしてそれを受付の上に置いた。
「ここに泊まりたいんだが」
俺が言うと受付の女性は笑顔のまま答える。
「ありがとうございます、何名様でしょうか?」
「一名だ」
俺が答えると受付の女性は頷く。
「かしこまりました、ご案内致します」
彼女はそう言うと立ち上がり、俺を部屋に案内してくれた。部屋は個室でベッドや机などが置かれているシンプルな作りになっていた。窓から外を見ると大通りが見える……かなり大きな街のようだ。
「あれが王宮か」
中央には一際大きな城が建っている……あれが王女のいる城なのだろう。俺はそれを見つめながら今後の展開を考えるのだった。
夜になった頃、俺は部屋の窓から大通りを眺めていた。通りには多くの人々が行き交い、活気に満ち溢れているように見える。
(さて、そろそろ行くか……)
そう考えた俺は行動を開始することにした。まず最初に鎧を外し、軽装になる……そして腰に剣を携えフードを被ると部屋を出た。宿を出ると大通りに向けて歩き出す……辺りは既に暗くなっており人通りも減っているようだ。
大通りに出ると昼間とは打って変わって静まり返っていた。酒場や娼館などが並んでいるが、そこも閉まっているところが多いようだ。
(まずは情報を集めるか……)
俺は心の中で呟くと酒場や娼館を探してみることにする。しばらく歩いていると一軒の建物を見つけた……看板には『妖精の酒場』と書かれている。どうやらここが目的の場所らしい。俺は中に入ることにした。
ドアを開けるとカランカランというベルの音が鳴り響く……店内は割と広く、カウンター席とテーブル席が幾つかあるようだ。客層は若い女性や男性が多いようだが、ちらほらと女性だけのグループやカップルなどもいるようだ。
俺が店内を見回していると一人の女性が話しかけてきた。
「いらっしゃいませ」
彼女は笑顔で言うと俺の前にメニュー表を置く……どうやら注文を聞いてくるつもりらしい。俺はフードを取ると口を開いた。
「ここのオススメを貰おうか」
俺が言うと彼女は笑顔で頷く。そしてカウンターの方へ歩いて行くとカクテルを作り始めた……その様子を見ながら店内の様子を観察する。
(ふむ、なかなか良い雰囲気の店だな……)
俺は心の中で呟くと周囲を観察する……客層はやはり若い女性が多いようだ。そして客たちは皆、笑顔で会話をしているように見える……恐らくここはそういう場なのだろう。
俺は店員の動きを見ながら待つことにした。暫くすると店員が戻ってくる……その手にはオレンジ色の液体が入ったカクテルグラスが握られていた。
「お待たせいたしました」
そう言って彼女は手慣れた手つきでグラスを差し出すとニッコリと笑って見せた。
「ありがとう」
俺は礼を言うとグラスを受け取り、口を付ける……爽やかな柑橘系の香りが鼻を通り抜けていった。アルコール度数は低めだが中々美味い酒だ。
「美味いな……」
俺が感想を述べると店員は嬉しそうに微笑んだ。その後も俺は静かに酒を飲んでいたが、やがて店を出ることにした……代金を支払うと店を出て行くことにする。すると後ろから声をかけられた。
「お客様、また来てくださいね」
振り返ると先程の店員が手を振っていた……俺は軽く手を振り返すと店を後にしたのだった。
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