聖女候補に認定された幼馴染が泣きながら帰ってきたので戦争します。

名無シング

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転:争乱

34:新たな争乱…

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謎の人型による第三勢力の襲撃で、両軍が被害を出してからの翌日…
南方の戦地から近いキクルス領土には負傷したベルフェ・セィタン連合軍の兵士が流入し、領主館がある町では負傷兵でごったがいになっていた…

「ここまで被害が出るとは…」

カイはそう呟きながら、魔法と医学による治療を行われてる臨時病院を視察に訪れていた。
負傷兵の数の実態もだが、領民もとい町の住民に要らん不安を与えさせないためでもあった。
ミリーを隣にお供させながら、臨時病院と軍部の動きを見て回っていた…

そんな緊張が張り巡らされた環境の中、白の看護服を着た少女…
ミシェル・バルバトスは相方のシグルスと共に負傷兵に治療と観察を行っていた…

「ミシェル嬢、シグルス殿。兵の症状はどうなんだ?」
「カイ殿…」
「酷い有様だわ…こんなの、魔法による炎症でも火薬の炎症でもない…何か別の物による酷い火傷よ…」

ミシェルは顔を青ざめながら左半身を焼けただれた兵士の姿を見て言った。
その兵の火傷は通常の火傷とは違い、まるで猛烈な熱風の柱が通った後みたいな一直線に走る形で痕が残り、残っていた皮膚も引っ張られる形で裂傷を起こしていた。

「体内の魔力回路などを調べても酷い物よ。回路その物がズタズタに寸断され、これじゃあいくら魔法をかけても治らない。その上、免疫機能も低下してて傷薬を大量に使用しても治る見込みはないわ…魔法医学的に見ても、この人の余命は一ヶ月もないわね…」
「そうか…もし、家族と連絡が付けるなら手配しよう…邪魔して済まない」
「良いわよ…私とシグルスは好きでやってるから…」

恐らく、この光景の気晴らしでやってるつもりだろう…
カイはそう察しながら、シグルスに後を頼むとジェスチャーを送りミリーと共にこの場から立ち去った。


屋敷に戻ったカイ達は、別行動で視察を行っていたティファとコレットと共に執務室に入り、現状を把握していた。

「ティファ、コレット。そちらの様子はどうだった?」
「同じような状況です」
「稼働可能な戦車などから見ても、同じような症状と現象です。まるで、一直線の光の柱が走って焼き尽くしたような痕しか残ってません…」
「そうか…」

彼女たちからの情報を得て、カイとミリーは色々と考察をした。

・第三の勢力である人物は、我々の知らない兵器を持っているのか?
・あるいは、未知の古代魔法による破壊術なのだろうか?
・もしくは、我々の知らない未知の力なのか?

色んな条件を当てはめ、現状に至るまでの課程を考えてみた。
しかし、今のカイとミリーの持っている情報量では、原因を特定するのは困難な状態であった…

そんな手を拱いている中、執事のセバスが入室してきた。

「カイ様。ご来客です」
「誰がここに?」
「ご友人でありますドワーフのマシュー殿夫妻でございます」
「分かった。通してくれ」

カイの一言にセバスは一礼した後に部屋を退出した。
その数分後、焦燥状態のマシュー達が入ってきた。

「カイ!無事だったか!!」
「ええ。町の方は負傷兵でごったがいしてるけど、この町は大丈夫だった」
「そうかい…それならよかったわい…」
「えらい慌ててる様子ですが、何かありましたか?」

ミリーの一言にマシューは目を開かせながら声を出した。

「あの連合軍と王国の同盟軍を襲った奴!南の穀倉地帯どころか魔族国の領土にも襲って来たんじゃ!!」
「何だって!?」
「おかげで、儂が南に新しく立てた工場町が壊滅、幸いフリーデンには被害は無かったものの…新しく雇った従業員は全員死んでしもうたわい…」

マシューはそう述べた後に頭を抱え、嗚咽を漏らしながら泣き出した。

同盟であった魔族国にも襲撃した奴が現れ、マシュー達が新しく作った工場町が壊滅…
事態はかなり深刻なものであった…

「…一度出向いて、調べる必要があるか」
「その必要はないよ。手土産に、これを見てくれないか…?」

マシューに付き添っていたピアジェが、そういいながらカイに記録型魔導具の水晶を差し出してきた。
カイの代わりにミリーが水晶を受け取り、映像記録を再生した。


…そこに映し出された内容は、あまりにも過酷なものであった。


軍需工場ながらも平穏な町並みで、兵器の製造以外は至って平和であった。
しかし、映像を再生してから五分ぐらい過ぎた頃に町から西の方角にて巨大な爆発音と共にキノコ雲が上がり、西の草原地帯が火の海に包まれた。
そして、その三分後に…奴が高速で飛行しながら町に襲来した。

その飛行速度は連合軍の戦闘機よりも何倍も早く、飛行翼から人型に変形した奴は背中に収納された翼部分から大型の棒状物体を数基噴射させ、工場に命中させた。
爆発物が命中した工場は大爆発を起こして炎が激しく燃え広がり、辺りが阿鼻叫喚になった。
爆発と炎で逃げまどう従業員と住民達を前に、武装した警備隊が守備用に備えていた数十台の軽戦車と銃火器を持って奴に向かって応戦、発砲を行った。

戦車にあった機関砲と重機関銃、民兵達が持っていた軽機関銃や詩作型の自動小銃を使って空に浮かんでいた奴に弾が放たれた…
だが、彼らの放った弾は虚しく通りすぎるかの様に、奴は高速で飛行移動をしながら彼らの弾を軽々と避け、反撃するかの様に腕らしき部位から機関銃状の物を出現させて発砲し、民兵と戦車達を次々と命中させていった…

奴の攻撃により負傷した民兵と戦車は撤退しようとした時、奴は形状を変型させ…飛行翼の後ろから数基の砲身が出現したと同時に逃げまどう住民もろともに町へと銃口を向け、青緑色の光線が一斉に放たれた…

その光線が掃射自体は一瞬であったが、まるでスローモーションに再生されるかの様に光線の浴びた物全てが、飴細工が火で炙られ膨れて溶けるかの様に崩れ、消えていった…

鋼鉄で出来た戦車…

新技法で作られた鉄筋とコンクリートで出来た建物…

そして、幾つもの亜種族で構成された住民…

その全てが、たった数秒で放たれた光線によって溶かされ、有り余った熱量によって光線の着弾点から巨大な爆発があがり、町全体が火の海に包まれた…

燃えさかる町に残ってるのは奴だけで、業火に包まれる町を冷徹のような無表情で眺めた後、襲来したときと同じ飛行機形態に変型し、飛び去っていった…




映像の再生が終わってもなお、映像を見終わったカイ達は言葉出ずに沈黙が続いた。

「なんですか…これ…一体、何なの…」

最初に沈黙を破ったのは、ティファだった。
あまりの衝撃な内容に、憔悴して震えるばかりであった…

「ティファ様…」
「こんな…私達が異界人達が残した技術をやっとの思いで作り上げた物が…こんな簡単に破壊できる化け物がいるなんて…あの飛行機のレシプロとは違う空を飛ぶ技術は何!?あの熱光線は何!?訳が分かりません…こんなの…」

錯乱するティファをコレットが宥めていたが、持ち込んできたマシュー夫妻以外のその場にいた全員が動揺を隠しきれなかった。

ただ…

「…戦略人形ドールズ?」

影像を見たカイは無意識に呟き、戦略人形という言葉を聞いたミリーもまたカイを無意識に見つめていた…

「カイ様…?今の戦略人形って…」
「分からない…あの兵器人形を見て、いきなり言葉が出たんだ…」
「…カイ。私も同じだよ…何か、頭の中で駆けめぐって…カイのその言葉に…あれ?なんで…涙が出てるの?」

カイとミリーは無意識に涙を流しながら、あの影像のことを呆然と考えていた…

まるで、魂の奥底に眠る記憶が呼び起こすかのように…








「邂逅したみたいね…さすが、あの人の転生体。魂が完全に分解し、無に帰してもなお、魂に刻まれた記憶は呼び起こすみたい…これはこれで面白い結果ではあるわね」

カイ達の様子を立体モニターで眺めていたベルフェゴールは、そう呟きながら椅子に腰掛けて満足していた。

「次は、どの一手を考えようかしら…?いきなり勇者にあの子…仲介者メディエイターをぶつけるわけにはいかないわ。加減が利かずに殺してしまうもの…そうなると、あの二人がこの世界をリセットしてしまうからね。かといって、北に向かってくるあの子は…」

ベルフェゴールはそういいながら楽しそうに笑い、ウキウキしながら組んでいた手を動かしていた。

そんな悪魔彼女を余所に、一体の悪魔が音を立てずに魔法陣を展開させ、ベルフェゴールの前に現れた。

「怠惰よ!これはどういうことだ!?私の大事な穀倉地帯ごと焼き払い、我が信仰の民を無差別に虐殺させるとは!!」

蠅の悪魔…暴食の悪魔ベルゼブブは激しい怒りを見せ、ベルフェゴールに対して敵意を露わにした。
しかし、ベルフェゴールはそんなベルゼブブの事は存在しないかのように無視し、次の計画を考えていた。
それに苛立ちを覚えたベルゼブブは、ベルフェゴールに疫病の瘴気を展開させてきた。

「…何?狭蠅さばえ如きが何のよう?」
「貴様…同じ神格のくせに、儂を愚弄するつもりか?」
「神格…ああ、そういう設定だったわね。忘れてた忘れてた…」

ベルフェゴールはそういいながら気怠そうに立ち上がり、手に持っていたスイッチを押した。
それと同時に部屋の空気が抜かれていき、北の極寒冷気が満ちた外気が入り込んできた…
それと同時に、崩壊コラプス原石タイトに汚染された大地の空気も混じり、元より耐性のないベルゼブブは放射能汚染と冷気が混じった空気に悶え始めた。

「き、貴様…!?何をして…」
「ああ、ごめんごめん。貴方には耐えきれなかったわね。人形でもない、昔の魔族から複製された人造生命体如きに。本物の大地の空気に耐えきれなかったわね」
「な、なん…だと…?」
「だから、傲慢ルシフェル憤怒サタン以外の神格を持った悪魔は、ただの神モドキとして作られたモブ役者に過ぎないわ」

そういいながら、ベルフェゴールが手を挙げたと同時にベルゼブブは何者かに頭を踏みつけられ、跡形もなく潰れた。
それと同時に、青緑色の髪の女型人形…仲介者が大きな蝿の死体から静かに離れ、ベルフェゴールに敬礼した。

「帰還いたしました」
「ご苦労様。どうだった?初めての世界は?」
「ゴミが多くて話になりません。北にいる虚無の奴らと相手している方がやりがいがあります」
「そうは言わないであげて。あれでも、傲慢…いえ、ウロボロスを司る彼奴が考えた舞台劇の世界なんだから、もう少し有意義に考えないと…」
「マスターがそうおっしゃられるのでしたなら、そういたしましょう」
「ええ。とりあえず、次の命令があるまでは…虚無の奴等と遊んできても良いわ」
「…感謝の極み」

仲介者はニヤリと笑った後に静かに消え、それと同時に北の大地から震動が走り始めた…

「はしゃぎすぎてるわね。運動不足もあまりよろしくないわね」
「それは困ったものですな。じゃじゃ馬娘過ぎて、ああ…なんというか、品がない」

何事もなくスッと音を立てずに現れた傲慢ことルシフェルは、不適な笑みをさせながらベルフェゴールに近付いた。

「何か問題かしら?」
「いいや。何も」
「そう。して、何処まで気づいてるのかしら?」
「君とは憤怒の次に長い付き合いだからね。あのお方の御使いとして、無駄に長い永劫回帰の中で生きてきたのだから、実に退屈で極まりない。だが、君は憤怒とは違う結末を導き出して、実に楽しみでならない」
「…そう。期待に添えるようにしておくわ。それと…」
「ああ…そろそろ、役目を終えた演者は退場と致し、次の幕劇へと向かおう…」

ルシフェルは手をかざすと、転がっていた蝿の死体を跡形もなく消し去り、同時に音を立てずに消えていった。

後に残ったベルフェゴールもまた、静かに部屋から出るように消えていき、汚染物質が混じった冷たい外気と染みと化した血痕だけが残り、それもまた時間が経つ毎に徐々に消え、誰も居なかったような元の綺麗な部屋へと戻っていった…




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