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39 新装備とドワーフ殺し

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まだ開店前だが、俺達は厨房で賄いセットとランチのサラダの準備中

サラダはフィリアンが、賄いセットは俺が作ってる。

カレー、うどん、パン棚に色々なパンを並べておく

米は10キロ炊く

ハンティとアラシャは掃除中

掃除に関しては文句を言わなくなった・・・仕事ができるようになってハンティに注意される事も無くなったからか?

それにしてもみんな順調に仕事を覚えてきたなぁ・・・

次のステップに移る前にもう一度レベリングに連れていきたい・・・

今日の夜にでも希望者募ってみるかな・・・



開店前に堂々と入ってくる人影・・・

「来たな・・・」

そう、世界は俺を中心に回ってるってのを地で行ってるあの男

勇者カズキと愉快な仲間たちである。

「ハルおはよ~」
「朝は和食を希望したい」
「イイネ!」

「あぁ、おはよ、席に座って待ってて」

そう言って厨房に入った。

勇者のメニューは、焼き鮭、出汁巻き卵、味付け海苔、みそ汁、漬物、ほうれん草ののおひたし、納豆である

あえて生卵は除外、出汁巻きがある以上卵の摂り過ぎは高コレステロールの原因になりえる

学術的にもデマって言われてるがコレステロールを多く含む食品っていうのは間違ってない

まぁ、俺の料理はこの世界の料理に比べても栄養価が高いからバランスを重視するって姿勢は貫きたいところである



テキパキと料理を用意する俺

ジーっと見ているアラシャの視線が痛い・・・が初日のような殺すって感じの目じゃなくなってる気がする。

どちらかといえば俺を値踏みする・・・そんな感じに取れる。


ご飯を盛りトレーに一式乗せると近くにいたアラシャとフィリアンに声を掛ける

「勇者の飯ができたからアラシャとフィリアン運ぶの手伝って!」

え?なんで私が?って顔をしてるが、フィリアンに促されて取りに来る

フィリアンが二人分、アラシャが一人分をゆっくり運んでいく


「なんだ、アラシャ大丈夫じゃん」

運んでる様子を見ながら俺は呟いた。


開店準備も終わった所でみんなに声を掛けて朝食にする。

今日は勇者と一緒の和食メニューだ。

箸の使えない子もいるのでフォークとスプーンは付ける

各自自分で取りに来させ配膳を済ませる

「では、、あまねく神々に感謝をしこの食事を頂きます」
「「「あまねく神々に感謝をしこの食事を頂きます」」」

初めての和食だったが、みんな喜んで食べている。

「勇者様方と同じ食事なのですが・・・」と心配そうに言うサキ

「ん?そうだけど問題無いからしっかりお食べ」

カズキ達は厨房にコメのおかわりを自分で盛ってきてる

うん、出汁からとった俺の味噌汁は絶品だな。

ごくごく普通の豆腐とワカメなんだが、これが美味いんだわ

そんな感じで楽しい朝食の時間が過ぎていく。

全員食べ終わったら食器を流しに持って行きフィリアンとの発声練習だが、今日の俺はカズキとOHANASIだ

「ハル、言ってた弓3人分と防具3人分」

そう言って渡される弓





そこそこ重量があるが決して取り回しにくくは無い

サイズ感も和弓のようなロングボウよりかなり短くショートボウより長いそんなサイズのコンパウンドボウ

ドヤ顔のカズキに説明を求めるか・・・

コンパウンドボウから説明が居るか?

両端の楕円形の滑車がてこの原理?で引く力を増加させて滑車が一旦泊まるところで張力が一番高まる構造になっている
張力が高いって事は放たれる矢の威力や飛距離も上がるって事だ
構造で引く力を増幅して放つ強力な弓なのだ
ライザーと呼ばれる持ち手の両端にリムという滑車を取り付ける部品があり
滑車を取り付けて弦を張るのだが、射出用の弦と滑車をシンクロさせ、力を増加させる弦もあり張られた状態は結構複雑だ。


そんで、カズキの持ってきた弓なんだが・・・

「凄いだろ!これはドラゴンブレイカーという名前で・・・」って感じでカズキが説明を始めたら
「ワオ!とても強そうな名前ね」フィリアンが乗っかってきた・・・
「そうだろう!素材の中にドラゴンから取ったものもあるからね」
「カズカズはドラゴンも倒したの?」
「HAHAHAHAHA!レッサードラゴンなんて俺の敵じゃないね」
「Oh!それは頼もしいわ」

ノリノリだな・・・フィリアン

「では各部品の素材から説明しよう」
「是非教えていただきたいわ」
「まずはライザー、持ち手であり、力が集中する部分なので剛性の高いオリハルコンを使用さ」

・・・はい、まさかのオリハルコンが来ました、確かに合成もあるし硬さだけじゃなくしなやかさもある金属だ

厚さにもよるんだろうが・・・

「そして、リム、ライザーと滑車を接続する部分で、高い張力が掛かる部分なので硬さを重要視し アダマンタイトを使いました」
「ワオ!硬度だけならダントツの硬さを持つアダマンタイトをこの部分に!?なんて贅沢なの?」
「喜んでもらえてなによりだよフィリアン」
「カズカズ、これはあまりに凄すぎるわ」

「これで驚いちゃ駄目さ、次は滑車だ。弓の両端につけられられている滑車、
今回はPOWERMAX カムを採用楕円形の滑車をひき軸に合わせてシンクロさせている
材質はアダマンタイトだ!そう簡単に壊れる代物じゃないぞ!」

「Oh!ドラゴンが踏んでも大丈夫そうね」

「そして目玉は何と言ってもこのストリング!弓の弦の事なんだが、
なんとレッドドラゴンとブラックドラゴンの髭をそれぞれ2本ずつ組み合わせた弦なのだよ!強力な力が加わるとその力に合わせて収縮する新素材だから弓の弦として特にコンパウンドボウには最適なのさ」

あかん・・・こいつらなんちゅうもんを・・・つくってくらしゃりましたか・・・

俺の思考が半分壊れかけたわ!

「流石勇者カズカズ、素晴らしい素材ね!でも、いくらなんでも値段が高いんでしょ」

「HAHAHAHA!大丈夫、こないだのレベリングの素材は全部僕が貰ったからねお値段は無料!」

「そんな!こんな伝説の武器クラスが無料?」

「それだけじゃないぞフィリアン、マジックバックの応用で弾数収納無制限の矢筒のおまけつきだ!最初から収納さえしておけば5本の矢が常に矢筒にあるという優れもの」

「Oh・・・もう言葉も出ないわ」

「そして本日は、このドラゴンブレイカーをさらに小型化、2/3サイズに縮小したドラゴンブレイカーミニも2張!ミニの方にも矢筒が付くという大サービスだ!」

そりゃすげぇぇ・・・が

「まだその流れ続けんのか?」

「いや、もういい、楽しかった」

そう言って俺に弓と矢筒を渡すとインベントリから鎧を3組取り出す。

パット見、鎖帷子の上に補強用の皮鎧のパーツをつけた鎧

だがこれは・・・!

「気付いたか、これはミスリル製の鎖帷子にレッドドラゴンレザーアーマーのパーツを付けた特注品だ」

ミスリルの鎖帷子は伸縮性もあり消音性にも優れている防具、それにレッドドラゴンの皮鎧

今まで使ってた防具とは根本が異なりそうだ。

「こいつも3人分作ってきた。遠慮なく使ってくれ」

カズキはそう言って俺に押し付けると笑いながら出て行った。


ミスリルチェインドラゴンレザーアーマーってとこか・・・

あのアフォな深夜の通販番組モードを見たせいかツッコミを忘れていたが、

「先生!この武具おかしいですよね!」

ってまたも心の中で叫ぶ俺が居ます。

色々とおかしすぎる・・・・

「俺達を何と戦わせる気なんだ?」


そう思いつつ俺は武具をインベントリにしまい仕事に戻った。


オープンと同時にフォーセリア公爵の使いと名乗る商人が来る。

「フォーセリア公爵様からご注文のテーブルと椅子をお持ちしました」

「はい、伺っておりますが、品物はどちらに?」

そりゃ聞くよね・・・一応は・・・

「マジックボックスに入れてきましたのでご安心ください。設置場所までお運びいたします。」

との事なので2階に案内して設置してもらう。


大理石の大きなテーブル・・・何人のお茶会を想定してるんだ?ダンパの時はインベントリに戻すやり方なのか?

品のいい座り心地のよさそうな椅子、これだけでも『おいくらまんえん?』って聞きたくなるくらいだ。

そんな事を思いつつ、商人の出す用紙に受け取りのサインをする。


「絨毯やカーテン、シャンデリアの方もご注文受けているのですが、完成までいましばらくかかりますのでご了承くださいませ」

「はい、わかりました、ありがとうございます」


受け取りが終わると商人はそそくさと帰っていった。


その後は次の休みに意識が向いている、カズキから貰った弓の性能が知りたいのだ・・・

弦を引く限り相当なステータスが必要な弓だってのは理解できた。

放たれた矢がどれほどの威力になるのか・・・今の段階では想像もつかない。

ソロでレベリングでもいいんだが・・・着いて来るんだろうな・・・


新装開店してから結構忙しく働いてるんだ、あの子らも疲れてるはず

できればきっちり休ませたい。

そんな思いもあって一つ計画を練るのだった。

そんな事を考えながらも忙しい日は過ぎていった。


その日の夕方、仕事を終わらせたドワーフ達が飲みに来た。

この建物で一儲けを出し、長屋の方も終わってようやくゆっくりできるって感じの面々だ

「親方達、いらっしゃいませ」
「あぁ、広くなったが雰囲気は変わらんな」

そう言いながら店内を見渡しカウンター席に座る。

「今日は喉が焼けるほど強烈な奴が飲みたいぞ」
「そうだな、ここが休んどる間、温いエールか気の抜けた火酒しかなかったからの」
「そうそう、ありゃ飲んだ気がせんかった」
「ありますよぉ、強烈な奴が」

そう言って俺は笑う

元々考えてたのだ、業務用の角瓶で駄目だったらこいつを飲ませようって思ってた奴が

その名は『スピリタス』

ポーランド原産のウォッカで、アルコール度数は驚きの96度

日本では第4類危険物(ガソリンと同類)に分類される俺が知る限り最強の酒だ

「まぁ試していただきますか」

そう言ってウィスキーグラスにワンフィンガー

氷もいれずに常温ストレートである

これでドワーフを潰せたら、銘酒「ドワーフスレイヤー」の名を与える事にしていた(笑)

「ほっほ~、こりゃぁ効くのう・・・鼻から喉から脳天に突き抜けるわい」
「いやいや、まだまだじゃよ、もう一杯今度は3倍くらい入れてくれ」
「むぅ、これは少しばかり舐めてかかっていたようじゃ」

・・・強いな・・・さすがドワーフだ・・・スピリタスすら歯が立たないのか?

三人にスリーフィンガー、(グラスの底から指三本分)入れてお出しする。

ちなみに今日のお通しツマミはナンコツの唐揚げだ

「ほっほっほ、これは気持ちええのう」
「初めて火酒を飲んだ時よりフワフワするぞい」
「これでこそ酒ってもんじゃわい」

「「「とりあえずおかわりで」」」

脳内によぎる完敗の文字

とはいえ、いつもと様子の違うドワーフの姿を見てツーフィンガーに抑えてスピリタスを出す。

「新たなミスルトウにかんぱ~~~~い」
「かんぱ~~~~い」
「乾杯じゃぁ」

陽気なドワーフ達である。
他のお客様の注文が入り少し目を離したら、ドワーフ達はカウンターテーブルで眠りこけていた

・・・時間差だがドワーフにも効くんだな・・・恐るべしスピリタス・・・

そしてミスルトウに新たな名物「ドワーフスレイヤー」通称『ドワスレ』が誕生した

それから数日の間、毎日のように親方たちはやってきて「ドワスレ」を注文してテーブルで寝るというパターンを繰り返した。

ここまでウケるとは正直思わなかったが、ドワーフの好みにクリティカルしたようだ。

勇気ある冒険者が『ドワスレ』に挑戦するも、無残に敗れ去り運ばれる姿がドワーフの強さを際立たせていた。


まぁ、ヒューマンにウィスキーグラスで出した俺が一番の原因なんだが・・・

そう、この酒はショットグラスで飲むのが一般的である・・・

ドワーフ相手に調子に乗った俺が一番の戦犯である・・・


ただ、親方が嬉しそうに瓶ごと一本買っていったんだが、誰に飲ませる気なんだろうか・・・

こうして今日も夜が更けていく・・・



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