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第二章 アルメリアでの私の日々
知らなくても、ずっと前から(3)
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彼への感情に蓋をして瞳を開ける。
「ギル、アルメリアに戻る方法は馬車しかない?」
戻らなければいけない。転移魔法でいなくなったことで、行方不明として騒がれているかもしれないし。マーガレット王女の状態も気になる。
ガラスの破片でいたるところを切ってはいるが、幸いにして出血は少量で動く分には問題ない。
「いいや、もっと早く着く方法がある」
ギルバート殿下は私から少し離れて指を鳴らした。途端、部屋の中央の床に青い魔法陣が浮かび上がる。
「……転移魔法ですか」
「ああ、アルメリア魔法学校に繋がってる」
「えっ」
主に貴族が通う学校なので、セキュリティが高いはずなのだけれど。
「流石に理事長から許可は取ってあるよ」
「……交流があるから?」
「どこまでシアに話したのかは知らないけど、年に何度か会ってるからね。馬車移動はめんどくさいし、目立つから直接飛ばさせてもらってるんだ」
「私が使ってもいいの? 怒られないかしら」
「平気さ」
なら、さっさとお暇しよう。本来、私は婚約者とはいえ王族であるギルバート殿下の寝室に居ていい人間では無いのだ。それに、アルメリアに滞在しているはずの私がここに居るのはおかしい。
寝台から降りようと体を動かしたところ、邪魔される。
頭にクエッションマークが何個も浮かび上がっている間に、ぐいっと引き寄せられ、そのまま視界が高くなる。
「……ギルっ!?」
あっという間に抱き上げられてしまった。ロマンス小説でしか登場しないようなお姫様抱っこだ。
(なっなんで!?)
「シアは一人で帰るつもりだよね」
「それ以外になにか……ある?」
「一人では帰らせない」
ということはつまり、誰か伴をつけるということだろうか。
「護衛の騎士はあちらにいますよ?」
今回ばかりは役に立たなかったが、普段は陰ながらきちんと身の回りの安全を確保してくれている優秀な騎士だ。
「違う」
ギルバート殿下は私を抱き抱えたまま陣の上に立つ。
「──今日はもうシアから離れないよ。アルメリアに戻りたいなら送ってあげるけど、私も一緒に行く」
「えっっっ」
(ギルバート殿下、頭打ったのかしら)
そうとしか思えない。いや、だって、彼の服装からしてそこそこ大事な公務があったはずなのに、それを放り出し、あまつさえついて行くなどと発言するものだから。
頭を打っておかしくなったと考えた方がしっくりくる。
「シア、今変なこと考えているね」
「いいえ!」
私の反応は正常だ。ギルバート殿下が変なのだ。
「ギルの周りの人は、あなたが急に消えたら困るわよ?」
「父上には話してきたからほかの者の指図など聞く必要は無いね」
バッサリ切られてしまった。意思は固く、残るよう説得するのは徒労に終わりそうである。
(私の残存魔力量だと転移魔法を使うのは心許ないし)
残っているのは最大量の四分の一程度。切羽詰まっていない限り、温存しておきたい。
となると、やはりギルバート殿下の手は必要で。
「…………ギル、私だけを送るのは」
「──しない」
「…………」
私は頭を抱えたくなるのをこらえて、考えることを放棄した。
(もう知らない。責任は負わないんだから!!!)
過保護だなと思っていたけれど、まさかここまでとは思っていなかった。下手したら私が死ぬところだったから、今だけ極端に過敏になっているのだろう。そうに違いない。
婚約者に秘密で守護魔法やら転移魔法やら施してしまうくらいだし。
「……せめて下ろしてくれない?」
この状態で転移先に人がいたら恥ずか死ぬ。
「怪我だらけなのに? 下ろすわけないよ。グダグダしていても無駄だから行くよ」
反論するより前に、ギルバート殿下は問答無用で転移魔法を発動したのだった。
「ギル、アルメリアに戻る方法は馬車しかない?」
戻らなければいけない。転移魔法でいなくなったことで、行方不明として騒がれているかもしれないし。マーガレット王女の状態も気になる。
ガラスの破片でいたるところを切ってはいるが、幸いにして出血は少量で動く分には問題ない。
「いいや、もっと早く着く方法がある」
ギルバート殿下は私から少し離れて指を鳴らした。途端、部屋の中央の床に青い魔法陣が浮かび上がる。
「……転移魔法ですか」
「ああ、アルメリア魔法学校に繋がってる」
「えっ」
主に貴族が通う学校なので、セキュリティが高いはずなのだけれど。
「流石に理事長から許可は取ってあるよ」
「……交流があるから?」
「どこまでシアに話したのかは知らないけど、年に何度か会ってるからね。馬車移動はめんどくさいし、目立つから直接飛ばさせてもらってるんだ」
「私が使ってもいいの? 怒られないかしら」
「平気さ」
なら、さっさとお暇しよう。本来、私は婚約者とはいえ王族であるギルバート殿下の寝室に居ていい人間では無いのだ。それに、アルメリアに滞在しているはずの私がここに居るのはおかしい。
寝台から降りようと体を動かしたところ、邪魔される。
頭にクエッションマークが何個も浮かび上がっている間に、ぐいっと引き寄せられ、そのまま視界が高くなる。
「……ギルっ!?」
あっという間に抱き上げられてしまった。ロマンス小説でしか登場しないようなお姫様抱っこだ。
(なっなんで!?)
「シアは一人で帰るつもりだよね」
「それ以外になにか……ある?」
「一人では帰らせない」
ということはつまり、誰か伴をつけるということだろうか。
「護衛の騎士はあちらにいますよ?」
今回ばかりは役に立たなかったが、普段は陰ながらきちんと身の回りの安全を確保してくれている優秀な騎士だ。
「違う」
ギルバート殿下は私を抱き抱えたまま陣の上に立つ。
「──今日はもうシアから離れないよ。アルメリアに戻りたいなら送ってあげるけど、私も一緒に行く」
「えっっっ」
(ギルバート殿下、頭打ったのかしら)
そうとしか思えない。いや、だって、彼の服装からしてそこそこ大事な公務があったはずなのに、それを放り出し、あまつさえついて行くなどと発言するものだから。
頭を打っておかしくなったと考えた方がしっくりくる。
「シア、今変なこと考えているね」
「いいえ!」
私の反応は正常だ。ギルバート殿下が変なのだ。
「ギルの周りの人は、あなたが急に消えたら困るわよ?」
「父上には話してきたからほかの者の指図など聞く必要は無いね」
バッサリ切られてしまった。意思は固く、残るよう説得するのは徒労に終わりそうである。
(私の残存魔力量だと転移魔法を使うのは心許ないし)
残っているのは最大量の四分の一程度。切羽詰まっていない限り、温存しておきたい。
となると、やはりギルバート殿下の手は必要で。
「…………ギル、私だけを送るのは」
「──しない」
「…………」
私は頭を抱えたくなるのをこらえて、考えることを放棄した。
(もう知らない。責任は負わないんだから!!!)
過保護だなと思っていたけれど、まさかここまでとは思っていなかった。下手したら私が死ぬところだったから、今だけ極端に過敏になっているのだろう。そうに違いない。
婚約者に秘密で守護魔法やら転移魔法やら施してしまうくらいだし。
「……せめて下ろしてくれない?」
この状態で転移先に人がいたら恥ずか死ぬ。
「怪我だらけなのに? 下ろすわけないよ。グダグダしていても無駄だから行くよ」
反論するより前に、ギルバート殿下は問答無用で転移魔法を発動したのだった。
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