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騎士とミサンガ
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しおりを挟むクラウスの話 王都編⑩ ~ 討伐遠征 その1 ~
王都を立って20日、討伐部隊は整備された街道を外れた山の中にいた。
馬車に荷物を積んで移動できるのは王都から馬で3日ぐらい走った山の麓までだ。その麓の毎年世話になる牧場主の家に一泊させてもらい荷を積んできたキャリッジを預ける。まともな食事はここまでだ。
麓からは馬の背に直接荷を積んで騎士隊は徒歩で最初の拠点を目指し丸1日歩く。
その後は一箇所の討伐が終るごとに拠点を移していく。
全ての王国民が安全な街やその近辺に住んでいる訳ではない。
自分の職に合った土地を求め街から離れた場所に小さな集落をつくって生活する人々も沢山いて大半が農作物を生産し生計を立てている。
おかげで自分達の口にもその恩恵が受けられるのだ。
しかしながらやはり王都や領主が管理する街に比べると棲み分けた筈の魔獣から近く、山の恵の減る冬場に入る頃境界を越えた奴らが被害をもたらすことがある。
雪深くなってしまえば大人しくなるので被害の出る前に山奥へ追い立てる。引かないものは駆除もする。それが討伐遠征に任された仕事だ。
3隊合同にするのはちゃんと理由がある。剣で戦う攻撃方の赤騎士と魔法で戦う防衛型の青騎士。赤騎士の中にも魔法を併用するものが多いけれど、青騎士は索敵や補助魔法に秀でたものが今回特に選抜されている。森の中に潜む魔獣をうち漏らさないためだ。
少数精鋭で行うはずの部隊に未熟な黒騎士を入れるのにも理由がある。まずは王都の治安維持それから後継の育成。それからお互いが無茶をしないためでもある。
30人の部隊はバランス良く5つに編成されサポートと討伐入れ替わりながら任務をこなしていく。
俺は小隊をひとつ預かることになったが、セオはオースター団長の小隊に入っていた。
最初の拠点から集落からの目撃情報を元に討伐をこなしていき昨日で7箇所目の討伐が完了した。
そして昨夜の作戦会議の時だった。
「いやぁ今年は魔獣の目撃情報が多かったから心配したが明日の森の討伐が終わったら王都に帰れるぞ!まあ、何よりクラウスの働きが大きいけどな。」
「クラウス様はちゃっちゃと終わらせて可愛子ちゃんの所に早く帰りたいんだもんな~。」
オースターの言葉にキールが茶々を入れ、他の奴らも笑ってるが相手にしない。まあその通りだしな。
それにトウヤは俺のだって知られてたほうが手を出す奴もいないだろう。
「だからと言って気は抜くなよ!明日の奴が最後だが報告によれば今までで1番でかい熊型の魔獣だ。しかも2体だ。皆明日は改めて気を引き締めろ。王都に無事帰るまでが俺たちの仕事だぞ。」
「「「はい!」」」
会議が終わったところで小隊別に建てられたテントに各々戻ってゆく。この雑魚寝もあとわずかで終るかと思うと嬉しい。
ふと、別のテントに向かうセオと目があった。
「体は大丈夫か?」
「は、はい。ありがとうございます。大丈夫です。なんだか遠征前より調子がいいと思うくらいです。訓練が無いからですかね?」
相変わらず俺の前に来ると緊張した素振りを見せるが近頃は最初の一瞬だけになった。
「そんな軽口が出るなら大丈夫だな。でも団長が言ったとおりだ、無理はするなよ。お前が怪我したら叱られそうだ。」
「はい、気を引き締めて頑張ります。あ、あの……トウヤさんの休み、3日でいいんですか?俺なら別にいいですよ。特に行くところも無いしその分訓練の相手をしてもらえれば!」
「何言ってんだ。それじゃあお前の休みが無くなるだろう。それに子供達にとっては3日だって多すぎるくらいだろ。でもありがとな。」
トウヤが『桜の庭』を休むためにはセオの協力無くしては成立しない。18才らしい顔ではにかむセオの肩をぽんと叩いて就寝を促した。
トウヤといいセオといい、俺が18の時にはあんなに他人を気遣えてはいなかったな。昔の自分を振り返ると割と反省しか無い。トウヤには知られたくない事ばかりだ。
セオにあんな事を言っておきながら戻ってからのことをつい考える。
だって仕方ないだろう。
見送りに来たトウヤに魔力を通してもらってから、夜になると左耳のピアスがほんのり熱を帯びる。
そして無色のはずの石が桜色に煌めく。
色の変化に最初に気付いたのがキールだって事が癪に触るけれど鏡で確かめたその桜色が花のように笑うトウヤを思い出させた。
毎夜大体同じ時間。トウヤの事だから寝る時にブレスレットに話しかけていそうだ。
明日から始まる最後の討伐を終わらせれば王都に帰る。感じた熱にピアスを撫でて寝袋に入ればセオと同じでやたら調子のいい体はすぐに眠りについた。
けれどそれは起きてしまった。
決して誰一人気を緩めたわけではなかった。相手が大物なのもわかっていた。だけど報告より更に一回り大きくなった魔獣は5体いた。
目の前に現れた1体を切伏せて近くにいたオースターの小隊の援護に向かった俺が目にしたのは崖に追い詰められたセオが魔獣の鋭い爪に胸を切り裂かれ落ちていくところだった。
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