迷子の僕の異世界生活

クローナ

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変わる環境とそれぞれの門出

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昨日セオのおかげで今日の分の掃除をやりきったから洗濯さえ干してしまえばお昼まで手が空く。そうしてみんなの、特にマリーとレインのやりたいことを優先しようと思っていた。

庭へ向かえば子供達は輪になって話し込んでいて俺に気付くとサーシャがディノとこちらへ走ってきた。

「ゆうびんでーす。とおやにまりーとれいんからおてがみですよ。」

可愛い郵便屋さんから差し出された封筒を開くと中の用紙にはただひと言『ベンチの下』と書いてあった。

「なんてかいてあるの?」

「べ…ベンチ?」

小さい子組が集まって一緒に俺の手元を覗き込みロイとライは書かれた文字を読み取ろうと頑張っていた。年長のふたりは元の場所に留まったままこちらの反応を伺っている。
どうやらこれはマリーとレインが仕込んだ宝探し。思わぬサプライズに俺のほうがワクワクしてしまった。

「ベンチの下だよ、一緒に探して?」

それからもエントランスの花瓶のドイリーの下や、二階の廊下に飾られた絵画の裏、子供部屋のタンスの引き出しの裏やキッチンの棚の扉の内側。こんなに沢山一体いつ仕掛けをしたのかと感心しながら手紙に導かれ先導するサーシャとディノの後からロイとライに手を引かれ『桜の庭』中を歩き回った。

『ノートンさんの好きなところを本人に伝えてください。』

1刻近く歩き回ったところでそんなお題を貰ってノートンさんを探し回ればマリーとレインと最初のベンチに三人で並んでお喋りしていた。

「のーとんさんすき!」

俺なら間違いなく腹部にダメージを食らう勢いで走り寄り飛び付いたサーシャを柔らかく抱きとめると同じ様に飛び付いたディノも膝に抱き上げた。お爺さんと言えど俺より力強くて羨ましい。

「適当な答えじゃ次の手紙あげないわよ。」

「てきとうじゃないもん。さーしゃ、のーとんさんだいすきだもん。」

「でぃのも!」

マリーの言いがかりだと言わんばかりにぎゅうっとノートンさんにしがみつくふたりに続いてゆっくり近づいた双子はそれぞれにノートンさんの大きな手を握った。

「ろいはのーとんさんのやさしいてがすき。」

「らいも。いきがくるしくてものーとんさんがせなかとんとんしてくれたらあんしんするから。」

ノートンさんは金色の目を細めてロイとライの手を優しく握り返した。

「私は勉強を教えてもらうのが好き。ここに来るまで魔法は使ったことなかったけどノートンさんに教えてもらって出来るようになったの。」

小さい子組に続いたのはマリーだった。俺達へのお題だと思ってたけれどどうやらそれだけではないみたいだ。

「俺は全部。」

「それズルい、ディノ達と一緒じゃない。」

「しょうがないだろ。本当の事なんだから。」

ふたり共ほっぺを赤くして照れている。そっか、ノートンさんに気持ちを伝えたかったんだね。

「ねえトウヤは?」

早く言いなさいよと言いたげに赤い顔で唇を尖らせているけれど主役達に最後を飾って欲しかったのに割り込まれたのは俺の方だ。勢いで続こうと思っていたから改まってしまうと俺だって恥ずかしい。

「僕もノートンさんの大きな手が好きです。」

不安な俺の背中を撫でてくれて、いい子だねって褒めてくれて、そして俺の嘘も失敗も全部許してくれる大きくて優しい手が。

「ありがとう。わたしもみんなが大好きだよ。」

みんなからの告白に優しい笑顔でこたえてくれたノートンさんの金色の瞳が少しだけ潤んでいた。

「……初めて聞いた。」

ノートンさんの言葉に隣で座っていたレインが嬉しそうに笑った。

「確かに言葉にするのは初めてかも知れないね。でもいつも心から君たちを愛してるよ。」

大きな両腕で全員を抱き寄せているノートンさんと子供達の幸せな風景を俺も一緒に抱きしめてもらっているような幸せな気持ちで眺めているとロイとライが手を伸ばして俺を引き寄せてくれた。

「もちろんキミもだよトウヤ君。」

「はい。」

のけ者だなんてもちろん思ってない。でもいくらノートンさんの腕が長くても流石に俺までは無理だ。それでも俺まで招き入れてくれたみんなの心が嬉しくて泣いてしまいそうだった。

そして最後の手紙はノートンさんの胸ポケットの中から出てきて中から黒と深緑と薄紫の刺繍糸で編んだ長いミサンガが出てきた。

「それは私達からトウヤに。」

「ちょっと不格好だけどお菓子の包みのやつよりマシだろ?」

「気付いてたの?」

「結んであげるからここに座って。」

「うん。」

マリーから譲られたノートンさんの隣に座らせてもらうと後ろに回ったマリーが俺の髪を結んでいたリボンを解いた。

「随分伸びたね。それにしてもお菓子についてたリボンを使ってたのかい?」

「結べるなら何でも良かったんで。」

伸びたと言ってもたかが半年。それほどでもないけれど仕事をするにはちょっぴり邪魔で工作用に貯めてあったお菓子のラッピングから丁度良い長さのを一つもらった。

『桜の庭』の中だけの事だから気にならなかったけど気付かれていたのは少し恥ずかしい。

「はい、出来た。」

マリーが俺の肩をぽんと叩いてくれたので触って見ると綺麗な蝶々結びになっているのが判る。

「髪を結ぶのに使うなんて思いつかなかったな。ありがとう大事にするね。」

こみ上げる涙をこらえて精一杯笑うとマリーとレインも満足そうに笑ってくれた。








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