5 / 38
Take It Easy 4
しおりを挟む第一王子の領地に着くと華やかな町であった。
ゼルダム王国の首都を除けば最も栄えているのかもしれない。
町を歩く人間の多くは獣人の奴隷を連れている。
「すごいね~ 領地経営、上手くいってるじゃん!
さすが第一王子様。
獣人奴隷も沢山いるようで儲かっていそうだね~
奴隷売買は美味しいからね~~
うわ~~~エルフもいる。
あの親父は相当な金持ちだね~
俺もバインバインのエルフが欲しいな~~
第一王子のところにいない?」
「胸の大きなエルフは難しいね。
エルフは脂肪の付きにくい種族だから」
「そうか~~残念」
「着いたよ」
と第一王子が言うと目の前に巨大な鋼鉄で作られた門が建っていた。
「ほほーー! 門からして立派だね。 うんうん」
第一王子が門番に右手を挙げると門は音も立てずに開いた。
「うわ~~立派な館だね! さすが第一王子。
奴隷売買は儲かっていそうだね~」
「町の外で、そのことは話さないでくれないか?」
「やっぱり、マズイ? 王子が奴隷売買してるって?
でも誰もが知っているんじゃない?
ゼルダムは奴隷を禁止していないし、獣人亜人には人権を認めていないんだろ?」
「それでも口外されるのは、ちょっとね」
エントランスには驚くほど広く、城と見誤るほどだ。
城とは異なりは周りに数々の調度品が並んでいる。
「かーーーー、お旦那様、儲けてまんねーー
10億ゼルダムくらいチョロいもんでっしゃろ!」
と、おどけて見せた。
「さぁ~第一王子、お会計、お会計!!」
「分かった。こっちだ。約束の物を渡そう」
第一王子は先を進み部屋に入った。
部屋の中には家老と思われる老人が立っていた。
その家老に
「10億ゼルダム用意してくれ」
と第一王子は命令した。
「10億でしょうか?」
と聞き返すと
「そうだ」
と短く答えた。
そして、パンパンと二度手を叩くとメイドがお茶と菓子を持って入ってきた。
「メイドさんも美人だね~
第一王子の周りには美人ばかりで羨ましいね~
奴隷商をやっていると美人さんも手に入れやすいのかな」
部屋を出て行くメイドの後姿を見ながら言うと、一瞬だけ第一王子の顔が歪む。
「おお、いい紅茶だね。
高級茶葉を使っているね~
このクッキーはどうかな?」
ポリポリと音をたて齧る。
「うん、美味しい。
さすが王都と並ぶだけの町だね。
これはこの町の名産のクッキーだろ?
生地を作るときに塩を少し入れると、もっと美味しくなるよ」
「塩?」
「そう、塩! 甘みが増すんだよ」
第一王子はどうも理解することは出来なかったようだ。
部屋の扉が開くと家老に連れられた兵士が小さな荷押し車に宝箱を載せ入ってきた。
「お持ちいたしました」
「ひゃっほ~~」
宝箱を空け中身を確認しるとぎっしり金貨が入っていた。
「そんじゃ、貰っておくね~」
ローブの袖の下に手を入れ唐草模様の風呂敷を取り出し床に敷く。
「やっぱり悪人は唐草模様の風呂敷だよね~ 分かる?」
第一王子たちは無反応だった。
「このギャグ、分からないか・・・・・寂しいな~」
そして、100kgを超える宝箱を軽々、持ち上げ
「うん? 軽いね~」
第一王子はぎょっとした顔をしながら
「ちゃんと10億ゼルダムあるはずだ。
誤魔化したりしていない」
「あっ、ごめん。ごめん。こっちの話。
第一王子が誤魔化しているなんて思っていないから。
ただ単に金の含有量が少ないんだな~~っと思っただけだから」
「これで僕を助けてくれるんだろうね」
「商談成立!! 第一王子が契約違反をしない限り問題ないよ」
ふぅー と第一王子は息を吐いた。
「先方さんとの約束があるから手ぶらで戻るわけにも行かないので・・・・・
どうしようか?」
第一王子を見つめると
「商談成立といったじゃないか!!」
声を荒立てた。
「そうだね~こうするか」
再度ローブの裾の手を入れ、小さな子袋を取り出し中身の砂を床に撒き左手を向け魔法を唱えた。
「土魔法・砂人形」
砂は見る見るうちに第一王子と瓜二つになった。
それを見るなり第一王子と家老たちは尻餅をつ「あわあわ」と揃って声に出した。
「どう?なかなか良い出来でしょう」
と言うと水平に手刀を振った。
ポロッ!
砂で出来た第一王子瓜二つの人形の首が地面に落ちた。
「先方さんには、これを持っていくことにするよ。
そうすれば信用してくれるでしょう。
死んだ事になっているから、あまり目立った事はしないでね。
今後は地味に日陰に暮らしてくださいね」
虚空庫からもう一枚唐草模様の風呂敷を出すと偽者の第一王子の首を包み虚空庫にしまった。
「ほら、第一王子! いつまで床に座っているんだい?」
と手を貸し腰の抜けた第一王子を立たせた。
「こんな豪邸なら風呂の一つ二つあるよね~
ドロ人形くんは風呂に入ると溶けちゃうから入ることが出来ないけど、俺はドロ人形くんと違って綺麗好きだから風呂に入りたいな~
ついでに綺麗なお姉さんと一緒に入れたらラッキーなんだけど。
お願いできるかな?
出来るよね!」
有無を言わせる事は無かった。
「家老さん、お風呂まで案内してね~」
外へ出る扉に手を掛けようとしたときポンと手を叩き王子たちの方へ振り向きながら言った。
「あぁ~~ 砂人形君を傀儡にしても良かったね~
で、俺が宰相になってこの国を乗っ取も良かったね。
どう? 第一王子!!」
「そ、それでは約束が違う!!」
第一王子は目を見開きながら言った。
「あっ、ごめん、ごめん!大丈夫だよ! 契約しただろ。
君が変な気を起こさない限り大丈夫だから」
と言うと浴場へと向かった。
(こいつの言うことは、どこまでが本心か分からない!!)
第一王子は拳を握りしめながら思うのであった。
0
あなたにおすすめの小説
安全第一異世界生活
朋
ファンタジー
異世界に転移させられた 麻生 要(幼児になった3人の孫を持つ婆ちゃん)
新たな世界で新たな家族を得て、出会った優しい人・癖の強い人・腹黒と色々な人に気にかけられて婆ちゃん節を炸裂させながら安全重視の異世界冒険生活目指します!!
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ
天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。
ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。
そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。
よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。
そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。
こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。
拾われ子のスイ
蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】
記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。
幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。
老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。
――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。
スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。
出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。
清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。
これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。
※週2回(木・日)更新。
※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。
※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載)
※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる