Desperado~エピローグから始まる異世界放浪紀

ダメ人間共同体

文字の大きさ
19 / 38

Take the devil 4

しおりを挟む
「ライザ! シロの言う事を聞くんだぞ。
 人間だが、こいつ以上に義理堅い男はそう多くは無い。シロ、頼む!」

「パパーーー」
ライザが別れを惜しむように飛びつくとヘルザイムを膝を折り優しく抱きしめる」

「あぁ、分かった。お前の希望通り出来る限り連れ歩くようにする。
 魔界にいるペンゴにお前の言付けを伝えておく」

「シロ!ライザを頼んだぞ!」

「任せろ! 必ずお前の娘は魔界へ連れて行く」

ヘルザイムは少しだけ頭を下げた。

「我も運がいい。最後の最後でお前の欲していた『欠片』が手に入ったのだからな。
 サイサリーがどこからか持ってきてくれてな。良い部下を持った」

「それは良かったな! 先代の四天王も忠実な奴らだったからな・・・・・
 その中に裏切り者がいるかもしれないんだろ。
 気をつけろよ!」

「シロ! もう二度と会うことは無いだろうが、お前と出会え、やりあうことが出来て楽しい人生だったぞ!
 さらばだ!」

とヘルザイムは言うとマントを翻し背を向けて歩いて行った。

「パパ―――」

ライザの悲しみに溢れた声が男の後ろから聞える。
羊の執事がヘルザイムの後を追わないようにライザの両肩を抑えていた。

「行くぞ! ライザ!」

「嫌!! パパと一緒にいる!!」

我がままを言うライザを左肩に荷物を乗せるように乗せると羊の執事が頭を深く下げ一礼をした。

「パパーーー! パパーー! 降ろして! 降ろして!!」

ライザの声を無視してゼンセン城を後にする。

「降ろせ! バカ! 降ろせ!! 人間!!」

ライザが肘で後頭部をガンガンと殴りつけるが、そんな事お構い無しにゼンセン城の裏門に向け歩き続けた。




裏門を出ると荒涼とした大地が永遠に広がる。
男は着ているローブの力を借りて空に舞い上がった。
激しい向かい風が襲う。

「ちょっと風が強いな。 これ以上、強くなると飛ぶのは危険だな」

上空はさらに強風が吹き荒れ、大地に緑は無く枯れた木々がまばらに点在するだけだ。
辺り一面に広がる茶色い世界。

「ゼンセン城を挟んでこうも景色が変わるのか・・・・・・魔族たちが人間界へ侵攻するのも当たり前だな」

200年前に来たときは人間側の依頼をこなしていたので身の置き所も人間界だった。
人間界には山が広がり豊富な緑、川がせせらぎ水に困る事はない。
食料も豊富で大干ばつなどの天災などが無ければ困ることは無かった。

「そりゃ、魔族の奴らが俺を憎むのも当然だな・・・・・
 人間も土地を少しくらい分けてやっても罰は当たらないだろうに・・・・
 奪い合うと足りないが、分かち合えば足りるのにな。
 過去に何があったが知らないが人間も魔族も愚かなことだ」

ピカッ!

後で何かが光った。
空を飛びながら後ろを振り向くと巨大なゼンセン城が遠くでゆっくりと崩れ落ちた。
ゼンセン城が崩れたということ、すなわちヘルザイムが死んだ事を意味する。
ゼンセン城はヘルザイムの巨大な魔力によって築城され、巨大な魔力によって維持されていた。
男は静かに地上に降り肩に乗せているライザを降ろした。

「パパーーーー!!」

ライザは地面に座り嗚咽した。

「おいおい、いくらなんでも早すぎるぞ! あれだけ精強なヘルザイムの軍がこんなに簡単に落ちるか!?
 やはりヘルザイムの言うとおり裏切り者がいたということか・・・・
 あれだけ偉大な魔王も最後はあっけなかったな・・・・いや、偉大すぎる故か」
(嫉妬や妬みもそうとうなものだったのだろう)

「パパーー! パパーーー!!」

「ライザ! 行くぞ!」

と泣きながら座っている少女の手を取り引っ張ると

「離して! パパの元へ行く!! パパーーー!!」

「行ってどうする! お前の親父は死んだんだ!」

「パパは死なない! 私との約束を破ったことは無いの!!」

「我が侭言ってないで行くぞ!」

「いや、いや!! お城へ戻るの! 離して!!」

「もう城は無い! 崩れるのをお前も見ただろ!」

「関係無い! お城へ戻るの!!」

そのとき、城の方から黒い物体が高速で近づいてきた。

バサッ! バサッ!! バサ!!! と翼を羽ばたく音が徐々に大きくなる。
それと同じくその黒い物体が大きくなる。

「ドラゴン!?」

まだ、遠くてはっきりと分からないが、その形、形状からして鳥類ではないこと明かだった。

「チッ! ドラゴンだ、ヤバイ! 行くぞ、ライザ!」

男はヘルザイムの配下にドラゴン種がいない事を知っていた。
人間側にもドラゴン種を使役していた者に心当たりは無かった。
考えられるのは人間側が召喚した勇者!

ドスン!
砂埃が舞う。
ドラゴンは男たちの上を飛び去り、行く手を遮るように着地した。

「ほーーあいつの言ったとおりだな、ヘルザイムの娘か!」

ドラゴンに乗った男はゆっくり話しながら降りてきた。
全身黒い鎧に身を包み、両手持ちの大剣を背中に背負っていた。
男はライザを自分の後ろにやった。

「お前が今回召喚された勇者か?
 ドラゴンを使役しているということは竜騎士か?」

「ふふふ、違うよ! 勇者は他にいる。
 俺は一緒に召喚された仲間の一人。
 俺は竜騎士の」

「お前の名前なんか興味は無い! 失せろ!」

「チッ! 普通、名乗りをあげるのがエチケットだろ!」

「お前の名前なんかに興味は無い!」

「そうか、いけ好かない野郎だぜ!
 早速で悪いがヘルザイムの娘をこっちに渡してもらおうか」

「断る!」
男は冷たい声で即答した。

「お前は人間族に見えるが、悪魔か何かが変化の術でも使っているのか?」

「いや、普通の人間だよ」

「人間なのに何故魔族、しかもヘルザイムの娘を守るのか?」

「ヘルザイムからこの娘の保護を頼まれたからな!」

「魔族を保護だと? お前!気は確かか!?
 この世界で魔族に人間がどれくらい苦しめられたと思っているんだ!」

「フッ! そういう風に聞いているだけで、お前が苦しめられたわけじゃないだろ!
 お前はこの辺り一帯を見て何も感じないのか?」

竜騎士は一旦当たりをグルッと見やった。

「ふん! この荒野がどうした?」

「ガキには分からないか! ならいい! ヘルザイムはどうした?」

「死んだよ! 俺たちが殺した!」

「『俺たち』じゃなくて、『勇者』がだろ! お前たち雑魚ではヘルザイムを殺せない」

「何を偉そうに! そこにいたわけでは無いのに何故分かる!!」

「ヘルザイムが言っていたからだよ! 『年老いた魔王では勇者に勝てない』ってな!
 お前程度のトカゲ使いにヘルザイムはやられはしない!」

「貴様! 竜騎士の俺に対して言ってくれるね~!
 人間だとしても、調子に乗っていると真っ二つにするぜ!
 ヘルザイムの娘を大人しく渡せば見逃してやるよ」

「断る!」

竜騎士は大剣を抜き構えた。

「ヘルザイムの最後はどんな風だった!?」

「あいつか? 惨めったらしく膝をついて俺に命乞いをしたぞ!
 『助けて下さ~~~い! 竜騎士様~~~って!』」

「嘘だな! ヘルザイムがそんな真似をする訳がない! あいつは誇り高い男だ! 
 お前は戦った相手に対し尊敬の念を持てないのか?・・・品格の無い男だな。
 『竜騎士』という職も落ちたものだな!」

「ハハハハ! あいつはみっともない魔王だぜ!
 『娘に合いた~~~い!』とか言っ!」

「デスクリムゾン!!」

男は左手を竜騎士に向け呪文を唱えると竜騎士は最後の言葉を言い終わらないうちに膝から崩れ落ちるように地面に突っ伏し二度と動くことは無かった。

「キエーーーーン!!」

竜騎士の後ろにいたドラゴンが声を上げ攻撃を仕掛けようとしたとき

「デスクリムゾン!!」

と呪文を唱えた瞬間、バタン!と言う音とともにドラゴンも崩れ落ちた。

「お前ごとき雑魚がヘルザイムの名誉を穢すことは許されねぇ~~んだよ! クソが!!」

と怒声とともに竜騎士の亡骸にツバを吐きかけた。

それは一瞬のことだった。
ライザは突然の事に理解が追いつかなかったが竜騎士と巨体なドラゴンが一瞬にして死んだことだけは分かった。

 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

安全第一異世界生活

ファンタジー
異世界に転移させられた 麻生 要(幼児になった3人の孫を持つ婆ちゃん) 新たな世界で新たな家族を得て、出会った優しい人・癖の強い人・腹黒と色々な人に気にかけられて婆ちゃん節を炸裂させながら安全重視の異世界冒険生活目指します!!

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

大ッ嫌いな英雄様達に告ぐ

鮭とば
ファンタジー
剣があって、魔法があって、けれども機械はない世界。妖魔族、俗に言う魔族と人間族の、原因は最早誰にもわからない、終わらない小競り合いに、いつからあらわれたのかは皆わからないが、一旦の終止符をねじ込んだ聖女様と、それを守る5人の英雄様。 それが約50年前。 聖女様はそれから2回代替わりをし、数年前に3回目の代替わりをしたばかりで、英雄様は数え切れないぐらい替わってる。 英雄の座は常に5つで、基本的にどこから英雄を選ぶかは決まってる。 俺は、なんとしても、聖女様のすぐ隣に居たい。 でも…英雄は5人もいらないな。

処理中です...