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Ⅰ.ユラの章【捕獲】
06.
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「お姉様のドレス、ララのより綺麗だわ。お母様、ララもあのドレスがいい」
義妹のララが侯爵家から送られたドレスを羨ましそうに見る。
「そうね。ユラではせっかくのドレスの美しさが台無しだもの。ララが着たらきっととても映えるでしょうに」
継母のセイラは娘のララを猫なで声で宥め、
「鷹小路様、やはりユラではクリス様にはとても釣り合いませんわ。ララの方が教養も豊かで淑女のたしなみも心得ています。お考え直しになられては、…」
媚びるように鷹小路侯爵を伺い見た。
「…足をどうしたのです?」
しかし、クリスはセイラに取り合うことなくすっと席を立ち、ユラに歩み寄ると、片膝をついて下からユラの手を取って支えた。
「あ、…いえ、…」
突如降って湧いた婚約話にユラは未だ混乱したまま、しかも人前に出ることなどほとんどなかったので、何と答えて良いのか分からない。目で射殺しそうになっている継母も怖い。
「…失礼」
クリスはユラの背後に腕を差し入れ、ふんだんにレースのあしらわれた華麗なドレスごとユラを両腕で抱きあげた。
「まあ、…っ」
突然の出来事にユラは動揺して固まり、継母と義妹はあんぐりと口を開けた。クリスは悠然と客間のソファにユラを運ぶとそっと座らせ、
「腕の良い医者を遣わせましょう」
優しく囁きかけながら、傍らに自分も腰を下ろした。
「ハッハッハ、ご覧の通り、クリスはユラ殿に大層執心しておりましてな。無事に婚約を了承いただけて私もほっとしました」
寄り添ってソファに座る二人を微笑ましそうに眺めながら、鷹小路侯爵が軽快に笑う。婚約の意向を翻意することなどとてもできない。
「そうですね。出来ることならこのまま連れて帰りたいくらいです」
クリスも父親に同調してしれっと言ってのけた。
いつの間にか重ねられている手にユラは落ち着かないままだった。
「そ、…それはあまりに性急に過ぎますわ。嫁ぐ方にも諸々準備がございますもの。ねえ、あなた。せめて10日、…次の満月が明けたら輿入れするのでいかがかしら」
「うむ、それがいい」
セイラが何やら計算高く提案し、花御門伯爵は無関心そうに頷いた。
「そうですか。ではそちらの侍女も供に付かせて下さい。私どもの慣れない屋敷ではユラ様も戸惑うことが多いでしょうから」
ユラの境遇に不審を抱いているのか、クリスは、事情を知っていそうな侍女を手の内に引き込もうとしているようだ。言外に脅しをかけているようにも聞こえる。
「まあ、それはユラも心強いでしょう。ねえ、あなた。ホホホ」
セイラは引き攣った笑みを浮かべ、
「ねえクリス様。お義兄様になられるのでしたら、ララとも親しくしてくださいませ」
ララは美形で家柄的にも申し分のないクリスをうっとり眩しそうに見つめていた。
こうして、ユラの意志とは無関係に話がまとまり、次の満月が明けるのを待って、花御門ユラは侯爵家の鷹小路クリスに嫁ぐことになった。
義妹のララが侯爵家から送られたドレスを羨ましそうに見る。
「そうね。ユラではせっかくのドレスの美しさが台無しだもの。ララが着たらきっととても映えるでしょうに」
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「鷹小路様、やはりユラではクリス様にはとても釣り合いませんわ。ララの方が教養も豊かで淑女のたしなみも心得ています。お考え直しになられては、…」
媚びるように鷹小路侯爵を伺い見た。
「…足をどうしたのです?」
しかし、クリスはセイラに取り合うことなくすっと席を立ち、ユラに歩み寄ると、片膝をついて下からユラの手を取って支えた。
「あ、…いえ、…」
突如降って湧いた婚約話にユラは未だ混乱したまま、しかも人前に出ることなどほとんどなかったので、何と答えて良いのか分からない。目で射殺しそうになっている継母も怖い。
「…失礼」
クリスはユラの背後に腕を差し入れ、ふんだんにレースのあしらわれた華麗なドレスごとユラを両腕で抱きあげた。
「まあ、…っ」
突然の出来事にユラは動揺して固まり、継母と義妹はあんぐりと口を開けた。クリスは悠然と客間のソファにユラを運ぶとそっと座らせ、
「腕の良い医者を遣わせましょう」
優しく囁きかけながら、傍らに自分も腰を下ろした。
「ハッハッハ、ご覧の通り、クリスはユラ殿に大層執心しておりましてな。無事に婚約を了承いただけて私もほっとしました」
寄り添ってソファに座る二人を微笑ましそうに眺めながら、鷹小路侯爵が軽快に笑う。婚約の意向を翻意することなどとてもできない。
「そうですね。出来ることならこのまま連れて帰りたいくらいです」
クリスも父親に同調してしれっと言ってのけた。
いつの間にか重ねられている手にユラは落ち着かないままだった。
「そ、…それはあまりに性急に過ぎますわ。嫁ぐ方にも諸々準備がございますもの。ねえ、あなた。せめて10日、…次の満月が明けたら輿入れするのでいかがかしら」
「うむ、それがいい」
セイラが何やら計算高く提案し、花御門伯爵は無関心そうに頷いた。
「そうですか。ではそちらの侍女も供に付かせて下さい。私どもの慣れない屋敷ではユラ様も戸惑うことが多いでしょうから」
ユラの境遇に不審を抱いているのか、クリスは、事情を知っていそうな侍女を手の内に引き込もうとしているようだ。言外に脅しをかけているようにも聞こえる。
「まあ、それはユラも心強いでしょう。ねえ、あなた。ホホホ」
セイラは引き攣った笑みを浮かべ、
「ねえクリス様。お義兄様になられるのでしたら、ララとも親しくしてくださいませ」
ララは美形で家柄的にも申し分のないクリスをうっとり眩しそうに見つめていた。
こうして、ユラの意志とは無関係に話がまとまり、次の満月が明けるのを待って、花御門ユラは侯爵家の鷹小路クリスに嫁ぐことになった。
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