時間を止めて ~忘れられない元カレは完璧な容姿と天性の才能を持つ世界一残酷な人でした 【完結】

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「シュレッターのごみが無くなってる」
「ホワイトボードが見やすくなってる」
「「会議の資料がそろってるっ‼」」

営業3課に新人が研修にやってきた。

「花崎香恋です。何もできませんが、精いっぱい勉強します」

栗色の髪の毛がくるりとカールされていて、白い肌が艶やかに光り、
甘い香りのする唇はぷるるんと潤っている。

シュート先輩が猛然と拍手を送り、香恋ちゃんが恥ずかしそうにはにかんだ。

「若い」
「可愛い」
「「そして、気が効くっ‼」」

花崎香恋ちゃんは、
名前を裏切らない可愛らしい見た目と回転の速さ、機敏な動きで、
まりな先輩とシュート先輩が初日から絶賛していた。

「香恋ちゃん、今日時間ある? 歓迎会やろうよ」
「高野チーフ、いかがですか?」

先輩たちはテキパキと仕事を片付けて、高野チーフに誘いをかけた。

「あ、…まあ、そうだな」

なんか、チーフも嬉しそう。
パンダのくせに鼻の下伸ばしてる。
まあ、若くて可愛くて頭が良かったら、そりゃあみんな好きだよね。

「おい、佐倉。店押さえろよ、気が利かないな」
「…へーい」

対する私は、未だに報告書さえまともに作れず、悪戦苦闘。
初心に立ち返ったばかりなのに。頑張りたいのに。
歓迎会やるなら、急いで終わらせなくちゃダメなのに。

焦ってパソコンを叩いていたら、

「…え。こんなの出来ない人いるんだ」

ぼそりと低い声が聞こえて驚いて振り返ると、

「先輩。私、関数得意なんで、代わりましょうか?」

香恋ちゃんの汚れなき笑顔にぶつかった。

「香恋ちゃん、3課へようこそ~~~」

シュート先輩がジョッキのビールを傾けて、CMみたいに豪快に飲み干す。

「ありがとうございます」

香恋ちゃんは桃のカクテルが入ったグラスを掲げ、期待を裏切らない上品さで一口ずつ口に含める。

香恋ちゃんを挟んでシュート先輩と高野チーフ。
向かいに私とまりな先輩が座る。

「香恋ちゃん、この見た目でバリバリのリケジョなんだって。ご指導賜れよ、佐倉ぁ」
「…ですよね」

既に顔が赤いシュート先輩は余計な一言が多い。
けど、実際その通りだと思う。

結局報告書が上がらなかった私は、この後会社に戻ろうと思っている。

…新入社員より仕事が出来ない。へこむ。

「その見た目でバリバリのリケジョって、相当モテるでしょう?」

まりな先輩がにこやかにウーロン杯を傾ける。

「えー、そんな。普通です――ぅ」

香恋ちゃんが両手を顔の横でパタパタ振って、

「もうっ、聞いていい⁉ 彼氏いるの⁉」

シュート先輩が勢い込んで切り込んだ。

「えー、いませんよー。香恋、彼氏いたことなくて」

香恋ちゃんがはにかむと、シュート先輩が全力で身を乗り出した。

「まさかの処女⁉」
「えー、やだぁ」
「聞いたか、佐倉⁉ お前とは意味が違うっ」

…おい。

「遠藤、いい加減にしろ!」
「…すみません」

白い目を向けると、シュート先輩が高野チーフから鉄拳制裁を受けていた。
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