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「…な、訳ないじゃん、あの手」
まりな先輩がウーロン杯を飲み干して、小さくつぶやいた。
ほんの一瞬、先輩の真顔を見たような気がして、ちょっと瞬く。
向かいを見ると、強制席替えになったらしく、
高野チーフがシュート先輩と香恋ちゃんの間に割って入っていたのだけれど、
香恋ちゃんはおびえたように高野チーフのスーツの裾をつかんでいた。
華奢な手。白くて細い指。薄紅色のネイル。
「すみません、お代わりお願いしますっ」
先輩たちの空いたグラスを見て店員さんを呼びながら、自分の手を見下ろした。
日焼けした手。太くて短い指。平たい無機質な爪。
まあ、確かに。いろいろ違うかもしれない。
千晃くん、ごめんね。
せっかく昨日、つないでくれたのに。
こんな可愛くない手で。
千晃くんが撫でてくれた絆創膏の傷は、ほとんどふさがっていたけれど、
まだ時々沁みる。
「佐倉。俺、砂肝のネギ塩焼き」
「へーい」
テーブルに来てくれた店員さんにお代わりとお料理を注文していると、
「香恋ちゃん、この、マシュマロピザとかどう?」
「えー、嬉しい~~~」
シュート先輩がチーフの前に乗り出して、必死で挽回を図っていた。
「…と、鶏レバ唐揚げ、で」
一通り注文を終えると、
「…レバーって、可愛げねぇな、佐倉。ねえ、香恋ちゃん」
すかさずシュート先輩が香恋ちゃんに媚びる。
「えー、似合ってますよー」
どうもね、どうも。鉄分大事だからね。
…って、納得するとこじゃないし。
「あ、すみません。俺もレバーの甘辛煮、追加で」
…パンダとお揃いでも嬉しくないし。
「高野チーフ、すみません。なんかフラフラして、…」
とりあえず、歓迎会がお開きになり、お店を出ようとしているところで、
香恋ちゃんの足取りが危うい。
高野チーフに寄りかかりながら歩いている。
「香恋ちゃん、お酒弱いんだね。俺、家まで送るから」
シュート先輩が張り切って通りのタクシーを止めに行くけれど、
「あの。私、遠藤さんは、…」
香恋ちゃんが涙目でチーフを見上げる。
シュート先輩はすっかり敬遠されているらしい。
まあ、自業自得っていうかね。
「あー、俺は一度、社に戻るから、…」
高野チーフが少し困ったような顔をすると、スッとまりな先輩が香恋ちゃんを引き取り、
「一緒に帰ろ」
「あ、…」
仲良くタクシーに乗り込んだ。
「お疲れ、遠藤くん」
「え――っ、まりなさんっ、ちょ、…待っ、…」
目の前でタクシーのドアを閉められて、速やかに発車したタクシーを、コントみたいにシュート先輩が追いかけて行く。
それを苦笑まじりに見送った高野チーフが、
「行くぞ、佐倉」
私の頭に軽く手を置き、ゆっくりと歩き始めた。
まりな先輩がウーロン杯を飲み干して、小さくつぶやいた。
ほんの一瞬、先輩の真顔を見たような気がして、ちょっと瞬く。
向かいを見ると、強制席替えになったらしく、
高野チーフがシュート先輩と香恋ちゃんの間に割って入っていたのだけれど、
香恋ちゃんはおびえたように高野チーフのスーツの裾をつかんでいた。
華奢な手。白くて細い指。薄紅色のネイル。
「すみません、お代わりお願いしますっ」
先輩たちの空いたグラスを見て店員さんを呼びながら、自分の手を見下ろした。
日焼けした手。太くて短い指。平たい無機質な爪。
まあ、確かに。いろいろ違うかもしれない。
千晃くん、ごめんね。
せっかく昨日、つないでくれたのに。
こんな可愛くない手で。
千晃くんが撫でてくれた絆創膏の傷は、ほとんどふさがっていたけれど、
まだ時々沁みる。
「佐倉。俺、砂肝のネギ塩焼き」
「へーい」
テーブルに来てくれた店員さんにお代わりとお料理を注文していると、
「香恋ちゃん、この、マシュマロピザとかどう?」
「えー、嬉しい~~~」
シュート先輩がチーフの前に乗り出して、必死で挽回を図っていた。
「…と、鶏レバ唐揚げ、で」
一通り注文を終えると、
「…レバーって、可愛げねぇな、佐倉。ねえ、香恋ちゃん」
すかさずシュート先輩が香恋ちゃんに媚びる。
「えー、似合ってますよー」
どうもね、どうも。鉄分大事だからね。
…って、納得するとこじゃないし。
「あ、すみません。俺もレバーの甘辛煮、追加で」
…パンダとお揃いでも嬉しくないし。
「高野チーフ、すみません。なんかフラフラして、…」
とりあえず、歓迎会がお開きになり、お店を出ようとしているところで、
香恋ちゃんの足取りが危うい。
高野チーフに寄りかかりながら歩いている。
「香恋ちゃん、お酒弱いんだね。俺、家まで送るから」
シュート先輩が張り切って通りのタクシーを止めに行くけれど、
「あの。私、遠藤さんは、…」
香恋ちゃんが涙目でチーフを見上げる。
シュート先輩はすっかり敬遠されているらしい。
まあ、自業自得っていうかね。
「あー、俺は一度、社に戻るから、…」
高野チーフが少し困ったような顔をすると、スッとまりな先輩が香恋ちゃんを引き取り、
「一緒に帰ろ」
「あ、…」
仲良くタクシーに乗り込んだ。
「お疲れ、遠藤くん」
「え――っ、まりなさんっ、ちょ、…待っ、…」
目の前でタクシーのドアを閉められて、速やかに発車したタクシーを、コントみたいにシュート先輩が追いかけて行く。
それを苦笑まじりに見送った高野チーフが、
「行くぞ、佐倉」
私の頭に軽く手を置き、ゆっくりと歩き始めた。
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