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「営業の現場を見ておきたかったから」
と、表向きは言ってくれたけど。
多分。
バカみたいに泣いてしまった私を心配して、午後の外回りに千晃くんがついてきてくれた。
CEOにどんなふうに断りを入れたのかわからないけど、すんなりOKをもらっていて、やっぱり才能が違うと思った。
千晃くんを社用車の助手席に乗せて、担当先の店舗に向かう。
「運転してるとこ、見れると思わなかったな」
助手席の千晃くんはなんだか嬉しそうだけど、いつもの100倍緊張した。
なんでか千晃くんを同乗させることになってしまったけど、
私は車の運転が苦手なんだった―――っ‼
「えーと、ここ? サイドミラー閉じてるけど?」
サイドミラーっ‼
「なんかワイパー動いてるね?」
ワイパーっ‼
「シフトレバーはDにするんじゃ…?」
シフトレバーっ‼
緊張したら、いつもは出来ているはずのことまですっぽり抜けて、会社の駐車場から公道に出ることさえままならず、
「…免許持ってんだよね?」
千晃くんに大いなる不安を与えてしまった。
しかしまあ、公道に出てしまえば意外と身体が覚えていて、
高野チーフのアドバイスもよみがえり、それなりに車の波に乗って快適に進んだ。
と、思ったのも束の間。
快適に進み過ぎてブレーキが利かない。
え⁇
何回踏んでも、思いっきり踏んでも、全然減速しない。
全身が恐怖に包まれた。
「…千晃くん」
私の震える声に千晃くんが敏感に反応する。
「ブレーキが利かない」
「ここ、アクセル離して」
一瞬のうちに状況を察知してくれた千晃くんが、
シートベルトを外して、運転席に乗りかかり、
長い手足を伸ばしてハンドルとアクセルを操作する。
信号待ちの車の列に突っ込まないように、細心の注意を払いながら、
赤信号の交差点をすり抜ける。
接触スレスレで大きなトラックが横切り、激しくクラクションを鳴らされて心臓が縮み上がる。
千晃くんの邪魔にならないように極力端に避け、
悲鳴を上げないように唇をかみしめるのが精いっぱいだった。
なんで?
どうして?
故障なの!?
パニックで役に立たないことばかりが頭の中をぐるぐる回り、
どうしたらいいのか分からない。
「エンジンブレーキ、…」
真剣な表情でシフトレバーを動かしハンドルを切る千晃くんの美しい手を、祈るような気持ちで眺める。
社用車は暴走しながら、驚愕の表情を浮かべる対向車や自転車、歩行者をかわした。
路駐車両を避けて対向車線にはみ出し、前から来た乗用車をかすめながら走行車線に戻ると、
目の前に迫った大きな交差点は、運悪く赤信号だった。
横断する車がスピードを上げたまま切れ目なく続く中に、左に急ハンドルを切りながら突っ込む。
後ろから減速なしで交差点に差し掛かったトレーラーが轟音を鳴らすのと、追突された激しい衝撃を感じるのがほぼ同時だった。
「ここ、っ‼」
千晃くんが片腕で私の頭を抱えて覆いかぶさるように膝の上に押さえつけた。
車が激しい衝撃に揺られて、破裂音や破壊音が鳴り響き、頭の上から割れたガラスがバラバラと落ちてきた。
目も開けていられないような強い衝撃に身を固くしていると、やがて車が動かなくなった。
と、表向きは言ってくれたけど。
多分。
バカみたいに泣いてしまった私を心配して、午後の外回りに千晃くんがついてきてくれた。
CEOにどんなふうに断りを入れたのかわからないけど、すんなりOKをもらっていて、やっぱり才能が違うと思った。
千晃くんを社用車の助手席に乗せて、担当先の店舗に向かう。
「運転してるとこ、見れると思わなかったな」
助手席の千晃くんはなんだか嬉しそうだけど、いつもの100倍緊張した。
なんでか千晃くんを同乗させることになってしまったけど、
私は車の運転が苦手なんだった―――っ‼
「えーと、ここ? サイドミラー閉じてるけど?」
サイドミラーっ‼
「なんかワイパー動いてるね?」
ワイパーっ‼
「シフトレバーはDにするんじゃ…?」
シフトレバーっ‼
緊張したら、いつもは出来ているはずのことまですっぽり抜けて、会社の駐車場から公道に出ることさえままならず、
「…免許持ってんだよね?」
千晃くんに大いなる不安を与えてしまった。
しかしまあ、公道に出てしまえば意外と身体が覚えていて、
高野チーフのアドバイスもよみがえり、それなりに車の波に乗って快適に進んだ。
と、思ったのも束の間。
快適に進み過ぎてブレーキが利かない。
え⁇
何回踏んでも、思いっきり踏んでも、全然減速しない。
全身が恐怖に包まれた。
「…千晃くん」
私の震える声に千晃くんが敏感に反応する。
「ブレーキが利かない」
「ここ、アクセル離して」
一瞬のうちに状況を察知してくれた千晃くんが、
シートベルトを外して、運転席に乗りかかり、
長い手足を伸ばしてハンドルとアクセルを操作する。
信号待ちの車の列に突っ込まないように、細心の注意を払いながら、
赤信号の交差点をすり抜ける。
接触スレスレで大きなトラックが横切り、激しくクラクションを鳴らされて心臓が縮み上がる。
千晃くんの邪魔にならないように極力端に避け、
悲鳴を上げないように唇をかみしめるのが精いっぱいだった。
なんで?
どうして?
故障なの!?
パニックで役に立たないことばかりが頭の中をぐるぐる回り、
どうしたらいいのか分からない。
「エンジンブレーキ、…」
真剣な表情でシフトレバーを動かしハンドルを切る千晃くんの美しい手を、祈るような気持ちで眺める。
社用車は暴走しながら、驚愕の表情を浮かべる対向車や自転車、歩行者をかわした。
路駐車両を避けて対向車線にはみ出し、前から来た乗用車をかすめながら走行車線に戻ると、
目の前に迫った大きな交差点は、運悪く赤信号だった。
横断する車がスピードを上げたまま切れ目なく続く中に、左に急ハンドルを切りながら突っ込む。
後ろから減速なしで交差点に差し掛かったトレーラーが轟音を鳴らすのと、追突された激しい衝撃を感じるのがほぼ同時だった。
「ここ、っ‼」
千晃くんが片腕で私の頭を抱えて覆いかぶさるように膝の上に押さえつけた。
車が激しい衝撃に揺られて、破裂音や破壊音が鳴り響き、頭の上から割れたガラスがバラバラと落ちてきた。
目も開けていられないような強い衝撃に身を固くしていると、やがて車が動かなくなった。
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