【完結】君への祈りが届くとき

remo

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Ⅱ.有輝

03.

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あかりが。
俺を迎えに来てくれた天使だったなら。

「…、高校を受験したい?」

中学校には全く行かず、家にも帰ったり帰らなかったりしていた俺が、親の帰りを待ちわびて、そう言うと、さすがに親父は驚いたようだった。

「…明学館に行きたい」

俺が言うと、話を聞いていた兄貴が、

「今更、受かるかよ」

小馬鹿にして鼻を鳴らした。

兄貴は、俺に欠けているものが全て揃っている。
成績優秀、スポーツ万能、品行方正、親にも先生にも信頼が厚く、周囲の期待も高いけれど、難なくそれに応え、将来は、親父の会社を継ぐらしい。

そして兄貴は「鳴瀬」の名前を汚すだけの俺のことが嫌いだ。

「…二次募集があったら、受験できるか、先生と相談してみよう」

親父は、俺の起こした事件の尻拭いで大変だろうにそれを俺には言わない。
母親が亡くなってから、俺に本心を言わない。
もうとっくに、俺をあきらめている。

成績だけなら、受かる自信はあった。
学校に全く行かなかったこの1年は、時間がありすぎて勉強していたから。

桜の花がまだ残る4月の初めに、俺は明学館の制服を着た。
緊張感の漂う入学式で、大勢の1年生の中に、
諏訪あかりの姿を見つけた時、
やっぱり俺の天使だったと思った。

でも。
諏訪あかりが俺を見ることはなかった。

俺を取り巻く噂は、いつもたちどころに広まる。
実際俺はろくでもなかったから、
敬遠されるのも絡まれるのも慣れている。

男たちは俺に遠巻きに近づき、
女たちは俺にすり寄ってきた。

隣の隣のクラスにいる諏訪あかりとは、接触する機会がない。

登下校する姿や体育の授業を受ける姿を時々窓から見た。

俺が呼びだされた職員室に、何かの用で入ってきたことがある。

「失礼します」

天使の声は可愛い。

あかりの目に映りたくて、髪をオレンジに染めた。

「有輝くん、今日はあたしと遊ぼ?」
「やぁん、あたし~」

用もないのに、休み時間は大抵廊下で過ごした。
時々、視界の端に、あかりが映る。

でも、相変わらず、あかりの瞳は俺を映さない。

そのうちに、諏訪あかりには、完璧な彼氏がいることを知った。

3年の深山聖人は、天使に選ばれるのにふさわしい男で、欠けたところが見つけられない。
俺とは何もかもが違っていて、少し、兄貴に似ている。

「じゃあ、放課後。図書室で待ってて」

あかりは放課後、図書室で彼氏の部活が終わるのを待ち、一緒に帰る。

彼氏が当然の権利で、あかりと手をつなぐ。
つながれた手が遠ざかって見えなくなる。

小指の先だけでいいから。
ほんの少しだけでいいから。

俺もあかりに触れてみたい。
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