戦国男子高校生に言い寄られてます!?【完結】

remo

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07.

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「…なえ」

穂月の長い腕が大切な宝物を抱えるみたいに、ぎゅっと私を抱きしめる。

今朝、目が覚めるまで一緒にいた穂月の腕の中。変わってない。誰よりもそばにいて、1番深いところで溶け合った。他の誰も届けない、穂月だけ。

その腕の中にいたら、穂月が心変わりしたとか、遊びだったとか、ちんけな年増がダメだったとか、そんなんじゃなくて、何かどうしようもない事態に陥ったんだろうと分かった。

分かったけど、それを受け入れられるかというと、それはまた別の話で、一向にぐずぐず涙が止まらない。出来る女はこういう時、何も聞かずに身を引くんだろう。逃げたり隠れたりすがったりしないで、潔く別れを受け入れるんだろう。

でも、…
でもさあ?

初めて二人で迎えた朝に、絶世の美少女を連れて現れるって、さすがにどういう了見よ??

「すまぬ、…どういうことか、俺にもよく分からぬ」

泣いている私を優しく撫でながら、なんだか穂月自身も途方に暮れているようだった。

「…ええっと、それで。その制服、桜百合さゆり学園のよね? あなたはそこの生徒さん?」

カーテンの向こうで、お茶を淹れてあげたらしいマキちゃんが、渦中の美少女に話しかけている。

「はい。一年の、三宮さんのみやなえと申します」

鈴を転がすような可愛らしい声が答えた。

三宮、…

「…なえっ!?」

ガバっと顔を上げたら、暗い表情の穂月と目があった。

「彼女は、俺を待っていたという。戦国の世で共に過ごし、時を超えてここに辿り着いた、…俺の『なえ』だ、と」

穂月が重い声音で話すと、衝撃で声が出ない私の代わりに、

「えええええ~~~~~~っ!?」
「はああああ~~~~~~っ??」

坂下さんと鷹峰くんの絶叫が上がり、

「ナナエ、あんた、偽物だったんかい、…っっ」

またしても的確なマキちゃんの突っ込みが入った。
三宮なえさんの声は聞こえないけど、無言の肯定、ということだろう。

そう、つまり。
穂月が全てを投げうってでも共に生きたいと心に決めた相手なえは、私じゃなかった、…ってことだ。

そんな、…
そんなあああ、…

今更、人違いでしたとか、
神様、そんなのありですか、…――――――???

「俺の身に起きたことを全て話す。俺にも未だよく分からぬが、聞いて欲しい」

愕然と理解が追い付かない私を抱きしめたまま、穂月が静かに話し始めた。

「今朝方、夜明け前。時切丸ときりまるに呼ばれて目が覚めた、…」

時切丸というのは、穂月がここに来た最初に携えていた刀のことらしい。

戦国の雷将と呼ばれた志田一族は刀剣の扱いに優れ、数々の武勲を挙げて関東地方に台頭しており、志田家嫡男の志田穂月は元服の際、志田家に代々伝わる名刀時切丸を託された。13歳での初陣から多くの出陣で時切丸と命運をともにした穂月は、刀剣に宿る数奇な力ともまた、心理一体であったらしい。
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