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iiyori.04
06.
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「おいこら、子守り枠。普通に邪魔なんだけど」
緊急事態につき、保健室のベッドで寝ていた坂下さんに交代してもらい、ベッドに潜って引きこもってみるも、情け容赦がないことで有名な養護教諭の真木鈴華に邪険にされた。
いやいや無理無理。
非常事態なんでっ、ホント無理なんでっ!!
虫のように丸まって頭の上まで布団に潜り、私はダンゴムシ、と呪文を唱え、布団と一体化を計っていると、
「…なえ、すまぬ。話を聞いて欲しい」
私をダンゴムシにさせた元凶が奇襲をかけてきて、ビック―――ンと分かりやすく狼狽してしまった。
坂下さん~~~~っ、かくまってって言ったのに。
「いや、諦めなよ」「なえちゃん、俺がいるから」
呆れた感を隠そうともしない坂下さんと鷹峰くんの声がする。
いやいや無理って。こんなのまるで死刑宣告を聞く囚人じゃん。
「…倉咲 菜苗はっ、…額田王に急用がありっ、ただいま飛鳥時代に出張中ですので、…っ」
未だ息を切らせながら悪あがきの先延ばしを計ると、
「子守り枠っ、潔く現実を見ろっ!」
スパコ―――ンと布団の上からマキちゃんにはたかれた。
ひどい、そんな。現実逃避くらいしたっていいじゃん、…
「…なえ」
マキちゃんにはたかれた頭に、布団の上から穂月の手が触れた。それだけでもう目の奥が熱くなって鼻の奥が痛くなって必死で奥歯を噛みしめた。
万事休す。
校舎に向かって歩いてくる穂月と美少女の呪縛から解かれて、教室に戻ろうとしたら、穂月と目が合った。離れてたけど確かに目が合って、途端に穂月が走り出したので、とっさに逃げた。
「…なえっ!!」
迷惑を顧みず、校舎内をぐるぐる走ったけど、穂月はどんだけ足が速いんだか、あっという間に追い付かれ、つかまりそうになったので、息も絶え絶え状態で、最終的に保健室に逃げ込んだ、わけだけど、…
「…すまぬ」
そっとめくられた掛布団から、整い過ぎた穂月の顔がすぐそこに見えた。
瞬間、堰が切れて、ぶわっと涙が溢れ出した。
いろいろ失格。ダメすぎる、私。イエローカード。退場。
自分を叱責するけど、涙を止められない。
「なえ、…っ」
穂月の長い腕が伸ばされて、そっと私の頭を包んだ。
穂月の瞳に私が映って、穂月の声が私を呼んで、穂月の指が私に触れる。
穂月の温もり。穂月の匂い。世界一安心する穂月の腕の中にいるのに、暗い不安しかない。穂月がすごく痛そうな辛そうな顔をしている。こんなの絶対別れ話じゃん、…
「ちょっとみんな、ハーブティーでも飲むか」
成り行きでそこに集まってしまった坂下さんと鷹峰くん、そして謎の美少女を促して、マキちゃんが席を外し、ベッド周りのカーテンを閉めてくれた。
緊急事態につき、保健室のベッドで寝ていた坂下さんに交代してもらい、ベッドに潜って引きこもってみるも、情け容赦がないことで有名な養護教諭の真木鈴華に邪険にされた。
いやいや無理無理。
非常事態なんでっ、ホント無理なんでっ!!
虫のように丸まって頭の上まで布団に潜り、私はダンゴムシ、と呪文を唱え、布団と一体化を計っていると、
「…なえ、すまぬ。話を聞いて欲しい」
私をダンゴムシにさせた元凶が奇襲をかけてきて、ビック―――ンと分かりやすく狼狽してしまった。
坂下さん~~~~っ、かくまってって言ったのに。
「いや、諦めなよ」「なえちゃん、俺がいるから」
呆れた感を隠そうともしない坂下さんと鷹峰くんの声がする。
いやいや無理って。こんなのまるで死刑宣告を聞く囚人じゃん。
「…倉咲 菜苗はっ、…額田王に急用がありっ、ただいま飛鳥時代に出張中ですので、…っ」
未だ息を切らせながら悪あがきの先延ばしを計ると、
「子守り枠っ、潔く現実を見ろっ!」
スパコ―――ンと布団の上からマキちゃんにはたかれた。
ひどい、そんな。現実逃避くらいしたっていいじゃん、…
「…なえ」
マキちゃんにはたかれた頭に、布団の上から穂月の手が触れた。それだけでもう目の奥が熱くなって鼻の奥が痛くなって必死で奥歯を噛みしめた。
万事休す。
校舎に向かって歩いてくる穂月と美少女の呪縛から解かれて、教室に戻ろうとしたら、穂月と目が合った。離れてたけど確かに目が合って、途端に穂月が走り出したので、とっさに逃げた。
「…なえっ!!」
迷惑を顧みず、校舎内をぐるぐる走ったけど、穂月はどんだけ足が速いんだか、あっという間に追い付かれ、つかまりそうになったので、息も絶え絶え状態で、最終的に保健室に逃げ込んだ、わけだけど、…
「…すまぬ」
そっとめくられた掛布団から、整い過ぎた穂月の顔がすぐそこに見えた。
瞬間、堰が切れて、ぶわっと涙が溢れ出した。
いろいろ失格。ダメすぎる、私。イエローカード。退場。
自分を叱責するけど、涙を止められない。
「なえ、…っ」
穂月の長い腕が伸ばされて、そっと私の頭を包んだ。
穂月の瞳に私が映って、穂月の声が私を呼んで、穂月の指が私に触れる。
穂月の温もり。穂月の匂い。世界一安心する穂月の腕の中にいるのに、暗い不安しかない。穂月がすごく痛そうな辛そうな顔をしている。こんなの絶対別れ話じゃん、…
「ちょっとみんな、ハーブティーでも飲むか」
成り行きでそこに集まってしまった坂下さんと鷹峰くん、そして謎の美少女を促して、マキちゃんが席を外し、ベッド周りのカーテンを閉めてくれた。
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