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iiyori.08
02.
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「法師様、今度こそ間違いないんでしょうね?」
「先ほどは鬼のようにデカいネズミの集団に追いかけられましたが??」
「うむ、大丈夫じゃ。間違いない。…多分」
「多分て何ですか、多分て」
「全然自信ないやつじゃん」
ひそひそと話す声がだんだん上から近づいてくる。
地下への入り口が開いたままなのか、薄い明りが漏れている。暗がりに慣れた目には、周りの様子がかなりはっきり見えるし、静寂に慣れた耳には、侵入者の会話の一言一句が聞き取れる。
なるほど。
降りてくるのは達磨法師と弟子の二人組。
自分の手足として使っていた女中が捕らえられたので、自分たちが関係していることがバレたらまずいと思って、慌てて捜しに来たってところか。
つまり。
穂月暗殺をもくろんだ晴信に達磨法師が手を貸したってことがバレないよう、私の口封じに来た、…
え!? やばい。やばいじゃん。
明朝の処刑を待つまでもなく、ここで終了の危機。
なんということ。せっかく必死で縄抜けしたというのにっっ
焦りのあまり心臓がバクバクして、手が汗ばんでくる。
やばい。やばいて、…
足音を立てずに近づいてくる人の気配を感じながら、必死で頭を回転させる。考えろ、考えるんだっ
…もし、法師たちがこの鉄格子を開けてくれたら、ここから逃げ出すまたとないチャンスかもしれない。彼らは私が縄抜けに成功したことを知らないし、従順に言うことを聞く僕だと思っている。
とりあえず、緩く縄と轡を結び直して、地下牢内の壁に力なく寄りかかり、侵入者の様子をうかがった。
「…なえっ、…なえ、…っ」
ほどなくして、私のいる牢獄の前に達磨法師含む三人の姿が現れた。袈裟姿の法師と弟子たちは夜目に紛れるためかフードの付いたマントを被っている。それが地獄の番人の死神みたいに見えて、一層緊張感が高まる。
自分に気合を入れながら、ゆっくりと法師の方に目を向けると、
「なえ、気を確かに持て。逃げるぞよ」
法師はまた、何やら呪文のようなものを唱え始めた。
法師の呪文に呼応して、どこからともなく地下に強風が湧き起こり、不気味な轟音を奏でたかと思うと、まるでカーテンを開けるように、どんなに頑張っても通り抜けられなかった鉄格子が左右に引っ張られて人一人通れるくらいの隙間を開けた。
うわ、…すごい。
全然好きじゃないけど、法師の呪術は本物だ。
「早よ、参れっ」
法師の呼びかけに応じて、急いで鉄格子をくぐり抜ける。
法師が術に気を取られ、弟子たちもそれを見守っている今が、チャンス。この一瞬しかチャンスはない。
緩く結んでおいた縄を振りほどき、スタートダッシュを図った。
「え、…?」「あっ、…!!」
明かりが漏れてくる方が地上。
法師の操る風に追いつかれたら終わり。
「待て、なえ! どこへ行くっ!!」
直ぐに弟子たちが追いかけてくる気配があったけれど、有利なのは暗闇に慣れた目と耳。地上への出口とは反対の暗い方、地下の奥に向かって走った。
この先がどこに続いているかは分からない。
でも、多分、地上への出入り口は一つじゃない。
…よねっ!? 穂月っ!!
「先ほどは鬼のようにデカいネズミの集団に追いかけられましたが??」
「うむ、大丈夫じゃ。間違いない。…多分」
「多分て何ですか、多分て」
「全然自信ないやつじゃん」
ひそひそと話す声がだんだん上から近づいてくる。
地下への入り口が開いたままなのか、薄い明りが漏れている。暗がりに慣れた目には、周りの様子がかなりはっきり見えるし、静寂に慣れた耳には、侵入者の会話の一言一句が聞き取れる。
なるほど。
降りてくるのは達磨法師と弟子の二人組。
自分の手足として使っていた女中が捕らえられたので、自分たちが関係していることがバレたらまずいと思って、慌てて捜しに来たってところか。
つまり。
穂月暗殺をもくろんだ晴信に達磨法師が手を貸したってことがバレないよう、私の口封じに来た、…
え!? やばい。やばいじゃん。
明朝の処刑を待つまでもなく、ここで終了の危機。
なんということ。せっかく必死で縄抜けしたというのにっっ
焦りのあまり心臓がバクバクして、手が汗ばんでくる。
やばい。やばいて、…
足音を立てずに近づいてくる人の気配を感じながら、必死で頭を回転させる。考えろ、考えるんだっ
…もし、法師たちがこの鉄格子を開けてくれたら、ここから逃げ出すまたとないチャンスかもしれない。彼らは私が縄抜けに成功したことを知らないし、従順に言うことを聞く僕だと思っている。
とりあえず、緩く縄と轡を結び直して、地下牢内の壁に力なく寄りかかり、侵入者の様子をうかがった。
「…なえっ、…なえ、…っ」
ほどなくして、私のいる牢獄の前に達磨法師含む三人の姿が現れた。袈裟姿の法師と弟子たちは夜目に紛れるためかフードの付いたマントを被っている。それが地獄の番人の死神みたいに見えて、一層緊張感が高まる。
自分に気合を入れながら、ゆっくりと法師の方に目を向けると、
「なえ、気を確かに持て。逃げるぞよ」
法師はまた、何やら呪文のようなものを唱え始めた。
法師の呪文に呼応して、どこからともなく地下に強風が湧き起こり、不気味な轟音を奏でたかと思うと、まるでカーテンを開けるように、どんなに頑張っても通り抜けられなかった鉄格子が左右に引っ張られて人一人通れるくらいの隙間を開けた。
うわ、…すごい。
全然好きじゃないけど、法師の呪術は本物だ。
「早よ、参れっ」
法師の呼びかけに応じて、急いで鉄格子をくぐり抜ける。
法師が術に気を取られ、弟子たちもそれを見守っている今が、チャンス。この一瞬しかチャンスはない。
緩く結んでおいた縄を振りほどき、スタートダッシュを図った。
「え、…?」「あっ、…!!」
明かりが漏れてくる方が地上。
法師の操る風に追いつかれたら終わり。
「待て、なえ! どこへ行くっ!!」
直ぐに弟子たちが追いかけてくる気配があったけれど、有利なのは暗闇に慣れた目と耳。地上への出口とは反対の暗い方、地下の奥に向かって走った。
この先がどこに続いているかは分からない。
でも、多分、地上への出入り口は一つじゃない。
…よねっ!? 穂月っ!!
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