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カリカリベーコンのサラダ

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 はぁ、精神的に疲れた。というより、苛ついた。
 シズカよりも下へと潜り、薄い胸に顔を埋める。
 トクトクと穏やかな心臓の音が気持ちを落ち着かせてくれた。

「んむ…」

 むにゃむにゃと寝言を言って抱き締めてくれる可愛いシズカを暫く堪能していれば、起きたのか、もぞりと動く。

「…ん、りお?」

 名を呼ばれるのが心地好くて、つい返事をせずにいれば寝ていると思われたのか、優しい手付きで髪を撫でられる。

「ねてる…かわい…」

 可愛いのはお前だと言いたいが、今この瞬間が幸せで。その後も、綺麗、可愛い、サラサラ、ツルツル、ありがと、素敵、好き…と、ぽつりぽつりと髪を撫でながら俺への言葉は止まらない。





「りお…だいすきだよ。」

 ちゅ、と頭のてっぺんから音が降る。

「俺も。」

 寝たふりなんてしてられない。シズカが可愛すぎる。

「えぇ…リオ起きてたの?」

「今、起きた。体は大丈夫か?痛くない?」

「ん。大丈夫だよ。寝ちゃってごめんね?」

 そんなの、何も謝ることはない。

「本当に?ちょっと立ってみな?」

 お返しとばかりに何度も何度も顔中に口づけをすれば仄かに頬を染める。昨夜はもっと恥ずかしい事をしただろうに、その初な反応に胸を撃ち抜かれる。

「ん。……わぁッ、」

 想像通りというか何と言うか…立ち上がろうとして、ぺたりとそのまま床に尻をつけてしまったシズカを抱き上げ、そのままベッドへ戻す。

「な?今日は無理しないでゆっくりすること。」

「…ん。」

 僅かに唇を噛むシズカの口へ指を突っ込んで開かせる。血は出てないな。

「んむ、んん、ひお、ゆひ、にゅいてぇ。」

「ふは。可愛い。唇噛んでどうした?やっぱ、昨夜つらかった?悪い。かなりがっついた。」

「んもー、急にはびっくりするよ…」

「で?どした?」

 多少強引でも、溜め込みやすい子だから気になったことはその都度解決していきたいのだ。

「あの、その、昨日は凄く幸せだったよ。何にも辛いことはなかった。」

「ん、俺も。」

「今、腰が立たなかったから、リオにごはんも作れないし、お仕事のお見送りもできないなぁってさみしくなったの…ちょっとだけ。ちょっとだけだから、もう大丈夫。」

 本当に、天井しらずの可愛さに俺の息子が反応してしまうからやめて欲しい。流石に今は無理だ。シズカに負担がかかり過ぎる。

「ちょっとだけなのか?」

「…うん。大丈夫。」

「俺はそうなると、すげぇ淋しいけど。」

 本音を溢す。シズカがいないとか、淋しすぎて死ぬけど。

「うぅ…本当は、ぼくも、すげー淋しい。」

「…ぶは!」

「ふふふ!」

 シズカが俺の真似してすげーなんて言うから、思わず抱き締めて体を揺らして笑った。
 それに釣られたように笑うシズカが、まぁ、可愛いこと。
 笑いながら鼻と鼻をくっつけて擦りつけて、時折唇が当たってキスになって。

「ははっ、あー、笑った。今度、糞とか言ってみて?」

「もー、笑いすぎ。…くそぅ!」

「ぶっ、うける。似合わねぇ。」

「なかなか、むつかしい。」

「ぶは!」

 ひとしきり遊んで、笑って。そして大切な事を告げる。

「俺、今日から出発まで休み。だから今日は一緒にだらだらしような?」

「…ほんと?」

「本当。足腰立たないの俺のせいだし、シズカの足のように使って。」

「わぁ、嬉しい。足だなんて…一緒に居てくれるだけで嬉しい。」

「とりあえず移動は抱き上げる。」

「抱っこ…ぎゅ。」

 むぎゅりと腕の中に入って来てくれるのが嬉しくて、優しく抱き上げてそのままテーブルへ。
 勿論、膝の上。
 朝食はマリアに頼んであったから、転移させればシズカ好みのシンプルな朝食。メッセージカード付き。

「わ!カリカリベーコンのサラダ…!僕、これ好き。」

「ドレッシングはシズカちゃんに教えて貰ったレシピよぉ。沢山食べてね? マリア    だって。」

「おばあちゃんからお手紙?僕もお返事書いてもいいかな?」

「たぶん、すげぇ喜ぶ。孫と文通するのが夢だったとか言いそう。でも、まずは食べてからな?」

 言ってくれそう…と嬉しそうにカードを撫でるシズカの頭を撫でて、ベーコンをフォークで刺して口元へ運んだ。

「腕は動くし、自分で食べれる…よ?」

 戸惑いながら、こちらへ上目遣い。はぁ。可愛いだけ。

「ん。やりたいだけ。嫌なら、口移しな?」

 そう言えば素直にぱくりとフォークを咥える。
 俺の手ずから食事を取って、もきゅもきゅと咀嚼する姿が、少しだけ、ほんの少しだけメルロを彷彿とさせる。

「りお、メルさんにもごはんあげなきゃ…」

「あいつ、朝イチでマリアのところ行ってる。」

「メルさん早起き、流石だなぁ。…あれ?リオ、いつから起きてるの?」

「シズカの熱烈な愛の告白を聞く前から?」

「えぇ…、リオの、ばか。恥ずかしい…」

 耳まで真っ赤でうつ向くシズカ。

「好きとか、綺麗とか、嬉しかったけど嘘なの?」

 言われ慣れた言葉も、愛しいシズカに言われたからこそ意味が宿る。

「…ほんとう。恥ずかしいけど、全部本当。」

「あぁ、もう、大好き。」

「僕も。」

「ん?」

「僕も、だいすき。」

 起きてからずっと甘い。
 何をするにも甘く、移動は抱き上げて。食事も、着替えも全部俺がやろう。
 風呂で足腰解すのも良いし、トイレも付いていきたい。

 シズカは何を嫌がって、何を受け入れてくれるだろうか。願わくば全てをやってあげたい。







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