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俺がおかしいのか!?
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これは驚嘆に値する。
我は夢でも見ているのだろうか。
目の前の光景が、この両目でみた今でも信じられぬ。
よもや、この『道返し《ちがえし》』にたどり着くものが二人もいようとは。
しかもあの少女。アレは人の形をとってはいるが、中身は竜ではないか。
奇怪な光景だ。竜と人が手をとりあっているとは。
これが驚かずにいられようか。
我は見てきた。
見続けてきた。
いつの世もどの世界も、竜は人の敵であり、人は竜の獲物でしかなかった。
だというのに、目の前のこれは何だ。
こんなにも容易く、当たり前のように、この人間と幼き竜は手を取り合っている。
いったい何が違う。
わからぬ。
わからぬが、おもしろい。実に愉快ではないか。
このような者達は悠久の時間を生きた我でも見たことが無いぞ。
くくっ、もはや天命を待つだけかと思っていたのだが、まさか、今になってこのような僥倖に恵まれるとは。
さて、とりあえず――問わねばなるまいな。
■ ■ ■ ■ ■
『人と竜と見受ける。なに用で、いかにしてこの『道返し』まで参ったのか』
「水、飲みにきただけ」
ブンブンブンブン!
シヴァティアの返答に首が飛んでいく勢いで頷く。
会話をしてきたということは、敵意はない、のか?
それに『道返し』とか言ってたな。この場所について知っているみたいだし、ひとまずは穏便に済ませたい。
頼むぞシヴァティア!
同じドラゴンだろ。とりあえず任せたからな!
そうアイコンタクトを送ると、シヴァティアが僅かに頷いた。
よし、とりあえずは伝わったみた――。
ペカッッッ!!
「目が、目がァあああああああああああああああ!!」
眩い閃光が俺の視界を一瞬で奪っていった。
伝わってなかった!
しかも、どっかで変なワープホール経由して盛大な間違い電話が届いてやがった!
不意打ちでの目潰しとか、完全にアウトだろ。
100%敵対行動とみなされるわ!
ええいクソが!
こんな戦闘力ゼロの黄金聖闘衣なんてなぁ、脱いで丸めてポイしてやんよぉおおおおおお!!
放物線を描いて飛んでいく俺のTシャツ。
パチャッと音をたて、着水すると水を吸い込んでゆっくりと沈んでいった。
「ゼーハーゼーハー……、あ、やべ光源消え――、てない?」
なんで?
ふっと足元を見ると、
シヴァティアが着ていたはずのジャージがクシャクシャになって眩い光を放っていた。
新しい黄金闘衣、だとッっ!?
『ユウヤ、なにやってるの。状況、考えて』
いつの間にやらドラゴンフォームに戻っていたシヴァティアがそんな事をのたまう。
ぐぬぬ、このロリドラゴン!
俺好みの体じゃなかったら体毛を引っこ抜いてやったものを!
『貴様は一人で何をやっているのだ……』
漆黒のドラゴンにまで哀れみの声を向けられた!
俺か!?
俺がおかしいのか!?
もういい、話を進めるぞ。
「ごほん、俺の名前は名瀬悠也、こいつはシヴァティアといいます。本当にここへは水を飲みにきただけなんですよ。信じてください」
『同意。わたしたち、無害』
『ほう。この暗黒の洞窟を抜けてきたものが、ただ水を飲みにきただけと申すか。冗談にしてもつまらぬ。もしも宝物が目当てだというのならば諦めよ。この場所にそのような秘宝は皆無だ』
「いやですから」
『違うと』
言ったところで信じられませんよね~。
俺でも信じない。
シヴァティアは事も無げに進んでいたけど、あの暗闇は異常だ。
そこにいるだけで、まるで存在が溶かされていくような感覚に陥る。
数分あの中にいれば常人ならまず間違いなく発狂するはずだ。
そんな異常な空間をぬけて来たのだ、何か目的があるととられるのは当然だろう。
さて、どう説明したものか。
「え、と。名前を教えては、いただけませんか」
『ほう。人風情が我に名を尋ねるか』
ギョロリと視線が俺を射抜く。
それだけで心臓が止まりそうだ。
『――いいだろう。我のことは、うむ、タナトスとでも呼ぶがよい』
「ではタナトスさん。質問に質問で返す無礼をお許しください。ですが、教えてほしいんです。『道返し』とあなたは言いった、この場所について」
『敬称など不要、タナトスでよい。『道返し』とはすなわち、この洞穴そのもの。そして、この泉こそが下界より黄泉路へと至る終着点なり。水底にある大岩の先はすでに黄泉の国だ』
「つまり、」
『今この場所こそが、あの世に最も近い場所である』
なんだ、それ……。
ダメだ、膝に力が入んない。
つまりは、そういう事だろ。
――俺は死んだんだ。
その時の記憶は無い。
まあ眠ってたんだから当然ちゃあ当然だけど、なんか、あっけないもんだな。
痛みも、感慨も、記憶さえ無いままくたばるなんて。
『わたし、まだ生きてる。死んでない』
シヴァティアはそう言った。
『当然だ。言ったであろう、ここは下界から黄泉へと向かう場所であると。つまり死んだゆえここに来たわけではない。貴様たちの肉体はここに確かに存在している』
死んでなかった。
痛みも、感慨もなくて当然だった!
ただの早とちりだったあああああああ!!
『この世界は異界と異界の狭間にある、いわば気泡のような場所。通常、この世界に至る方法は皆無だ。だというのに、貴様たちは我が眼前にいる。故に、我は問うのだ』
『いかにしてこの『道返し』に参った』
「残念ですが、その質問に対する答えを俺は持ち合わせていません。俺がこの世界にきたのは数時間前、それも気がついたらなぜか立っていたんです」
『ほう。では、そちらの小娘は?』
シヴァティアは、どうなのだろう。
この場所がタナトスが言う通りのところだとしたら、シヴァティアはどうやってこの世界にきたのだろう。
もしかしたら俺と同じように、気がついたらこの世界にいたのだろうか。
『わたしは……』
シヴァティアにしては珍しく、考えるように言葉を区切った。
『わからない。でも知ってた。知らないけど、知ってた、この場所』
「つまり、具体的にいつからいたのかわからないけど、気がついたらここで生活してた。必要なものがある場所はわかるが、何でそれを知っているのかの記憶はない、ってことか」
『! そう!』
俺の補足にコクコクと嬉しそうに頷くシヴァティア。
わかってもらえたのが余程嬉しかったのか、尻尾がぶんぶん振られている。
だめだ!
今あの尻尾を撫でにいくと、せっかくのシリアスな雰囲気がぶっ壊れる!
頼むから無意識で俺を誘惑するのをやめてくれません!?
『にわかには信じがたい。だが、信じるしかあるまい』
グルルルとタナトスの喉がなる。
『記憶が無いのは当然だ。娘、シヴァティアといったか。きさま、封印と呪縛を受けて己のほとんどを失っておるな?』
我は夢でも見ているのだろうか。
目の前の光景が、この両目でみた今でも信じられぬ。
よもや、この『道返し《ちがえし》』にたどり着くものが二人もいようとは。
しかもあの少女。アレは人の形をとってはいるが、中身は竜ではないか。
奇怪な光景だ。竜と人が手をとりあっているとは。
これが驚かずにいられようか。
我は見てきた。
見続けてきた。
いつの世もどの世界も、竜は人の敵であり、人は竜の獲物でしかなかった。
だというのに、目の前のこれは何だ。
こんなにも容易く、当たり前のように、この人間と幼き竜は手を取り合っている。
いったい何が違う。
わからぬ。
わからぬが、おもしろい。実に愉快ではないか。
このような者達は悠久の時間を生きた我でも見たことが無いぞ。
くくっ、もはや天命を待つだけかと思っていたのだが、まさか、今になってこのような僥倖に恵まれるとは。
さて、とりあえず――問わねばなるまいな。
■ ■ ■ ■ ■
『人と竜と見受ける。なに用で、いかにしてこの『道返し』まで参ったのか』
「水、飲みにきただけ」
ブンブンブンブン!
シヴァティアの返答に首が飛んでいく勢いで頷く。
会話をしてきたということは、敵意はない、のか?
それに『道返し』とか言ってたな。この場所について知っているみたいだし、ひとまずは穏便に済ませたい。
頼むぞシヴァティア!
同じドラゴンだろ。とりあえず任せたからな!
そうアイコンタクトを送ると、シヴァティアが僅かに頷いた。
よし、とりあえずは伝わったみた――。
ペカッッッ!!
「目が、目がァあああああああああああああああ!!」
眩い閃光が俺の視界を一瞬で奪っていった。
伝わってなかった!
しかも、どっかで変なワープホール経由して盛大な間違い電話が届いてやがった!
不意打ちでの目潰しとか、完全にアウトだろ。
100%敵対行動とみなされるわ!
ええいクソが!
こんな戦闘力ゼロの黄金聖闘衣なんてなぁ、脱いで丸めてポイしてやんよぉおおおおおお!!
放物線を描いて飛んでいく俺のTシャツ。
パチャッと音をたて、着水すると水を吸い込んでゆっくりと沈んでいった。
「ゼーハーゼーハー……、あ、やべ光源消え――、てない?」
なんで?
ふっと足元を見ると、
シヴァティアが着ていたはずのジャージがクシャクシャになって眩い光を放っていた。
新しい黄金闘衣、だとッっ!?
『ユウヤ、なにやってるの。状況、考えて』
いつの間にやらドラゴンフォームに戻っていたシヴァティアがそんな事をのたまう。
ぐぬぬ、このロリドラゴン!
俺好みの体じゃなかったら体毛を引っこ抜いてやったものを!
『貴様は一人で何をやっているのだ……』
漆黒のドラゴンにまで哀れみの声を向けられた!
俺か!?
俺がおかしいのか!?
もういい、話を進めるぞ。
「ごほん、俺の名前は名瀬悠也、こいつはシヴァティアといいます。本当にここへは水を飲みにきただけなんですよ。信じてください」
『同意。わたしたち、無害』
『ほう。この暗黒の洞窟を抜けてきたものが、ただ水を飲みにきただけと申すか。冗談にしてもつまらぬ。もしも宝物が目当てだというのならば諦めよ。この場所にそのような秘宝は皆無だ』
「いやですから」
『違うと』
言ったところで信じられませんよね~。
俺でも信じない。
シヴァティアは事も無げに進んでいたけど、あの暗闇は異常だ。
そこにいるだけで、まるで存在が溶かされていくような感覚に陥る。
数分あの中にいれば常人ならまず間違いなく発狂するはずだ。
そんな異常な空間をぬけて来たのだ、何か目的があるととられるのは当然だろう。
さて、どう説明したものか。
「え、と。名前を教えては、いただけませんか」
『ほう。人風情が我に名を尋ねるか』
ギョロリと視線が俺を射抜く。
それだけで心臓が止まりそうだ。
『――いいだろう。我のことは、うむ、タナトスとでも呼ぶがよい』
「ではタナトスさん。質問に質問で返す無礼をお許しください。ですが、教えてほしいんです。『道返し』とあなたは言いった、この場所について」
『敬称など不要、タナトスでよい。『道返し』とはすなわち、この洞穴そのもの。そして、この泉こそが下界より黄泉路へと至る終着点なり。水底にある大岩の先はすでに黄泉の国だ』
「つまり、」
『今この場所こそが、あの世に最も近い場所である』
なんだ、それ……。
ダメだ、膝に力が入んない。
つまりは、そういう事だろ。
――俺は死んだんだ。
その時の記憶は無い。
まあ眠ってたんだから当然ちゃあ当然だけど、なんか、あっけないもんだな。
痛みも、感慨も、記憶さえ無いままくたばるなんて。
『わたし、まだ生きてる。死んでない』
シヴァティアはそう言った。
『当然だ。言ったであろう、ここは下界から黄泉へと向かう場所であると。つまり死んだゆえここに来たわけではない。貴様たちの肉体はここに確かに存在している』
死んでなかった。
痛みも、感慨もなくて当然だった!
ただの早とちりだったあああああああ!!
『この世界は異界と異界の狭間にある、いわば気泡のような場所。通常、この世界に至る方法は皆無だ。だというのに、貴様たちは我が眼前にいる。故に、我は問うのだ』
『いかにしてこの『道返し』に参った』
「残念ですが、その質問に対する答えを俺は持ち合わせていません。俺がこの世界にきたのは数時間前、それも気がついたらなぜか立っていたんです」
『ほう。では、そちらの小娘は?』
シヴァティアは、どうなのだろう。
この場所がタナトスが言う通りのところだとしたら、シヴァティアはどうやってこの世界にきたのだろう。
もしかしたら俺と同じように、気がついたらこの世界にいたのだろうか。
『わたしは……』
シヴァティアにしては珍しく、考えるように言葉を区切った。
『わからない。でも知ってた。知らないけど、知ってた、この場所』
「つまり、具体的にいつからいたのかわからないけど、気がついたらここで生活してた。必要なものがある場所はわかるが、何でそれを知っているのかの記憶はない、ってことか」
『! そう!』
俺の補足にコクコクと嬉しそうに頷くシヴァティア。
わかってもらえたのが余程嬉しかったのか、尻尾がぶんぶん振られている。
だめだ!
今あの尻尾を撫でにいくと、せっかくのシリアスな雰囲気がぶっ壊れる!
頼むから無意識で俺を誘惑するのをやめてくれません!?
『にわかには信じがたい。だが、信じるしかあるまい』
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