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「初めて恋をしたんだよ」
どうして貴族の跡継ぎ、しかも婚約者までいらっしゃった方がこうなったのか改めて尋ねたら微苦笑でこう言われた
「婚約者と余り相性が良くなくて余計に人を愛すると言うのはこんなに幸せな事なんだと、彼女を好きになった事は後悔してないんだ」
「まぁ」
思わず口元を抑え言葉を濁す
サジナール様と婚約者の方は家と家の契約。好きじゃないから別れてを気軽に出来なかった状況で、それでもその彼女さんと恋愛するなら婚約を解消してからにすれば問題無かったのに!と一瞬、前世の感覚で考えてしまった
前世でも言うなら結婚は契約の様な、薄いながら家と家の結び付きでも有ったし、不倫やら浮気やら、何で別れてからにしないの?と当時の感覚を思い出してほろ苦い思いが過る
前世も多分、今もこの世界と同じように家の契約が有るお宅は有るだろうが、私は庶民だったからその記憶と思い出の感情だけしか知らない
しかし、結婚に関して貴族の世界の契約は重みが違うし、今の私は貴族として分かっている部分も有るので複雑である
貴族の婚姻は、家にも寄るがどちらかと言えば当人より当主と当主の結び付き、特に弱小貴族だと家業と家族全員の生活に影響を及ぼす。
娘が居たら更なる家の結びが増え、繋がりの強さが貴族の立場を安定に導くと言っても過言では無い
かと言ってそれをまだ経験の浅い若い貴族の子息、令嬢に全て受け入れろと言われても難しいだろう
まして恋心はどうしようも出来ないもの。せめて婚約者と良好な関係だったら良かったのだけれど、サジナール様と元婚約者、ユメリ様は価値観の違いで上手く付き合えなかったようだ
「ユメリ嬢が悪かった訳じゃない。伯爵令嬢として欲しい物は当たり前に手に入れる生活。使用人に全てやって貰うのが当然の生活、多くの令嬢がそうで有る中でユメリ嬢も例外無くそうだっただけで。しかし、彼女、ドロシー嬢は違ったんだ…側妃殿下の姪と言うステータス、側妃殿下似の美貌を持ち、それでも尚、家族の為に健気に王宮で侍女として働いていた…その姿が眩しくて惹かれざる得なかったんだ」
成る程、と首を縦に振る
伯爵様としては伯爵としての地位の重みを将来、次代に継ぐまで担う長子へ学生時代はのびのびと学友を作って楽しんで過ごして欲しかったのかも知れないが、その自由な時間を勤労に充てている令嬢が魅力的に見えたのだろう。
側妃殿下様似なら容姿も魅力的だろうし、と私は見た事も無い元婚約者の令嬢に少し同情した
普通の令嬢が普通に学園生活をしていたら、働いてる令嬢は確かに健気にも、大人ぽくも見える
これが例えばサジナール様が女学生で、お相手が社会人だとしたら同級生の男子生徒よりも大人っぽくて格好良いと熱を上げてしまう、一過性だとしても分かり易く有り得る事だ
「性格の相性や容姿の好みまで含めたら余計に我慢出来なかったのですわね?」とチクリ。
学園にすらまだの未成年の私に言われ、サジナール様はビックリした顔で私を見詰めた
どうして貴族の跡継ぎ、しかも婚約者までいらっしゃった方がこうなったのか改めて尋ねたら微苦笑でこう言われた
「婚約者と余り相性が良くなくて余計に人を愛すると言うのはこんなに幸せな事なんだと、彼女を好きになった事は後悔してないんだ」
「まぁ」
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娘が居たら更なる家の結びが増え、繋がりの強さが貴族の立場を安定に導くと言っても過言では無い
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成る程、と首を縦に振る
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